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相続税を節税できる「小規模宅地等の特例」とは?

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小規模宅地等の特例とは

被相続人が自宅や事業地として使用していた宅地を相続により取得する場合、一定の面積までは最大で80%減額した相続税評価額が適用されるという制度です。1億円の宅地でも2,000万円として相続税評価額が計算されるため、事実上の相続税8割引とも言えるでしょう。

小規模宅地等の特例は、相続人が相続税の支払いのために自宅や事業用地を手放すような事態を防ぐための制度で、2015年から適用要件の一部が緩和されました。

亡くなられた方の家が建っている宅地や、事業に使っていた宅地などのうち小規模なものについては亡くなられた家族の生活の基盤として重要な財産なので、他の財産と同じように相続税を課税することは生活の維持に支障が生じる可能性があります。場合によっては納税のために住居を奪われることにもなりかねません。

このような事態を防ぐために、相続税の課税価格を計算するうえで一定額を減額するという小規模宅地等の特例ができたのです。

しかし、強引なやり方で小規模宅地等の特例を適用しようとする人が増えたため、宅地を相続する相続人の条件次第では、非常に厳しい要件が求められます。

 

小規模宅地等の特例の適用要件

土地の種類 相続人 上限面積 減額割合
特定居住用宅地 ・被相続人の配偶者

・被相続人と同居している、または生計を一にしている家族

・持ち家のない別居親族

330㎡ 80%
特定事業用宅地

(不動産貸付業以外)

・事業を継承する親族 400㎡ 80%
不動産貸付業宅地 ・事業を継承する親族 200㎡ 50%

1~3の適用要件について、概要を解説していきます。

1.土地の種類

特定居住用宅地とは、簡単に言えば被相続人の自宅が建っている土地のことです。
特定事業用宅地とは、被相続人が営んでいた事業のための土地で、被相続人個人の名義の建物が建っている土地をいいます。不動産貸付業宅地とは、アパートやマンションなどが建っている宅地のことです。

2.相続人に関する要件

小規模宅地等の特例を最もスムーズに適用できるのは、被相続人の配偶者です。法律上婚姻している配偶者という点以外、満たすべき要件はほとんどありません。

被相続人と同居して生計も同じくしていたのであれば、同居の家族にも小規模宅地等の特例は適用されます。ただし、本当に同居していなければなりません。

小規模宅地等の特例を適用したいがために住民票だけ移し、同居しているように見せるという手は通用しないのです。

特例のために住民票を利用する人がいることは、国税庁も重々承知しています。相続人が生活している実態が認められなければ、小規模宅地等の特例は利用できません。

配偶者、同居親族以外に特例適用の可能性を持つのは、別居していて持ち家のない親族です。相続の世界では「家なき子」と呼ばれる人ですが、家なき子が小規模宅地等の特例を利用することはかなり難しいといえます。

家なき子となるには、少なくとも以下の4点を満たしていなければなりません。

・被相続人に、配偶者および相続人になり得る同居親族がいないこと
・相続開始前3年以上、持ち家に住んでいない親族であること
・相続開始時に住んでいる家が、過去に自分自身の所有していた持ち家でないこと
・3親等内の親族、または特別な関係にある法人が所有する家に住んでいないこと

3.面積

小規模宅地という名称の通り、広大な土地には適用できなくなっています。面積については、表に記載した面積以下の土地にしか小規模宅地等の特例を適用できない、という意味ではありません。

宅地でいうと、330㎡(約100坪)までは80%減額、それを超えた部分については通常の相続税評価額を適用するという計算になります。

節税になる具体例

亡くなられた方の自宅の敷地を相続する場合、特定居住用宅地等に該当する可能性があります。例えば宅地面積300㎡、評価額8,000万円、相続人1人の場合、以下のきんがくが減額されます。

8,000万円×80%=6,400万円の減額

仮に課税遺産が他に5,000万円あるとした場合、相続税は次のようになります。

小規模宅地等の特例を適用した場合:課税遺産総額=5,000万円+1,600万円=6,600万円 6,600万円×30%-700万円=1,280万円

小規模宅地等の特例を適用しない場合:課税遺産総額=5,000万円+8,000万円=1

億3,000万円 1億3,000万円×40%-1,700万円=3,500万円

このように小規模宅地等の特例を適用できれば、相続税は大幅に節税できるのです。

 

小規模宅地等の特例を利用する際の注意点とポイント

1.相続税の申告期限までに遺産分割を終えておく

小規模宅地等の特例は、相続税の申告期限までに遺産分割が成立していることを前提としたものです。相続税節税のためにも、速やかに遺産分割協議を終えておきましょう。

2.相続税の申告期限まで宅地を売却、または事業の転廃業などしない

相続税の申告期限内に転居や売却をしてしまうと、小規模宅地等の特例が適用できなくなってしまいます。

事業用地についても、相続税の申告期限内に転業や廃業をしてしまうと小規模宅地等の特例の対象外になってしまいますので、注意しましょう。

3.居住用宅地と特定事業用宅地の両方がある場合、併用可能

被相続人が事業を営んでいた場合、自宅と事業所を別々に所有している場合もあります。2015年以降はこのようなケースにおいて、両方の宅地面積を合算して小規模宅地等の特例を適用できるようになりました。

合計で730㎡まで、小規模宅地等の特例によって相続税評価額を減額できることになります。

4.被相続人が老人ホームに入居していても適用可能なケースがある

被相続人が亡くなった際に住んでいたのが老人ホームでも、小規模宅地等の特例を適用できる場合があります。

基本的な条件は、以下の3点です。

・被相続人が相続開始直前に、要介護認定等を受けていること
・老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等に入居していたこと
・老人ホーム入居前に居住していた自宅を、生計を一にしていた親族以外の者に居住させていないこと

【必要書類について】

小規模宅地等の特例の適用を受けるにあたっては、適用する宅地に応じて通常の相続税申告書類とは別に以下の書類の提出が必要になります。

・遺言書または遺産分割協議書の写し

・相続人全員の印鑑証明書

・被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本又は法定相続情報一覧図

【特定居住用宅地等に該当する場合】

・特例の適用を受ける宅地等を自己の居住の用に供していることを明らかにする書類(特例の適用を受ける人がマイナンバー(個人番号)を有する場合には提出不要)

・賃貸借契約書やその居住用家屋の登記簿謄本

・相続開始時に居住していた家屋の登記簿謄本

・被相続人の戸籍の附票の写し

【特定同族会社事業用宅地等に該当する場合】

・法人の定款

・特例の対象となる法人の相続開始の直前における発行済株式の総数又は出資の総額及び被相続人及び被相続人の親族その他被相続人と特別の関係がある者が有するその法人の株式の総数又は出資の総額を記載した書類

【貸付事業用宅地等】

・所得税の確定申告書や賃貸借契約書

これら以外にも必要に応じて添付書類が必要になる場合があります。詳しくは税理士に確認しましょう。

 

まとめ

小規模宅地等の特例は、本来の趣旨にそぐわない利用も目立つため、いわゆる「抜け道」を封じるために度々法改正がなされています。税金の専門家であっても、適用要件の誤認をしていることは珍しくありません。小規模宅地等の特例適用については、相続関係の知識が豊富な専門家を選んで連携を取りましょう。