相続財産調査で株券の存在を確認
・自宅に株券の手がかりがないかどうか調べる
亡くなった人(被相続人)が株券を所有していたかどうかは、一見してわかりにくいことがあります。「株券を持っていたとは聞いたことがない」という場合でも、被相続人の自宅を探してみて、株券に関するものがないかどうかを確認しましょう。株券を所有していれば、株主総会招集通知や配当に関するお知らせが届いているはずです。
・遺品の中から紙の株券が見つかった場合
現在は、上場株式は電子化されており、紙の株券は発行されていません。しかし、被相続人の自宅を探していたら古い紙の株券(タンス株)が出てくるケースもあると思います。この場合、紙の株券自体に価値はありませんが、株主としての権利がなくなっているわけではありません。
株券電子化の期限までに手続きがとられなかった株券については、上場企業が信託銀行で開設している特別口座で管理されています。そして、特別口座に入っている株券については、相続手続きの際、相続人名義の証券総合口座へ移管する手続きが必要になります。
遺産分割協議により株券を相続する人を決める
・株券も遺産分割の対象
相続財産調査を行い、相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行って相続財産をどう分けるかを決めます。株券も遺産分割の対象になりますから、遺産分割協議で株券を相続する人を決める必要があります。
・遺産分割協議が成立したら遺産分割協議書を作成
遺産分割協議で株券などの財産を誰がどのように相続するか決まれば、決まった内容を遺産分割協議書という書面にしておきます。遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
・遺産分割協議が成立しない場合
相続人間の話し合いで遺産分割ができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停または遺産分割審判を申し立てて、裁判所で相続財産の分け方を決めることができます。
株券の相続手続きを行う
遺産分割により、株券を相続する人が決まったら、相続による株券の名義変更手続きを行わなければなりません。株券の名義変更手続きは、上場株式と非上場株式で異なります。
・上場株式の相続手続き
上場株式の場合には、窓口となっている証券会社に申し出て名義変更手続きを行います。名義人の死亡の事実を伝えると、所有していた株式の一覧と相続手続き依頼書を発行してもらえますので、これにもとづき名義変更手続きを行います。なお、株券の名義変更の際に相続手続き依頼書以外で必要となる書類には、次のようなものがあります。
●被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
●相続人全員の戸籍謄本
●相続人全員の印鑑証明書
●遺産分割協議書
・非上場株式の相続手続き
非上場株式については、証券会社は関与していません。株式を発行している会社に直接問い合わせをし、名義変更の方法を確認しましょう。
株券を評価して相続税の申告を行う
・基礎控除額を超えると相続税の申告が必要
相続財産の額(課税価格の合計額)が基礎控除額を超える場合には、相続税の申告義務が発生します。基礎控除額とは、次の計算式で算出される額になります。
3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の申告は相続開始を知った時から10ヶ月以内に行わなければなりません。相続税の申告義務がある場合には、期限内に手続きを行うようにしましょう。
・相続税における株券の評価
相続税を計算するにあたって、株券をどのように評価するかについては基準が決まっています。株券の評価方法は上場株式と非上場株式で異なり、次のようになっています。
<上場株式>
次の4つのうち最も低い価額で評価します。
①相続開始日の終値
②相続開始日の属する月の毎日の終値の平均額
③相続開始日の属する月の前月の毎日の終値の平均額
④相続開始日の属する月の前々月の毎日の終値の平均額
<非上場株式(取引相場のない株式)>
取引相場のない株式の評価は、株式の取得者が会社に対する経営支配権を有する同族株主等か、それ以外の株主かによって評価方法が変わります。同族株主等については原則的評価方式、それ以外の株主については特例的評価方式(配当還元方式)で評価します。なお、原則的評価方式は、会社の規模によって、類似業種比準方式、純資産価額方式、併用方式の3つのパターンに分かれます。
・株券がある場合の相続税は税理士に相談
相続税における株券の評価方法は複雑です。そのため、株券を含む相続財産の評価については、専門家である税理士に相談するのがおすすめです。