相続人の不存在とは
相続人の不存在とは、主に次のような場合のことを指しています。
1.被相続人の遺産を相続する相続人が一人もいない場合
生涯独身で子供がおらず、一人っ子で兄弟姉妹がいない、または死亡している、さらに両親が死亡している場合などは、相続人が不存在であるという事態が発生するかもしれません。
2.相続人全員が相続放棄した、または相続欠格や廃除の事由に該当する場合
相続人全員が相続放棄して相続人不存在となることも、決して珍しいことではありません。
相続人不存在と意味を混合されやすいケースに、相続人が行方不明や生死不明の場合があります。このような場合は、相続人不存在とはなりません。
また、相続人はいないものの遺産がすべて遺贈されている場合にも、相続人不存在とはなりません。
相続人が不存在の場合はどうする?
相続人が不存在の場合には、相続財産を管理する人を選任しなければなりません。家庭裁判所へ相続財産管理人選任の申し立てを行います。
申し立てから時間をかけて相続人や相続債権者の捜索がなされ、それでもなお、相続人が見つからない場合は「相続人の不存在が確定」することになります。申し立てから相続人不存在確定までの流れは、次のようになります。
1.家庭裁判所へ、相続財産管理人選任の申し立てを行う
被相続人の利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをします。
2.相続財産管理人選任の公告
相続財産管理人が選任されたことが官報によって公示されます。この公示により、相続人がいるなら名乗り出るよう促されるため、相続人捜索の第一歩ともなります。公告期間は2カ月です。
3.相続債権者・受遺者に対する債権請求申し出の公告
相続財産管理人選任の公告が官報に掲載された日から2カ月を経過しても相続人の申し出がない場合は、相続債権者および受遺者に対する債権請求申し出の公告をします。被相続人に債権を持つ人がいるなら名乗り出るよう、2カ月以上の間、公告がなされます。
4.相続人捜索の公告(相続人不存在の確定)
この段階に進んでもまだ相続人が不存在の場合、家庭裁判所は管理人または検察官の請求により、さらに6か月以上の期間を定めて相続人の捜索の公告を行います。この期間を過ぎてもなお相続人が不存在なら、その時点で相続人の不存在が確定します。
5.特別縁故者への財産分与請求
相続人の不存在が確定した後は、生前に被相続人と生計を共にしていたり、被相続人の介護や療養のために尽力していたりしたなど、被相続人と特別に親しい関係にあった人(特別縁故者)が、財産分与を請求することができます。
本来相続権を持たない内縁関係の人も、財産分与請求は行うことができます。財産分与を希望する人は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に請求します。請求には期限があります。相続人の不存在が確定してから3カ月以内に請求を完了させましょう。
6.財産分与の審判もしくは申し立て却下の審判を行う
家庭裁判所が、特別縁故者からの財産分与請求の内容を総合的に調査し、財産分与または申し立て却下の審判をします。
7.特別縁故者に対する分与財産の引き渡し
財産分与が認められると、相続財産管理人が特別縁故者に財産を引き渡します。
8.残余財産の国庫への引き継ぎ
特別縁故者からの財産分与の申し立てもなく、相続人捜索の公告期間満了から3カ月が経過すると、被相続人の財産は国庫に帰属し、国の所有物となります。
9.管理事務終了
ここまでで、相続財産管理人の役割は終了します。管理人は管理終了報告書を家庭裁判所に提出し、管理事務は終了します。
まとめ
相続人が不存在の事例は、年々増加しているとされています。しかし不存在と思っていても、思いがけないところで相続人が見つかるケースもあります。
相続人不存在の確定には時間を要しますし、相続人の不存在が確定すると自分の望む通りに遺産が用いられない可能性もあります。自分の死後に相続人不存在になりそうな場合は、生前に遺言などで財産の遺贈先を指定しておくこともできるでしょう。