財産を相続したとき
土地と住宅を受け継ぐ場合、相続税を算出するために財産の時価を明確にしなければなりません。そこで、国税庁では、相続税にまつわる土地・住宅の時価計算に役立つ以下の方法を推奨しています。
路線価によって土地の時価を知る
国税庁では、毎年7月になると「路線価」という基準を発表します。
住宅が面している道路ごとに土地1㎡あたりの価格を定め、道路の価格と住宅が建っている土地の広さを掛け合わせて算出するのです。これにより、相続税計算において住宅部分を除いた土地の価格を求めることが可能になります。
なお、路線価が特に設定されていない道路については、土地の固定資産税評価額に対し定められた倍率を掛けて計算すれば問題ありません。
住宅の価格は固定資産税をもとにした倍率方式で算出
住宅部分の評価額は、課せられている固定資産税に評価倍率を掛けて算出します。
毎年、各市町村から送られてくる固定資産税の納税通知書が大事な要素になるのです。通知書に同封されている固定資産税の課税証明書のうち「家屋」の部分を参考にし、その評価額を住宅の評価額として採用すればわかる仕組みになっています。
また、相続税には、控除可能な非課税財産が定められており、以下に当てはまるものは課税対象額から相当額を差し引くことができるので覚えておきましょう。
・お墓や仏壇・祭具にかかった費用の一部
・国や地方などに寄附した財産
・生命保険金のうち500万円×法定相続人の数まで
・死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数まで
住宅の相続で活用したい小規模宅地等の特例
相続した土地や住宅に関して、相続税額を算出するための方法は上で説明したとおりです。しかし、条件が合えば評価額を一定程度減らすことができる「小規模宅地等の特例」を活用することで、住宅部分の相続税額が節約可能になる点にも注目しておきましょう。
住宅の小規模宅地等の特例とは
相続した住宅は、固定資産税評価額をベースにして相続税額を算出することが一般的です。課税されるのは、基礎控除額である「3,000万円+600万円×法定相続人数」を超えた場合なので、該当しそうなケースに注意しましょう。
相続税の対象となる住宅が基礎控除額を超える場合でも、住宅部分に特定居住用宅地等を適用することができれば、330㎡を限度面積として相続税額を最大8割減額できるので、ぜひ活用したいところです。
適用要件
小規模宅地等の特例を利用することができるのは、被相続人の配偶者か同居していた親族になります。もし、被相続人の配偶者も同居親族もいない場合は、いわゆる「家なき子特例」に該当する親族がいれば、その相続財産は制度の適用対象として考えることができるのです。
具体的には被相続人と離れて暮らす子が代表的で、より広く定義するならば、亡くなった被相続人と3年以上持ち家から離れている親族がいる場合が対象となります。つまり、二次相続であれば、家なき子特例が適用となるのです。
これらの条件に当てはまれば、住宅の評価額は8割減となりますので、その分、相続税額も大きく節約することが可能になるでしょう。ただし、小規模宅地等の特例は、平成30年4月1日以降、適用要件がより厳しくなっています。このため、相続税の取り扱い経験豊富な税理士等に相談し、被相続人とその家族が特例に該当するか十分に確認することも大切です。
住宅ローンが残っている物件の相続
被相続人が遺した住宅にローンが残っているケースは多々あり、ローン返済のため住宅を売却することもまた多いといえます。しかし、もし被相続人が団体信用生命保険に加入していれば、生命保険がおりて住宅ローンの残債を返済できます。
団体信用生命保険はほとんどの人が住宅購入の際に加入しているものなので、必ず確認してみましょう。この他、別途加入している生命保険からも保険金がおりますから、相続税を支払う上で大きな助けとなることが考えられます。
団体信用生命保険の詳細
そもそも団体信用生命保険とは、住宅ローンを組む時にほとんどの人が加入する保険で、加入者が死亡や高度障害の状態に至ったときにローン残債を完済してくれるものです。
また手続きとしては、土地や住宅に設定されている抵当権を外す必要もあり、以下の手順を踏むことになるので確認しておきましょう。
・銀行に対し被相続人が亡くなったことを伝える
・団体信用生命保険で住宅ローンが完済する
・銀行が抵当権抹消のための書類を渡してくれる
・書類持参で法務局に行き抵当権抹消登記の申請を行う
なお、抵当権抹消に際し、住宅1軒あたり1,000円の登録免許税がかかります。
まとめ
相続税は住宅の評価額だけに対してかかるものではなく、あくまでも被相続人の全財産を対象として計算します。住宅は特に資産価値が大きいため、評価額を求める方法と相続税額計算方法の全容を把握することはとても大切です。
だからこそ、住宅にかかる相続税について基本的な情報を知っておかなければなりません。中でも、小規模宅地等の特例は住宅の相続税額を大きく左右するので、十分な情報収集が必要になります。必要に応じて住宅を含む相続税の取り扱い豊富な税理士に相談する等して、最大限、相続税額を節約できるよう努めてみましょう。