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個人商店の相続がもめる理由とは

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個人商店の相続で揉めるケース

個人商店を営んでいる人全てが、相続においてリスクがあるというわけではありません。

相続が紛争化するのは、個人商店を営んでいる方の中で、次の条件に当てはまるケースです。

・自己所有の不動産で個人商店を営んでいる
・住居と店舗が一体型である
・相続人が複数いる

上記の条件がすべて揃うと、遺産分割が紛争化するリスクが高いです。

自己所有の不動産で個人商店を営んでいるということは、後を継ぐ相続人にはもれなくその不動産が付いてくることを意味します。

通常、こういったケースですと後継者となる子供がすでにお店を手伝って修行しているケースが多いので、事実上は後継者が決まっていることが殆どです。ですから本来であれば、そのままスムーズに承継できればよいのですが、次の事例のように紛争化してしまうことがあるのです。

兄弟がお金に困っているケース

長男と次男が相続人である事例において、長男が生前からお店の手伝いをしていて後継者になる予定でした。一方次男は東京に出て、好き勝手に暮らしていました。次男も長男が後継者になるものと考えてはいましたが、相続が発生すると自体は一変します。

相続が発生し店舗兼用の住宅が相続財産の価格割合のうち大半を占めることになり、それを相続する長男に対し次男が納得できないと抗議をしたのです。

仮に長男に後を継がせる旨の遺言書が見つかったとしても、次男には「遺留分」という法律で保護されている最低限の取り分があることから、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。

そうなると長男は、次男に対して遺留分相当額の金銭を支払わなければ、店舗兼住宅を単独で相続できなくなってしまうのです。

仮に相続財産が店舗兼住宅のみだとして価値が8.000万円であれば、長男は次男に対して最低でも遺留分に相当する2,000万円を現金で支払わなければならないんです。

遺産分割が原因で閉店に

このように店舗兼住宅の占める価格割合が高額になると、支払わなければならない金銭の額も高額になることから、後継者が支払うことができず、やむなく店舗兼住宅を売却するというケースが出てきてしまうのです。

そうなると、今まで先代が築き上げてきた店ではもう営業することができません。

非常に理不尽に感じるかもしれませんが、皆さんが思っている以上に相続が発生すると相続人は自己の取り分を徹底して主張するケースが多く、譲り合いで解決することはとても難しいのです。

今回のケースのように、店舗兼住宅の場合は長男がすでにそこに居住していることが多いので、売却することで住まいも失ってしまうことになります。

では、このような事態を回避するためには、どんな対策をとればよいのでしょうか。

 

生命保険を活用する

店舗兼住宅を長男に単独相続させるためには、次男に支払う金銭も事前に準備する必要があります。生命保険の保険金を使って保険金の受取人を長男に指定し保険金を使って次男に遺留分侵害額を支払わせれば、金銭的な問題は解決できます。

ただ、それだけだと次男がまだ納得しない可能性があります。

遺言書に付言を書く

遺言書は基本的に法的に意味のあることだけを書くことが多いのですが、今回の事例のようにこじれる可能性があるケースでは、別途付言を書き記すことも有効な対策の1つとなります。

付言とは遺言書の補足事項のようなもので、なぜそのような分け方を希望するのかなど、被相続人の気持ちを書くことが多いです。

例えばこんな感じです。

「生前長男は店の経営が苦しい中、給料をほとんど受け取らず店の存続のために尽くしてくれました。経営状態は決して良いとは言えない状況ですが、どうかこのまま店を存続させて欲しいので、長男に託します」

実際、個人商店で経営状態が余裕たっぷりというケースの方が珍しいので、実情を詳細に書くことで次男も状況を理解し、ある程度理解を示しやすくなります。

 

まとめ

個人商店を賃貸で営業している場合は、そこまで資産価値が高くなりにくいので解決しやすいのですが、所有不動産で事業をしている方は、必ず何らかの対策をとらないと事業の存続に関わる可能性があります。

できれば生前から子供達と話し合って納得してもらうことがベストですが、それが難しいようであれば、生命保険や遺言書を駆使してできるだけ揉めないよう配慮することが大切です。