遺産を放棄したいと考えたとき
家族が亡くなり、自分に遺産が残されたとします。ですが、負債が資産を上回っていて、その遺産を受け継ぎたくないと思うとき。
また亡くなった親族となんらかの人間関係上のこじれが発生していて、その遺産を受け取りたくないと思うとき、遺産を放棄する手続きが必要です。
遺産の相続は民法上の手続きに沿って行われます。そして、実は何も手続きを行わないでいると、自動的に資産も負債も受け継ぐことになってしまうのです。
そこで例えば、故人にカードローンの借金等があった場合は、その借入の返済を受け継ぐ形となり、相続を自動でおこなったあなたには、借金の返済義務が発生します。
そこで返済しないと、信用情報に登録されてしまい、いわゆるブラックリスト、という状況になりそれ以上の借り入れが不可能になります。そうなると、自分がクレジットカードを持てなくなるのはおろか、スマートフォンの分割払いも使えなくなります。
また、結婚して家を買おうと思っても、住宅ローンが組めません。ブラックリストに入ると、とても人生設計に支障をきたすのです。
そのため、家族の借金を放置していてはいけません。
そこで、遺産を放棄するための手続きが必要となります。放置しておくと、自動で被相続人の借金が降り掛かってしまいます。
家庭裁判所で遺産の放棄手続きを行う
家庭裁判所で、遺産の放棄手続きを行わなくてはなりません。これが、相続放棄の手続きとなります。自分で行う場合、相続放棄の申述書、というものを家庭裁判所に提出します。
家庭裁判所はどこでもいいわけではなく、被相続人、つまり亡くなった人の住所を所管している家庭裁判所になります。そこで、申述書、死亡戸籍謄本、住民票、あなたの戸籍謄本、収入印紙800円、郵便切手1000円分をまとめて提出します。
そうすると、しばらく待っていると、あなたの自宅あてに、相続放棄の回答書が送られてきます。そこには、さまざまな相続にまつわる家庭裁判所からの質問事項が書いてあります。
たとえば、「被相続人の預貯金をすでに使いましたか?」「不動産の名義を変えましたか?」などの質問です。それらに、YESと回答すると、相続を限定承認したことになってしまい、相続放棄が認められなくなります。気をつけましょう。
これを、NOと返信すると、たいていの場合、相続放棄が家庭裁判所で認められます。回答書を家庭裁判所に送り返し、承認を待ちます。
難しいなら、専門家に頼むのもあり
そうした、さまざまな配慮が必要なので、意外と相続放棄の手続きは複雑なのです。手続きとしては、遺産を放棄するのに、家庭裁判所に申し立てるだけなのですが、回答書に答えなければならないので、事前知識がないと、うっかり間違って、相続放棄NGになってしまうパターンがあります。
そうなるとやりなおしはききませんので、最初から確実に相続放棄の手続きを通す必要があります。
そのためには、弁護士や司法書士などに依頼すると良いでしょう。弁護士の場合は、借金の返済の請求をされても、「弁護士に一任していますから」といえば、債権者はそれ以上、何か請求をかけることはできません。
また、遺産の全貌を確認するのにも、弁護士は非常に力強い味方になってくれるでしょう。ただし、弁護士は初回の相談料が30分5000円、日当が10万円前後しますので、かなりの負担となります。できる手続きは自分で行って、アドバイスだけもらうようにしたほうが良いかもしれません。
財産が預貯金と負債だけ、という風に、シンプルな構成になっているのであれば、司法書士もおすすめです。司法書士も、法律の専門家ですので、相続放棄の手続きにアドバイスをくれます。
ただし、弁護士も司法書士も、相続を取り扱っていて、得意としている事務所に依頼しましょう。そして、なるべく被相続人の住まいの近くの事務所に依頼すると、出張費がかからなくておすすめです。