相続メディア nexy

相続メディア nexy

相続税申告で物納できる財産とは?

更新日:

物納できる要件とは

相続税を物で納めるためには、一定の要件を満たす必要があります。

延納でも納められない

相続税の現金一括納付が難しい場合は、次の選択肢として「延納」を検討することになります。延納とは簡単にいうと相続税の「分割払い」のことで、延納にしても納められない金額を限度として物納が認められます。

そのため、物納にあてたい財産があるからといって気軽に物納できるわけではなく、あくまでも金銭による納税ができない場合の最終手段として、物納があるというイメージです。

物納できる財産が国内にある

物納に当てられる財産の種類はある程度限られており、財産の種類ごとに次のような優先順位が決められています。

第一順位:国債、地方債、不動産(土地・建物、農地)、船舶
第二順位:社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
第三順位:動産

上記のように優先順位が決められているため、例えば土地を保有しているのに、株式を物納にあてることは原則としてできません。また、法律で認められている特定登録美術品については、優先順位に関係なく物納が可能です。

特定登録美術品とは、重要文化財や国宝に指定されている美術品、歴史的、芸術的に優れた価値がある作品で、美術館や博物館などで展示するレベルのものをいいます。

相続税で物納できる財産は、国内にある相続財産に限られる点にも注意が必要です。

 

相続税の物納が認められない管理処分不適格財産とは

上記に該当する財産だとしても、管理処分に問題がある場合については相続税の物納にあてることができません。

例えば、土地に担保権が設定されている場合や、何らかの紛争問題を抱えている場合については、国としても物納されたところで管理処分に困るだけなので、物納が認められません。このような財産のことを「管理処分不適格財産」といいます。

 

物納劣後財産とは

管理処分不適格財産ではなかったとしても、一定の場合には優先順位が逆転する場合もあります。

例えば、土地に賃借権が設定されている(借地)や、違法建築物など問題がある建物については、「物納劣後財産」として、その他に物納に適している財産があるうちは物納することができません。

つまり、物納劣後財産については、他に物納する財産がまったくない場合の最終手段になるということになります。

 

相続税申告における物納のやり方とは

相続税申告で物納をするためには、相続税の納税期限または納付すべき日までに、税務署長に対して物納申請書及び関係書類を提出する必要があります。この期限を「物納申請期限」といい、期限までに申請がされていないと、相続税を物納によって納税することができません。

ただし、どうしても関係書類の提出が間に合わない場合については、物納申請期限までに「物納手続関係書類提出期限延長届出書」を提出すれば、1回3ヶ月の延長、最長1年まで提出期限を延長することが可能です。

物納審査

物納財産については、原則として時価ではなく相続税評価額での納税となります。

物納申請をすると、物納申請に基づき財産について審査に入ります。審査期間は最長で9ヶ月かかる可能性があることに注意が必要です。

再申請

物納申請していた財産が、管理処分不適格として却下された場合は、1回だけ他の財産による再申請が可能です。何度もやり直せるわけではないため、できる限り認めてもらえる可能性が高い第一順位の財産で物納申請したほうが無難でしょう。

 

物納にかかる利息とは

物納する場合は、納税が完了するまでについて年7.3%の利子税が課税されます。ただし、税務署側の手続きに要する期間については、利子税が免除されます

物納のメリット

物納は申請手続きが面倒で、かつ、利子税も発生するため、人によっては物納財産を自力で売却して現金化した上で納税資金にあてるというケースもありますが、果たしてどちらの方が得なのでしょうか。

物納なら譲渡所得税がかからない

たとえ納税資金のためとはいえ、遺産を売却すると一定の譲渡所得税が発生することになります。ただ、物納であれば実質的には譲渡しているのと同じですが、譲渡所得税は非課税なため、税金面では物納が有利な側面もあります。

ただし、物納した場合は相続税評価額で収納されるため、時価よりも大幅に低い金額にしかならないという点がデメリットです。

どちらの方法で納税したほうがよいのかについては、事前に税理士に相談して検討しておくと相続が発生した後の対処がスムーズになります。

 

まとめ

どうしても納税資金の準備ができていない場合、相続財産そのもので納税できる物納は有効な選択肢となります。

ただし、物納するためには物納申請が必要なほか、物納の優先順位なども守らなければならないため、申請が却下されないよう事前に税理士と入念に打ち合わせしておくことが重要です。