相続税を延滞するケース
相続税の納税が遅れた場合は、原則として理由を問わず一定のペナルティが課されます。
納税が遅れてしまう理由には、主に次のようなケースが考えられます。
相続税申告自体が間に合わない
「相続税申告が期限までに間に合わない」というご相談を頂くことがよくあります。相続税申告は10ヶ月という期限がありますが、この期限を長いと捉えている人ほど相続税申告が間に合わなくなる傾向があるため注意が必要です。
10ヶ月と聞くと長いと思うかもしれませんが、実際はそうではありません。
亡くなられた直後は葬儀の手配などで忙殺されることになるので、概ね四十九日が終わる頃まで相続関連の手続きはほとんど進められません。
ようやく着手できるようになった時にはすでに数ヶ月過ぎていることが多く、それから財産調査や相続人の確定、遺言書の捜索などを行っているとあっという間に申告期限が迫ってきます。
仕事をしている相続人の方については、平日はほとんど時間が割けないでしょうから、なおさら手続きは進まないでしょう。
相続税申告が間に合わない場合の対処法
遺産の全体像がはっきりとわからないような場合は、できる限り早い段階で税理士に相談することが一番の解決策となります。
相続税申告は毎年行っている確定申告とは違い、準備しなければならない書類が膨大であり、しかも複雑な計算が多々含まれるので一般の方が自分で申告するにはかなり難易度が高い手続きです。
また、4ヶ月以内には「準確定申告」という亡くなられた方のその年の確定申告もしなければならないことを考えると、それらもまとめて早い段階で税理士に依頼する方がよいでしょう。
遺産分割協議が終わらない
遺産分割協議が終わっていないと、相続人ごとの相続分が確定しないため相続税申告書を作成することができません。
実際、相続がもめ事に発展しているケースについては調停や審判に移行するため、10ヶ月以内に解決できないことが多々あります。
ただ、このような場合でも相続税の納税期限を延長してくれるわけではありません。
法定相続分で納税
遺産分割協議が終わらない場合は、一旦法定相続分で相続したと仮定して相続税申告と納税をすることになります。
言葉でいうと簡単なのですが、実際は非常に大変なことなんです。
例えば、相続人が配偶者と子供1人の場合、本来であれば配偶者が相続する部分については「配偶者控除」が使えるのでほとんどが非課税にできるところなんですが、遺産分割協議がもめている状況ではこういった特例を適用することができません。
そのためかなり割高な相続税を一旦は納税しなければならないのです。
納税した相続税は、その後に遺産分割協議が確定した段階で再度申告し直すことで、多く収めていた差額を取り戻すことができます。
ただ、一旦は高額なキャッシュを準備しなければならないことを考えるとかなりの負担になることは間違いないでしょう。
相続税の納税が間に合わない場合のペナルティ(延滞金)
相続税の納税が間に合わない場合、なんの対策も取らないと次の計算式で算出されるペナルティ(延滞金)が課されます。
・無申告加算税(相続税申告をしなかった場合)
納税額50万円以下は15%、超える部分は20%
・重加算税(意図的に財産を隠蔽などした場合)
本来納めるべき相続税×40%
・利子税
課税割合は年によって異なります。
間に合わない場合の対処法
どうしても相続税申告が間に合わない場合は、そのまま放置せずに次のいずれかの対策を検討しましょう。
延納、物納
どうしても納税する現金が準備できない場合は、納税を遅らせる「延納」を申請することができます。ただ、必ず認められるわけではなく、本人に納税できる財産が本当にないのかなど、細かく確認されることになります。
また、延納も難しい場合は相続財産そのもので納税する「物納」という選択肢もありますが、時価よりも低い評価額の扱いになってしまうので現実的にはあまりおすすめできません。
カードで分割払い
個人的におすすめしたいのはこちらの方です。
最近は相続税や贈与税もカード払いで納税できるようになったので、一旦はカード払いで決済をして、後はカード会社の支払い金額を調整して事実上の分割のような状態を作ることができます。
相続税の金額にもよりますが、この方法で切り抜ける方法が一番シンプルで簡単です。
まとめ
相続税は他の税金に比べて高額になる傾向があるので、延滞してしまうとペナルティの金額もかなりの金額に上ることになります。
間に合うか心配という方は、今すぐにでも税理士に相談することをおすすめします。