兄弟の子が相続放棄した後は、相続人になる人がいない
遺産相続の相続人には、法定の順位があります。一位が被相続人の子ども、二位は両親や祖父母などの直系尊属、三位が被相続人の兄弟姉妹です。三位より下の相続人はいません。
上位の相続人が死亡しているか相続放棄した場合に限り、下位の相続人が相続します。兄弟姉妹は三位ですから、被相続人の子どもおよび直系尊属がすべて相続放棄した場合に限り、相続人になります。
被相続人の兄弟の子が相続人となるケースは、被相続人の兄弟の「代襲相続」が発生した場合のみです。
つまり、上位相続人の相続放棄によって、被相続人の兄弟に遺産相続の相続人になる順番が回ってきても、遺産相続の開始前に兄弟が死亡していたなら、兄弟の子が親の代わりに相続人になることができるのです。
これによって代襲相続人となった兄弟の子、つまり被相続人から見た甥や姪は、上位の相続人と同様、相続をするか相続放棄するかを自分で決定することができます。
しかし、遺産相続において被相続人の兄弟の順位は最下位です。そして甥や姪である兄弟の子が代襲相続人になった場合には、兄弟の子は相続人となり得る最後の人となります。兄弟の子が相続放棄したら、その次に相続人になる人は誰もいません。
兄弟の子が相続放棄したら「相続財産管理人」を選任する
兄弟の子が相続放棄し、相続人になる人が誰もいなくなった場合は、相続財産管理人を選任する必要があります。この手続きは、家庭裁判所へ「相続財産管理人の選任申立て」をすることで選任できます。
他の相続人がこの申立てを行ってくれることは稀なことであるため、甥や姪である兄弟の子自らが申立てをすることが望ましいです。
相続財産管理人の選任申立てが無事に受付されると、家庭裁判所は「相続人不存在」を確定させるうえで、次のような手続きを行います。
1.相続財産管理人の選任
相続財産管理人の選任申立てを受けた家庭裁判所は、相続財産管理人選任の審判を行うと同時に、相続財産管理人が選任されたことを公告します。
2.債権者などに対する公告(申立てから2カ月目)
相続財産管理人の選任の公告から2カ月が経過すると、相続人捜索を兼ねた債権者等に対する債権申し出の公告がなされます。この時に債権者が名乗り出た場合は、相続財産管理人が財産の中から清算を行います。
3.相続人捜索の公告(申立てから4カ月目)
債権者などへの公告からさらに2カ月が経過すると、相続財産管理人の申立てによって6カ月の間、相続人捜索の公告がなされます。
期間満了までに相続人が現れない場合には、相続人不存在が確定します。相続人不存在が確定した後は、債権者や受遺者が財産を請求する権利は消滅します。
4.特別縁故者への財産の分与(申立てから12カ月目~)
この段階まで到達したら、特別縁故者が相続財産の分与を請求できるようになります。特別縁故者として認められるのは、内縁の配偶者や生計を共にしていた友人、被相続人の介護や身体の世話に努めた者などです。
被相続人と血縁関係や婚姻関係がなくても特別縁故者にはなれますが、被相続人と特別な間柄であったことが必須条件でしょう。
相続財産の分与を希望する特別縁故者は、相続人不存在が確定してから3カ月以内に、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ請求することになります。
分与請求が認められるか、いくらの分与を認めるかということは、各家庭裁判所の判断によって決定されます。
債権者や受遺者、特別縁故者への財産の分与を終えてもなお財産が残っている場合には、相続財産は国庫に帰属するものとなります。兄弟の子が相続放棄した場合の遺産相続は、ここでやっと完結します。
まとめ
兄弟の子が相続放棄してしまったら、相続財産管理人を選任するしか方法はなくなります。相続放棄をしても相続財産管理人が選任されるまでは、最後の相続人である兄弟の子に相続財産の管理責任があります。
この場合は相続放棄して終わりではありませんので、速やかに相続財産管理人の選任申立てを行いましょう。