相続放棄でよくある相談
「相続放棄すべきかどうかわからない」
相続発生時に、相続放棄するかどうかで悩んでしまうことがあります。相続放棄をすれば、借金を引き継がずに済みますが、財産も取得できなくなってしまいます。たとえば、借金の額の方が大きいけれど、相続財産の中に自宅がある場合、相続放棄すれば住む場所がなくなってしまいます。このような場合には、適切な窓口に相続放棄すべきか相談し、慎重に検討しなければなりません。
「相続放棄の期限が過ぎてしまった」
相続放棄の手続きは、相続開始を知ったときから3ヶ月の熟慮期間内に行わなければなりません。3ヶ月という期間はあっという間ですから、相続放棄をしようと思ったら既に3ヶ月経っていたということもあると思います。熟慮期間経過後も相続放棄できるケースはありますが、この場合にはどこかに相続放棄について相談する必要があります。
「相続放棄の仕方がわからない」
相続人全員による遺産分割協議の席で、「財産はいらないから借金も相続しない」と言ったとしても、相続放棄したことにはなりません。この場合でも、被相続人の債権者は、法定相続分に応じて法定相続人に借金の支払いを請求できます。借金を逃れるには、裁判所で相続放棄の手続きをする必要があります。もし手続き方法がわからなければ、どこかに相続放棄の相談をしなければなりません。
相続放棄について家庭裁判所に相談できる?
相続放棄は家庭裁判所に書類を提出して行う
民法には、「相続放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない」(第938条)と規定されています。しかし、実際家庭裁判所に行って「相続放棄をします」と口頭で述べたとしても、相続放棄はできません。相続放棄をするためには、相続放棄申述書という書面を提出する必要があります。
家庭裁判所で相続放棄の方式等の相談はできる
相続放棄申述書の書式は、裁判所のホームページからダウンロードできるほか、家庭裁判所で直接入手することも可能です。相続放棄申述書の書き方や必要書類などについても、家庭裁判所で教えてもらうことができます。
家庭裁判所では相続放棄の実質的な相談はできない
家庭裁判所では、相談業務は行っていません。そのため、相続放棄すべきかどうか、相続放棄をすればどんな影響があるかといった実質的な相続放棄に関する相談は不可能になっています。相続放棄について実質的な相談をしたい場合には、専門家のところへ行く必要があります。
相続放棄について相談できる専門家とは?
弁護士
相続放棄については、弁護士に相談できます。弁護士には、相続についてトータルな相談ができるので、相続財産を調査してもらったうえで、相続放棄をすべきかどうかについて相談し、アドバイスを受けることも可能です。他の相続人とトラブルになっている場合には、弁護士に間に入ってもらい、紛争を解決してもらうこともできます。
弁護士は依頼者の代理人となって、裁判所での手続きを行うことができます。弁護士に相続放棄を相談して依頼すれば、相続放棄申述書の作成だけでなく、裁判所への書類提出、裁判所との間の連絡調整などすべてを任せることができます。
相続放棄の熟慮期間は延長も可能ですが、弁護士は熟慮期間の延長申請にも対応してくれます。また、3ヶ月経過した後で借金の存在がわかった場合には、弁護士に依頼して事情説明書を作成してもらえば、相続放棄ができる可能性があります。
司法書士
相続放棄について、司法書士に相談することもできます。司法書士は裁判所提出書類の作成ができますから、司法書士に相続放棄申述書を作成してもらうことも可能です。相続放棄申述書に添付する戸籍謄本等の収集についても司法書士に依頼することができます。
司法書士には、相続放棄の熟慮期間の延長申請書や、3ヶ月を経過した後で相続放棄をする場合の事情説明書などの書類も作成してもらうことができます。ただし、司法書士ができるのは書類作成のみですから、裁判所とのやりとりなどは自分で行う必要があります。
その他の専門家・相談先
相続放棄も含め、相続に関する一般的なことは、行政書士、税理士、ファイナンシャルプランナー(FP)などにも相談できます。なお、市区町村役場では住民を対象に、弁護士相談や司法書士相談など専門家による無料相談を行っていますので、こうした無料相談を活用して専門家に相続放棄の相談をする方法もあります。