相続税が課税される財産の範囲はどうなっている?
・相続税の課税対象は遺産だけではない
相続税は、人が死亡したときの財産の移転に着目して課される税金です。亡くなった人が残した財産(遺産)は、相続や遺贈により誰かに引き継がれることになりますが、この財産が相続税の課税対象となるということです。
しかし、実際には、相続税の課税対象になるのは、純粋な遺産だけではありません。被相続人が亡くなった時点で所有していた財産以外にも、相続税の課税対象になるものがあります。
・相続税の課税対象となる財産
相続税の課税対象となる財産は、次のとおりです。
(1) 本来の相続財産
民法上の相続または遺贈により相続人や受遺者が取得した財産です。純粋な遺産を意味します。
(2) みなし相続財産
民法上の相続または遺贈により取得する財産ではないけれど、同様の効果を持ちます。
たとえば、被相続人が保険料を負担していた生命保険の保険金を相続人が受け取った場合、被相続人の死亡を原因として被相続人から相続人へ財産が移転したことになり、通常の相続と効果の面では変わりません。このような財産は、みなし相続財産として、相続税の課税対象に含める扱いとなっています。
みなし相続財産に含まれるものは、主に、生命保険金と死亡退職金になります。
(3) 相続開始前3年以内の生前贈与財産
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人から相続開始前3年以内に生前贈与を受けている場合には、その生前贈与財産も相続税の課税対象になります。
(4) 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
被相続人から相続時精算課税の適用を受けて財産を贈与された場合、その贈与財産はすべて相続税の課税対象に含めることになっています。
相続税が課税される死亡退職金とは?
・死亡退職金は在職中に死亡した社員の退職金
会社を退職するときには、会社から退職金が支払われるケースが多くなっています。通常の定年退職などの場合には、本人が退職金を受け取ることができます。しかし、在職中に死亡した場合には、会社を退職することになっても、退職金を受け取る本人がいません。そのため、遺族が代わりに退職金を受け取ることになります。
社員が在職中に死亡した場合に、会社から遺族に支払われる退職金は、「死亡退職金」と呼ばれます。たとえば、夫が在職中に亡くなった場合、妻や子などの親族が、夫の勤続年数等に応じた死亡退職金を夫の勤務先の会社から受け取ることになります。
・相続財産とみなされる死亡退職金
上にも書いたとおり、死亡退職金はみなし相続財産として、相続税の課税対象になります。ただし、課税対象に含まれるのは、被相続人の死亡後3年以内に支給金額が確定したものになります。死亡退職により支給される退職金のほか、生前の退職により支給される退職金についても、被相続人の死亡後3年以内に支給金額が確定したものは、相続税の課税対象になります。
・3年を過ぎて確定した退職金に対する課税
被相続人の死亡後3年を経過してから支給が確定した退職金については、相続税の課税対象にはなりません。この場合、その退職金の支給を受けた遺族等の一時所得として、所得税・住民税が課税されることになります。
・死亡退職金の非課税枠
相続人が受け取った死亡退職金については、次の計算式で算出された金額を限度として相続税が非課税となる扱いになっています。
死亡退職金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
なお、相続人以外が受け取った死亡退職金については、非課税の適用はありません。相続放棄をした人については上の計算式の「法定相続人の数」には含まれますが、相続放棄をした人が受け取った死亡退職金は、非課税にはならないことになっています。
弔慰金等の取扱い
死亡退職金とは別に、被相続人の勤務先から遺族が弔慰金や花輪代を受け取ることがあります。弔慰金等については、死亡退職金とは別に、次のような非課税枠が設けられています。
①死亡の原因が業務上の理由による場合…普通給与3年分以下の部分
②死亡の原因が業務外の理由による場合…普通給与6ヶ月以下の部分
普通給与とは毎月支払われる給料のことで、ボーナスなどは含まれません。非課税枠を超える弔慰金等は、死亡退職金の支給とみなし、相続税の課税対象に含めることになります。