税務調査は調査じゃなく捜査と考えよう
私はよく相談者の方に、「税務調査は調査ではなく捜査だと考えたほうがいいですよ」と伝えています。調査と聞くと、帳簿類を調べられる程度のように感じるかもしれませんが、実際は犯罪捜査かと思うほどハイレベルな質問をしてきます。
私はこれを質問ではなく尋問と呼んでいますが、実際そのくらい厳しい調査が行われるのです。
税務調査で追徴課税になる確率
相続税の税務調査が入った場合、追徴課税になる確率はおよそ84%だそうで、ほとんどのケースで申告漏れを指摘されていることがわかります。
税務署も税務調査に入るということは、それなりに指摘すべき点について決めてから、つまり黒だと思って税務調査に来ているので追徴課税を回避するのは至難の技なんです。
税務調査が入るタイミング
相続税申告をした直後であれば、税理士からの忠告をある程度覚えているかもしれませんが、実際申告をしたその年に税務調査は入りません。
明確な規定はありませんが、概ね相続税申告をしてから3年後に税務調査が入るといわれています。
相続人の多くはすでに油断している人が多く、相続財産をすでに消費しているケースもあるため追徴課税されるとダメージがより大きいのです。
税務調査当日の仕組まれた罠
相続税の税務調査は丸1日がかりで行われます。
ただ、基本的には税務調査当日までの間に税務署側は、被相続人はもちろんの事、相続人など近親者の銀行口座の入出金履歴は全部調べ上げてから乗り込んできていることに注意が必要です。
どのくらいまでさかのぼって調べているのですか、とよく聞かれるのですが、概ね10年は調べられていると考えたほうがよいでしょう。というのも、銀行の記録の保管期限が10年だからです。
午前中の世間話に大量の罠
税務調査当日は午前中から始まりますが、午前中はほとんど突っ込んだことを聞いてきません。
というより、一見すると相続税と何の関係があるの?と思うようなことばかりを聞いてくるのです。
【午前中のよくある質問】
・被相続人はどんな方でしたか?(性格、金使い、浪費グセ)
・亡くなられた時の状況
多くの相続人の方はこの午前中の質問でかなり油断します。
何だ、この程度のことしか聞いてこないなら大丈夫だ、何て思ってしまうのですが、実はこれには巧妙な罠が仕掛けられているのです。
午後は一気に確信をついてくる
午後になると一転して一気に厳しい質問をしてきます。
例えば午前中の段階で次のような回答をしていたとします。
「うちの主人はガンで長らく闘病生活をしていて、なくなる前数ヶ月はほぼ病室で寝たきりの状態でした」
この証言に対して税務署は次のように質問してきます。
「ご主人がなくなる1ヶ月前に口座から100万円現金が引き出されていますが、これは誰が引き出したのですか?」
おそらくシミュレーションでは、主人が自分で引き出して贈与してもらったと答える予定だったはずが、午前中に病室で寝たきりと答えてしまっているためその答弁が封じ込められてしまうのです。
他にもこんなケースもあります。
「うちの主人は倹約家で、ギャンブルは大嫌いでした」
と被相続人の性格について回答をしている場合、午後になると次のように攻めてきます。
「この◯月◯日に高額な出金があるのですが、このお金はどこに行ったのでしょうか?」
このような質問をされた際に、本人がパチンコなどで使ったと言い逃れをしようと画策する相続人の方がよくおられるのですが、午前中の世間話の中でその言い訳を封じ込められてしまうのです。
〇〇してもらったことにしよう、は通用しない
税務署の調査員の人は、相続税の税務調査のプロで相続人の人がどうやって隠そうとするのかを熟知しているので、口裏を合わせて乗り切ろうと考えていると、ほとんどのケースで失敗します。
万が一税務調査で嘘が発覚すると、重加算税というより重いペナルティが課せられるリスクもあるため注意が必要です。
実際、税務署は税務調査に入ると重加算税を課税させたいと考えているため、嘘で取り繕うのは非常にリスクが高いといえるでしょう。
まとめ
相続税の税務調査は、親族内のお金の動きを丸裸にされますので、出て行ったお金の行方は徹底的に追っかけられます。
何年も前だから大丈夫だろうと思っていると、税務署は10年間さかのぼって調べてきますので油断は禁物です。
相続税申告をする際には、過去の通帳を見返して怪しい点がないか自分たちでもよく確認することをおすすめします。