相続税では税務調査の確率が高い
税務調査とは
税務調査とは、国税局や税務署等の職員が納税者の自宅や事務所を訪問し、税務申告の内容に間違いがないかを帳簿などで確認する手続きになります。所得税、法人税、相続税などの国税では、納税者自身が税額を計算して申告を行う申告納税制度が採用されています。そのため、税額に誤りが生じたり、意図的に虚偽の申告が行われたりする可能性が高くなっています。税務調査は、こうした申告の誤りを正すために行われるものです。
相続税は税務調査の確率が高い
税務調査は、すべての納税者に対して行われているわけではなく、調査の対象は税務署側で選んでいますから、納税者であっても税務調査の対象とならない人もいます。所得税や法人税の場合、税務調査が来る確率(実調率)はそれほど高くはなく、平成27年は個人実調率が1.1%、法人実調率が3.1%となっています。
一方、相続税の場合には、所得税や法人税と比べて、実調率が高くなっています。たとえば、平成27事務年度の場合、相続税の税務調査の件数は1万1935件です。平成27事務年度には平成25年に発生した相続を中心に税務調査が行われていますが、平成25年に発生した相続税の申告件数が5万4421件ですから、約2割の確率で税務調査を受けていることになります。
相続税で税務調査を受けるとどうなる?
相続税の税務調査があっても、申告の内容に問題がないと判断されることもあります。しかし、税務調査の対象に選ばれた時点で、何らかの誤りがあると税務署から目を付けられているはずですから、修正申告を求められ、追徴課税されるケースが多くなっています。
どんな場合に相続税の税務調査がある?
相続税の税務調査が行われるのは、相続税の申告がきちんと行われていないのではないかと税務署側が疑いを持った場合です。具体的には、次のようなケースで、相続税の税務調査が来る可能性が高くなります。
収入と比較して相続財産が少ない
税務署側は、被相続人の収入を把握しています。たとえば、1,000万円を超える年収があり、退職金ももらっているはずなのに、申告された相続財産が非常に少ない場合には、お金の行方を確認するために税務調査に来ることがあります。
家族名義の財産が多い
たとえば、被相続人の妻が専業主婦であるにも関わらず多額の預貯金を持っていれば、税務署側は被相続人から生前贈与されたものではないかと考えます。そして、もし贈与税が払われていなければ、相続税の税務調査に来る可能性があります。同様に、被相続人の子供や孫名義の預金もチェックされます。
被相続人名義の預金から使途不明の出金がある
被相続人の葬儀費用は相続財産から支払うことが認められており、相続税の計算の際に差し引きしても問題ありません。しかし、葬儀が終わった後、相続税の申告までの間に、多額の預金が引き出されている場合には、確認のために税務調査が行われることがあります。
相続税の税務調査で追徴課税されないために
相続税を申告・納税した後、税務調査が来るのではないかと不安になることもあると思います。税務調査で相続税の申告について誤りを指摘され、追徴課税されないために、次のような点に気を付けておきましょう。
・税務調査を必要以上に恐れない
税務調査が来ることになっても、必ず税金を追徴されるわけではありません。申告した内容について明確な説明ができれば、大きな問題にならないこともあります。落ち着いて手持ちの資料を確認し、疑問を持たれている箇所はどこなのか、証明するための資料はあるのかを確認しておきましょう。
なお、税務調査の対象に選ばれた場合にも、事前に税務署から連絡があったうえで税務署の職員が訪問してくることになります。税務調査に不安がある場合には、税理士に相談するようにしましょう。
・相続税の申告から税理士に相談するのがおすすめ
相続税を申告するには、相続財産をきちんと評価したうえで、税額の計算を行わなければなりません。相続財産の評価方法や相続税の計算方法は複雑ですから、一般の人が自分で申告を行うと、どうしても税額を誤ってしまう可能性が高くなります。
相続税の申告の段階から税理士に依頼していれば、適切な税額の計算を行ったうえで申告の手続きをしてもらえますから、税務署側に誤りを指摘される可能性も低くなります。相続税申告を税理士に依頼した場合、税務調査の対象となっても、申告をした税理士のところにまず連絡がきます。相続税の税務調査にも税理士が立ち会ってくれますから、安心して税務署対応ができます。