相続人の養子の遺産相続とは
遺産相続では、養子であっても実の子どもであっても、相続できる遺産の種類や権利の度合いに差はありません。養子縁組を結んでいるなら、実の子どもと同様の身分を得ると民法では定めているためです。
民法第809条「嫡出子の身分の取得」
養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得する。
養子であるからと言って相続権に制限が課されたり、相続分が少なくされたりするわけではありません。
被相続人の遺言がある場合はこの限りではありませんが、民法で養子の身分が保証されている以上は、養子だという理由で相続放棄を強要したり、相続分を減らしたりすることも不当となります。
留意したい点として、養子の遺産相続は可能ではあるものの、法的な縁組を結んでいる必要があります。どれほど長い間養子同然に暮らしていたとしても、縁組を結んでいない場合は相続人となることはできません。
普通養子か、特別養子かによる違い
養子には2種類があります。普通養子縁組による普通養子と、特別養子縁組による特別養子です。一般的なのは、普通養子でしょう。特に厳密な規定もなく、養子と養親の合意があれば成立します。
普通養子は養親と親子関係を結びますが、同時に実の親との親子関係も継続します。そのため相続が発生すると、普通養子は養親と実の親両方の相続人として遺産相続を行うことができます。
一方、特別養子は家庭裁判所が審判をしなければ成立しない縁組です。養子にも養親にも年齢制限がありますし、実の親による養育が著しく困難または不適切であることが明白でなければ認められません。
特別養子は普通養子と異なり、実の親との親子関係を断ち切って養親の子どもとなります。そのため、実の親の遺産相続では相続人になることができません。
もし被相続人に、特別養子として他家に出した子どもがいるなら、その子どもは被相続人の相続人とはなり得ないことになります。
相続人の養子の子どもは遺産相続できるか
相続人の中に子どもを持つ養子がいるが、その養子がすでに死亡してしまっている場合は、養子の子どもが親の代わりに代襲相続人となる場合があります。ただし、養子縁組の後に誕生した子どもであることが条件です。
民法では代襲相続できる人について、被相続人の「直系卑属」であることを定めています。
養子縁組の後、養子である親から誕生したのであれば被相続人の直系卑属となるのですが、養子縁組の時にはすでに生まれていた子どもであれば、被相続人の直系卑属とは見なされません。
孫を養子とする場合は注意が必要
被相続人の孫は、親である被相続人の子どもがいる場合には相続人になることができません。とはいえ、孫に遺産を相続させてあげたいからという理由で孫を養子とすることには、注意が必要です。
孫を養子とした場合、孫が負担する相続税は2割増となるためです。孫に財産を譲りたい場合は、生前から孫に贈与するという形で財産を移すことも検討できるでしょう。
相続税対策としての養子縁組は、費用対効果に注意
相続人の人数は、相続税や非課税枠の広さに大きく関係してきます。そのため、相続税対策として養子縁組をしようと検討することがあるかもしれません。
実の子どもがいるなら、養子1人まで、実の子どもがいないなら養子2人までを相続人にすることができます。相続人が1人増えれば、相続税の基礎控除額は600万円増え、生命保険金の非課税枠は500万円増やすことができます。
養子を相続人にすることには確かに大きなメリットがあるとも言えますが、少し慎重になるべきかもしれません。
相続人として養子を加える場合は、当然その養子にも相続分を与える必要があります。相続税対策としてだけの養子であれば感情的なつながりも薄いことが予想されますから、遺産分割を巡って大きなトラブルになる可能性も高くなります。
相続人に養子を加える場合には、生じるメリットと想定されるデメリットをよく考え、費用対効果を冷静に考慮した上で行いましょう。
まとめ
養子も、実の子どもと何ら変わりなく相続人となることができます。しかし場合によっては、想定外のデメリットを生んでしまったり、トラブルのもととなったりする可能性もあります。
養子縁組を考える際には、その人と法的なつながりを持つということの重大さをよく認識し、慎重に検討しましょう。