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2020年相続税制の何が変わる?

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変わる点1:所有者の申告制度

地方を中心に問題になっているのが、誰が所有しているのか不明な土地や建物の増加です。

相続登記などの手続きが何代にもわたって放置されている土地や建物については、役所でも所有者がわからないため、重要な税収である固定資産税や相続税を課税することができないという状況があります。

そこで、今回の改正で市町村長は条例で土地又は建物について、登記簿に登記されている所有者が死亡している場合は、現に所有している者に対して、住所、氏名、などの情報を申告させることができるようになりました。

この制度には罰則規定もあるので、自分が所有者だと認識した人は、今後役所にその旨を届け出る義務が生じるのです。2020年4月1日からスタートしています。

これにより、市区町村が固定資産税や相続税を徴収しやすい状況が整うことが期待されているのです。

 

変わる点2:使用者を所有者とみなすことが可能に変わる

これまで役所では、土地や建物の所有者がわからない場合、そこを使っている人に対して固定資産税を課税する明確な根拠がありませんでした。

ただ、これでは適切な課税ができないことから、今後は調査をしても所有者が1人もわからない場合、市町村は使用している人を所有者とみなすことが可能になります。

これにより使用者を固定資産税課税台帳に登録して、固定資産税を課税できるようになったのです。よって、たとえ所有者が不明でもその土地や建物を使用している人がいる以上、固定資産税を徴収できるようになります。

 

変わる点3:低利用土地を譲渡した場合の所得税の特別控除に変わる

固定資産税の徴収が厳しくなる一方で、使わない土地については積極的に売却してもらおうという制度に変わることになりました。

全く利用されていない土地、または周辺地域の状況と比較してほとんど利用されていない土地については、これまで売却してもらいたくても、所得税が発生することを嫌って売却が進まないこともありました。

今後は、こういった土地については低未利用土地として次の要件を満たせば、他人に売却した時の譲渡所得について譲渡益から100万円を控除できるように変わるのです。

・譲渡価額がその上にある建物等を含めて500万円以下の譲渡であること
・所有期間が5年を超えること
・その低未利用土地が都市計画区域内に所在すること
・低未利用土地であったこと及び譲渡後の土地の利用について市区町村による確認が行われたこと

 

変わる点4:配偶者居住権が設定されている不動産の扱いが変わる

法改正によって配偶者居住権が創設されたことで、配偶者居住権の税制上の扱いについても変わることになりました。

配偶者居住権とは、一定の条件を満たした場合に配偶者が所有権を持っていなくても被相続人が所有していた自宅に住み続けることができる権利のことで、2020年4月から変わっている内容です。

配偶者居住権が付いている不動産は、通常の不動産に比べて利用が制限されている分税金を計算する際の取得費が変わってきます。

計算式は以下の通りです。

<土地の計算式で変わる点>

取得費=居住土地の取得費×配偶者居住権等割合

<建物の計算式で変わる点>

取得費=居住建物の取得費×配偶者居住権等割合−設定から消滅等までの期間に係る減価の額

ちなみに、配偶者居住権によって相続の実務は大きく変わることになりましたが、実は一般の方の中には誤解している人も多いので注意が必要です。

変わる点を誤解しているケース

配偶者居住権があれば、配偶者が遺産分割によって自宅を失ったり自宅を相続するのと引き換えに生活費を失う事態を防止できたりするのですが、配偶者居住権は何も対策を取らないと手に入りません。

というのも、相続税対策における遺言書によって配偶者居住権を取得させる旨を記載しておかないと、現実的には配偶者居住権を取得できないのです。

相続発生後に他の相続人も含めて全員で合意すれば認められるという方法もありますが、現実的には反対される可能性が高いので、ちゃんと相続税対策も含めて遺言書に書いておかないとあまり意味がありません。

相続税対策と合わせて変わる制度に合わせた遺言書を書くことをおすすめします。

 

まとめ

2020年の相続税関連の改正は、知らないと後で困ることになる部分も多いので、この機会に必ず押さえておきましょう。