相続税とは
亡くなった方の財産を親族などが譲り受ける際に課される税金です。遺言や死因贈与契約によって法定相続人でない人が財産を譲り受ける場合も、相続税課税の対象となります。
相続税は、財産額に関わらず発生するものではありません。続く部分で考える「基礎控除額」よりも多い財産を譲り受ける場合にのみ、発生します。
ちなみに、たくさんの相続財産のある人にのみ相続税が課されるのは、「富の再分配」の概念に基づくものです。相続財産がわずかな人もそうでない人も同じ税率では不公平ということです。
相続が発生したらまず、土地や建物、株式などを含むすべての相続財産の集計を行わなければなりません。
また、相続税は、相続が発生してから10ヶ月以内に申告と納税までの手続きを済まさなければなりません。10カ月というとかなり時間があるように思えますが、財産の量や種類が多い場合には、意外なほど時間と手間を取られるので、あまり悠長に行動するわけにもいきません。
相続税の控除について
相続税の特徴は、基礎控除額が高額であることです。相続税の基礎控除の金額は、3,000万円+法定相続人の人数×600万円 によって算出される金額です。
例えば法定相続人が3人なら、3,000万円+3人×600万円=4,800万円が基礎控除額となります。つまり、相続財産の総額が4,800万円以下なら相続税は課されないのです。
他にも、一定の条件を満たす20歳未満の人が適用される「未成年者控除」や、85歳未満の障害者に適用される「障害者控除」などの控除があります。
贈与税とは
贈与税は、財産を譲る人が生存しているうちに親族などへ分配した財産に対して課される税金です。贈与税は、相続税法を補完するための存在です。
相続税を脱税するために死期が迫ってから駆け込みで贈与を始めることを防ぐため、贈与税は相続税と比較して高い税率が科されています。
一方で、贈与する相手は法定されておらず、関連する法規も相続税ほど詳細な規定でないことから、贈与税は相続税と比較すると自由度の高い制度と言えます。
相続税と比較した場合、贈与税を払うとしても生前に少しずつ家族に財産を分配しておくことにより、亡くなってからの相続財産が減り、節税効果が得られます。
そのため相続税と贈与税を総合的な観点から比較すると、贈与税の方が計画的に実施できるため、節税効果が高くなる可能性があります。
贈与税について注意したいポイント
相続開始前3年以内に贈与した財産は、贈与の事実が認められないことになります。それらは相続財産とみなされて、相続税がかかってしまうのです。贈与を行うなら、まだ元気なうちに開始し、早めに贈与し終えておくことが得策です。
ちなみに、毎年同じ金額を贈与することには注意が必要です。毎年一定の額を贈与することをあらかじめ決めていた「定期贈与」に該当すると見なされやすくなり、贈与した金額全体に対して贈与税をかけられる可能性が高くなります。
贈与税の控除の種類
相続税と比較すると少額となりますが、贈与税にも基礎控除があります。贈与を受ける側1人あたり、1年に110万円までという基礎控除です。贈与税における控除の種類の点では、相続税と比較すると多くなります。
相続税と贈与税の重要な比較ポイントを要約
1.意思表示に関するルールを比較
相続においては、遺言などによる亡くなった方の意思表示が無いとしても、財産を譲られる側の「もらいます」という意思表示があれば相続は成立します。
しかし贈与では、譲る側の「あげます」という意思と、譲られる側の「もらいます」という2つの意思表示がなければ成立しません。
相続税と贈与税を比較すると、このような「意思表示に関するルール」の違いが見えてきます。
2.税率を比較
相続税と贈与税の税率を比較すると、贈与税の方が高く設定されています。しかし、贈与税の基礎控除額などの控除制度を上手に利用することで、相続税と比較して贈与税の方が節税効果を見込める場合もあります。
3.控除の種類を比較
相続税と比較すると、贈与税の方が基礎控除額は低く設定されています。しかし控除の種類という面では、相続税と比較して贈与税の方が多くの種類を設けています。これは、高齢者から現役世代へ資産を移動させやすくするという政府としての意図もあるとされています。
このように相続税と比較して贈与税の方が税率は高く、基礎控除額が低くなっています。一方で贈与税には、相続税と比較すると自由度の高い一面も見られます。基礎控除をはじめとする控除制度を計画的に利用することで、将来の相続税の節税に大きな効果を発揮するでしょう。