相続税と不動産の関係とは?
相続税と不動産は、非常に密接に関係しているといわれています。というのも、相続財産の内訳について見てみると、相続財産の価格割合の中で不動産が占める割合が非常に多いのです。
特に、都内で不動産を所有している方の場合、土地の価格が高いことから、相続税評価額もかなり高額になるため、それをもとに課税される相続税についても高額になります。
このように、不動産については相続財産のうち大半の割合を占めている財産なので、生前に売るか、それとも保有し続けるのかによって、相続税全体に大きな影響が出てくるのです。
今不動産を売ったら相続税はどうなる?
不動産を保有している方の中には、不動産会社からかなりの量のダイレクトメールや営業電話がかかってきているのではないでしょうか。
中には、買い取り金額を明示した状態のハガキが届くというケースもあるようです。
東京オリンピック開催を来年に控え、今がピークだと予測した不動産会社が、営業に躍起になっていることもあり、売却斡旋が加熱していますが、実際のところ、今売ったら相続税にはどのような影響が出るのでしょうか。
今売ると相続税は高くなる?
不動産を売るということは、不動産という資産がなくなるわけなので、その分、相続税が軽くなると思うかもしれませんが、売ったことで手に入る売買代金については、死ぬ前に消費せず、そのまま持っていれば相続税が課税されます。
ここで重要なことは、不動産は時価よりも相続税評価額の方がかなり安いということです。
相続税評価額とは、相続税の課税対象となる不動産の評価額のことで、路線価や固定資産税評価額などを使って計算するため、時価の7割くらいの金額になるといわれています。
さらに、アパートなどの賃貸物件だったりすると、「貸家建付地」という扱いになり、さらに相続税評価額が低くなって、相続税が安くなります。
一方、不動産を売却した場合、売却して得た代金をそのまま死ぬまで保有していれば、その金額そのものに対して相続税が課税されますので、税額はかなり割高になるのです。
譲渡所得税にも注意
不動産を売って利益が出るとかかる税金が「譲渡所得税」です。譲渡所得税については、すでにご存知の方も多いと思いますが、「買った時よりも高く売れた場合だけ課税される税金なのでは?」といわれることがよくあります。
実はこの認識、ちょっと間違っているんです。
厳密には買った時よりも安く売れても課税される?
譲渡所得税は、売った時に生じた売却益に対して課税されるのですが、ここでいう買った時の価格については「減価償却後の価格」であることに注意が必要です。
アパートなどの賃貸物件を保有している場合、毎年の確定申告で、建物部分については減価償却費として計上し、節税に役立てていると思います。
しかし、譲渡所得については、この減価償却した後の残りである未償却残高に対して高いか、低いかで判断されます。
よって、古い物件は減価償却が進んでいるため、買った時よりもだいぶ安く売れたとしても譲渡所得が発生する可能性があるのです。
また、売却する年の1月1日時点で不動産の保有期間が5年を超えていないと、短期譲渡所得となり、税率が2倍になりますので、その点も踏まえて、いつ売るべきかを慎重に判断する必要があります。
結局、今は売らない方がいいの?
ここまで話を聞くと、今は売らない方がいいように感じるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れません。
確かに、不動産を売却して現金化すると、相続税自体は高くなるかもしれません。
ですが、不動産自体に使い道がなかったり、人気のない賃貸物件だったりする場合については、相続する方も手間ばかりかかって大変ですので、生前に売って処分しておいたほうが結果的に喜ばれることも多々あります。
まとめ:売買代金の使い道が重要
今不動産を売る場合は、売って得た売買代金をそのまま預貯金などに預けっぱなしにしないことが重要です。
子供に少しずつ生前贈与したり、生命保険に加入したりすることで、相続税を節税しつつ、次の世代に資産を移行していくことができます。
相続税関連のサイトを見ると、不動産を売ると相続税が不利になるということばかりが書かれていますが、それは不動産を売った後すぐに本人がお亡くなりになられた場合です。
そうではなく、相場が高騰しているこのタイミングで思い切って売って、それによって得た売買代金を生前贈与や再投資などで上手に活用できれば、売ったとしても結果的には相続税が節税できる可能性も十分にあるでしょう。