税理士報酬に基準はあるのか
税理士報酬については、かつて税理士会で「税理士報酬規定」を定めていました。税理士報酬規定とは、税理士報酬の最高限度額を定めた規定であり、あくまで基準という位置付けではありません。
平成14年に税理士法改正に伴い、税理士報酬規定は廃止され料金について自由化されましたが、今でも旧税理士報酬規定を参考にして料金設定をしている税理士事務所が多いようです。
現状の相場を探るために、旧税理士報酬規定の相続税の報酬について見てみましょう。
旧税理士報酬規定について
旧税理士報酬規定における相続税申告の報酬については、次のように規定されていました。
税務代理報酬
相続税申告にかかる税務代理報酬については、旧税理士報酬規定によると基本報酬額10万円に対して、遺産総額に応じて次のような加算額が規定されていました。
遺産総額 | 加算額 |
5,000万円未満 | 20万円 |
7,000万円未満 | 35万円 |
1億円未満 | 60万円 |
3億円未満 | 85万円 |
5億円未満 | 110万円 |
7億円未満 | 135万円 |
10億円未満 | 170万円 |
10億円以上 | 180万円 |
1億円増すごとに | 10万円加算 |
このように、申告する相続財産が多額になればなるほど、税理士報酬は高額になるように設定されています。また、次のようなケースについては別途税理士報酬が割り増しになると規定されていました。
・相続人や受遺者の人数が増えるごとに、10%相当を割り増し
・財産の評価の事務が著しく複雑な場合、基本報酬を除いて100%の範囲内で割り増し
税務書類作成報酬
相続税申告の手続き等の業務報酬とは別に、税務書類の作成報酬についても別途税理士報酬規定に規定されていました。相続税の書類作成費用については、税務代理報酬額の50%相当です。
税務相談報酬
相談料については、扱う税金に関係なく、相談の仕方によって次のように規定されていました。
・口頭による相談:1時間以内2万円、以降は1時間につき1万円
・書面による相談:12万5,000円〜25万円
その他の報酬
相続税申告にあたっては、不動産の評価額を調査するために、現地に出向く必要性が出てくる場合があります。その際の費用としては以下のような税理士報酬規定がありました。
・調査立ち会い費用1日あたり:6万円
・日当1日あたり:5万円
その他、旅費や宿泊費などがかかる場合については、別途実費でかかります。
現在の税理士報酬の相場は?
現在は前述した税理士会の報酬規定は廃止されていますが、今でも参考にして料金設定をしている税理士事務所が多いようです。
具体的には、旧税理士報酬規定をベースにして、やや低めに設定しているケースがよくあります。
例えば、相続税の課税対象となり得る遺産総額5,000万円の場合、税理士報酬については安くて20万円程度、高くて50万円程度が相場です。
税理士報酬が割高になるケース
基本的に相続税の税理士報酬については、遺産総額に比例して高くなる設定が一般的ですが、それ以外にも相続財産に「不動産」が多数含まれるようになると、税理士報酬が高額になる傾向があります。
相続税申告をする際に、一番手間がかかるのが不動産評価額の算出です。
例えば100㎡の土地でも、平地にある土地と崖地にある土地とでは評価額が変わってくるように、不動産については個別の状況によって評価額が上下するため、場合によっては現地の視察や測量、役所への確認など付随する業務が多くなるため、税理士報酬が割高になります。
相続税で税理士に依頼できること
相続税申告について税理士に依頼すると、概ね次のような業務についてトータルでサポートしてくれます。
・遺言書の内容確認
・相続人と相続財産の確認
・相続財産の評価
・遺産分割協議書の作成(弁護士と連携)
・延納、物納の申請
・各種名義変更手続き
税理士については登録することで行政書士業務についてもサポートできるため、遺言書からみの業務についてもまとめてサポートを受けられるケースが多いです。
紛争化している場合は弁護士と連携
遺産分割で相続人同士がもめているようなケースについては、税理士だけでなく弁護士のサポートも必要になります。
紛争化していたとしても、相続税申告は相続開始後10ヶ月以内にしなければならず、どうしても遺産分割がまとまらない場合は、一旦法定相続分で分けたとして相続税申告をしなければなりません。
そうなると、相続税を節税できる様々な特例制度が使えなくなってしまうため、早い段階で弁護士にも相談して、税理士と連携しながら遺産分割協議をまとめていくことが重要です。
まとめ
相続税申告を相談する際に、税理士報酬が高そうで不安という方は、事前に税理士事務所のホームページに記載されている税理士報酬と、旧税理士会の報酬規定を比較してみるとよいでしょう。
料金体系も税理士によって異なりますので、まずは電話やメールなどで問い合わせして確認することをおすすめします。