相続税の申告要件
相続税では生命保険金について知っておかなければならないことがいくつかあります。
1:非課税枠があるため、「法定相続人数×500万円」までなら課税されることはない
2:非課税枠を超えた分については課税対象となる
3:相続する財産の総額が基礎控除額を超えた場合、相続税の申告を行わなければならい
基礎控除額の計算は「3,000万円+法定相続人数×600万円」の式で算出しますので、例えば法定相続人が被相続人の配偶者と子供3人だった場合、基礎控除額は「3,000万円+4人×600万円=5,400万円」となります。
つまり、5,400万円までは課税対象の財産から控除できることになるのです。
仮に、相続税を計算する上で非課税枠を超えた分の生命保険がどうなるかを考えてみましょう。
この場合、他の相続財産と合わせて5,400万円より下の金額であれば、相続税の申告と納付が不要になります。相続発生後の具体的な手順としては以下の通りです。
1:被相続人が死亡した連絡
役所へ死亡届を提出したり、金融機関等へ死亡の事実を伝えたりする等、連絡事項をきちんと済ませましょう。特に、死亡届は「亡くなった事実を知ってから」7日以内に提出しなければならないので、期限を超えないよう十分注意が必要です。
2:被相続人の財産状況の確認
被相続人の預貯金や不動産、動産等、遺産に該当するものを細かく確認し把握しておく必要があります。
昨今では銀行もデジタル化を進めているため、被相続人が使っていたパソコンやスマートフォンの中身を確認することも大切です。
特にネット銀行ではオンライン通帳しか発行しないケースも多々あるため、デジタル機器の確認は必須事項といえます。
3:遺産分割協議
法定相続人が集まり、法定相続割合に基づいてどのように財産を分け合うかを話し合って決定します。相続税は生命保険も非課税状況により変わってくるので、遺産分割協議でもきちんと話題に乗せて法定相続人全員で理解することが大切です。
相続する人及びそれぞれの相続額が決まれば、「遺産分割協議書」を作成する必要があることも忘れないようにしましょう。
相続税における死亡保険金の考え方
相続税において生命保険が非課税となるかどうかは、前述の通り法定相続人の数で決まってきます。
例えば、法定相続人が配偶者と子供3人で、相続財産が4,000万円、そのほかに生命保険金が3,000万円だった場合は、「4人×500万円=2,000万円」を超えるため、生命保険金のうち残る1,000万円が課税対象となるのです。
ここで基礎控除を計算すると「3,000万円+4人×600万円=5,400万円」となり、課税対象額が合計5,000万円なのに対し控除額が5,400万円なので、相続税の納付は不要となります。
また、被相続人の配偶者には特別な非課税枠があることも知っておきましょう。「法定相続分か1億6,000万円」のいずれか大きい額までであれば相続税が非課税になるので、相続において生命保険金がやや高くても非課税となる可能性が出てくるのです。
この軽減制度を利用するためには、先に述べたとおり、相続開始後10ヶ月の申告期限内に遺産分割協議が終了しており、かつ相続税の申告を済ませることが求められます。
つまり、当該制度を利用して納税額が0円になった場合でも、相続税の申告は行わなければならないことを覚えておきましょう。
相続税がかかるケース
相続税において生命保険金に非課税枠があることは前述の通りですが、法定相続人が配偶者と子供3人で、相続財産が3,000万円、生命保険が2,000万円だった場合について考えてみましょう。
相続税における生命保険の非課税枠は「法定相続人数×500万円」までなので、この場合は非課税枠が2,000万円となり、生命保険には課税されないことになります。
ただし、相続税における生命保険の非課税枠は、当該相続人が生命保険金を実際に受け取った時に限り適用となる点に注意しましょう。保険金の受取人が、代襲相続ではない孫や内縁の妻等、法定相続人でない場合は、「500万円×法定相続人数」にはカウントされず、非課税枠も適用されません。
まとめ
相続税で死亡保険金が非課税となるには、「500万円×法定相続人数」で導き出された数値を下回る必要があります。仮に上回ってしまった場合は、相続財産と同じく課税対象として扱われるので注意しましょう。
ただし、基礎控除分があるので、総合的に見て課税対象財産が基礎控除額以内に収まれば、相続税に税金がかかることはありません。
相続税は民法と税法が同時に関係する分野であるため、できるだけ相続税の取り扱い経験豊富な税理士等に依頼して、間違いのない相続を進めることも大切になってくるでしょう。