相続放棄の手順
人が亡くなって、通夜、告別式(葬儀)、初七日、四十九日法要と進んでいくと、遺族の中から、「相続」の話が出てきます。亡くなってすぐに「相続」の話をすることは、不謹慎だという意識がどこかにありますが、相続人(遺族)が一堂に会する機会は、「四十九日法要」が最後です。
もしこの機会を逃すと、次の集まるのは、一年度の「一回忌」になってしまいます。ですから、できれば皆が顔をそろえる「四十九日法要」までには、ある程度の話ができるようにした置きたいものです。
ところで、自分が相続人になっているにもかかわらず、「遺産を相続したくない、相続を放棄したい」と判断する人がいるかもしれません。これを「相続放棄」と言いますが、この相続放棄は、全く自分の判断で構いません。むしろ、人に強要されたり、「皆が相続するから自分もしなければならないのでは」と気を遣ったりするものでもありません。
ただ、「私は相続しません」と他の相続人に意思を伝えても、何の効力もありません。亡くなった人が最後に住民登録をしていた住所地を管轄する家庭裁判所に、「相続放棄申述書」というものを提出しなければなりません。
この「相続放棄申述書」の提出期限は、自分が相続人であることを知ってから3ヶ月以内と決まっています。つまり多くの場合、亡くなって3ヶ月以内ということになりますから、それほど余裕のある期間とは言えません。先程、相続の話を「四十九日法要」までには、ある程度の話ができるようにと記載したのも、このような理由からです。
「相続放棄申述書」とは?
まず「相続放棄申述書」を入手しなければいけません。直接家庭裁判所に受け取りに行くか、あるいは、家庭裁判所が開いていない時間に行くことが無理な場合には、裁判所のホームページからダウンロードすることもできます。
入手した「相続放棄申述書」には、提出する家庭裁判所の名前、相続放棄申述書の提出日、相続人の名前を書きます。さらに、提出書類の欄がありますから、自分が「相続放棄申述書」に添えて提出する書類にチェックを入れます。
さらに、相続人の住所・本籍、被相続人(亡くなった人)と自分との関係、法定相続人に関する情報、被相続人に関する情報も記載します。その上で、相続人の欄に印鑑を押します。この場合の印鑑は実印である必要はなく、認印でも構いません。
次に、「相続放棄申述書」の「申述の趣旨」の欄に、相続を放棄する「理由」を記載します。理由は、提出する相続人の考えや意見で構いません。「理由」の記載によって、家庭裁判所が受理しないということはありませんから、ありのままの考えを具体的に書きます。
最後に、「相続放棄申述書」の「相続財産の概略」の項目に、亡くなった人が残した財産(遺産)を記載します。この「相続放棄申述書」を記載する時点で、自分が把握している財産を記載することになります。細かく1円単位で記載する必要はなく、金額は額略で構いません。
記載し終えたら、この「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出します。その際には、「被相続人の住民票除票・戸籍附票」、「相続放棄する相続人の戸籍謄本」、「収入印紙(800円)」、「切手(82円を5枚程度)」を添えます。なお切手の枚数は、家庭裁判所によって異なりますので、提出前に確認しておきましょう。
「相続放棄申述受理証明書」の受け取り
「相続放棄申述書」の提出から一週間ほどで、「相続放棄の申述についての紹介書」が郵送されてきます。この「照会書」には、いくつかの質問事項が記載されていますので、回答を記入した上で、この「照会書」を家庭裁判所に返送します。
返送した「照会書」の回答に問題がなければ、その後「相続放棄申述受理証明書」が郵送されてきます。この「証明書」を受け取ることによって、自分の「相続放棄」が認められたことになります。
なお、この「相続放棄申述書」を提出してしまうと、後で取り消すことができませんから、被相続人の財産を十分に把握した上で、手続きをしなければなりません。それでも3ヶ月では把握しきれないという場合には、「相続放棄の期間の伸長手続き」というものがあります。
これは、家庭裁判所に対して、相続放棄の期限の延長をお願いするものです。これが受理されれば、さらに期限が3ヶ月伸ばされることになります。