相続税の障害者控除ってどんな制度?
障害者控除とは、税法上の障害者にあたる人が支払う相続税について、一定額を控除して負担を軽くするという制度のことです。
相続税の障害者控除は、他の控除制度と比べても節税効果が高いという特徴があります。
冒頭でも触れた基礎控除や配偶者控除については、相続税の課税対象となる「課税対象価額」から一定額を差し引けるという控除制度であるのに対し、障害者控除は相続税の「税額」そのものから一定額を差し引くことができる、相続税の「税額控除」である点が大きな特徴です。
相続税の障害者控除の対象となる障害者とは?
相続税の障害者控除の対象となる障害者は、次の2つに区分されており、それぞれ控除額が異なります。
一般障害者
次のいずれかに該当する方は、一般障害者に区分されます。
・精神保健指定医などにより知的障碍者と判断された方で、特別障害者に該当しない
・精神障害者保険福祉手帳の交付を受けている
・身体障害者手帳に身体障害者と記載されている方で、特別障害者に該当しない
・精神または身体に障害のある65歳以上の方で、市町村等の認定を受けている特別障害者に該当しない人
一般障害者の控除額
一般障害者は特別障害者よりも症状が軽度なため、控除額については以下のように設定されています。
一般障害者の控除額=(85歳-相続した年齢)×10万円
例えば、65歳の一般障害者であれば200万円の相続税が控除されます。
特別障害者
次のいずれかに該当する方については、特別障害者として一般障害者の2倍の税額控除が受けられます。
・身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級または1級と記載されている
・精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級と記載されている
・重度の知的障害者と判定されている
・いつも病床にいて、複雑な介護を受けなければならない(要介護)
特別障害者の控除額
特別障害者の控除額は以下の通りです。
特別障害者の控除額=(85歳-相続した年齢)×20万円
上記と同じく65歳の特別障害者だった場合、400万円の税額控除が受けられます。
いずれの控除についても、税額控除で直接相続税から差し引ける点が、減税効果の高い特徴となっています。
控除額が余ったらどうなる?
障害者控除は税額控除のため、相続税が控除額に満たなければ、差し引きしきれずに余ってしまいます。
相続税の障害者控除額が余った場合は、障害者本人の扶養義務者(配偶者、直系血族及び兄弟姉妹、3親等内の親族等)が支払う相続税額から控除することができるのです。
それでも控除額が残る場合は、二次相続が発生した際に残しておいて適用することができます。
相続税の障害者控除が受けられる人
障害者控除が受けられる人は、上記に該当する税法上の障害者であると同時に、以下の要件をすべて満たす人でなければなりません。
・相続や遺贈で財産を取得した時に、日本国内に住所がある人
(一時居住者で、かつ、被相続人が一時居住被相続人又は非居住被相続人である場合を除く)
・相続や遺贈で財産を取得した時に障害者である人
・相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること
よって、法定相続人ではなく、単に遺言書によって財産を取得することとなった親族や友人などについては、たとえ障害者だったとしても障害者控除は受けられないため、注意が必要です。
障害者控除の必要書類
障害者控除の適用を受けるためには、相続税申告書第6表「未成年者控除・障害者控除額の計算書」を通常の相続税申告書に添付する必要があります。
また、税法上の障害者であることを証明するために、障害者手帳のコピーなども必要です。
障害者控除の注意点
障害者控除は該当する方にとっては非常に減税効果の高い制度ですが、実は何度も同じように利用できるわけではありません。
一度障害者控除の適用を受けている方については、以下のどちらか少ない金額に控除額が制限されます。
【一般障害者】
・(85歳-相続した年齢)×10万円
・(85歳-最初の控除を受けた年齢)×10万円-控除額の合計
【特別障害者】
・(85歳-相続した年齢)×20万円
・(85歳-最初の控除を受けた年齢)×20万円-控除額の合計
二次相続が発生した場合については相続税の控除額が制限されますので、あらかじめいくらまで相続税が非課税になるのかを計算しておく必要があるでしょう。
まとめ
相続税の障害者控除は、課税価格ではなく税額から直接控除できるという点で、非常に大きな減税効果がある制度です。
ただし、適用要件が若干複雑なので、自分自身に該当する可能性があると思ったら、一度税理士に確認してもらうことをおすすめします。
また、障害者控除は次の相続にも影響を与えますので、その点も踏まえて手続きを進めた方がよいでしょう。