人生の終わりには社会貢献したい
誰でも、人の役に立てると嬉しいはず。しかし、普段は自分のことで精一杯で、ボランティア活動や寄付などは、なかなかできないこともあるでしょう。
そんな人でも、自分が亡くなったとき、財産の一部を寄付することはできるのではないでしょうか?
自分の残す遺産を寄付したい場合、財産を引き継ぐ相続人に、「財産の一部は寄付してほしい」とあらかじめ頼んでおく方法もあります。
しかし、相続人が自分の希望どおり寄付をしてくれるとは限りません。元々相続人と仲が悪かった場合などは、特に心配です。
遺言書で遺産の寄付ができる
自分の遺産を確実に寄付したいなら、遺言書に書いておきましょう。
遺言書で特定の団体等に財産を寄付する旨を明記しておけば、財産は相続人の手に渡ることなく、直接寄付先へ渡ります。遺言書の内容は、法律上の相続よりも優先するからです。
遺言書を書いて財産を寄付する方法は、「遺贈寄付」と呼ばれます。
遺言書は親族に内緒で手書きして作ることもできるので、遺贈寄付なら手軽だと思うかもしれません。
しかし、遺贈寄付のやり方を間違えると、目的を達成できないだけでなく、寄付先に多大な迷惑をかける可能性もあります。
以下、遺贈寄付の失敗例を説明しますので参考にしてください。
遺贈寄付の失敗例①包括遺贈で借金も寄付!?
Aさんは親族にもある程度財産を残したいので、自分の財産の半分を寄付したいと考えました。
そこで、「財産の2分の1をNPO法人〇〇〇〇に遺贈する」という遺言書を作成。
ところが、Aさんが亡くなった後、この遺言が大きな問題になりました。
というのも、Aさんは預貯金や不動産のほかに、借金を残していたからです。
「財産の2分の1」のように、割合を指定して遺贈する方法は、「包括遺贈」と呼ばれます。
包括遺贈した場合、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産も遺贈することになります。つまり、寄付先はAさんの借金も引き継いでしまうのです。
包括遺贈は放棄することもできますが、家庭裁判所での手続きが必要です。
結果、Aさんの寄付は実現しなかったばかりか、寄付先も困らせてしまうことになりました。寄付するなら、どの財産かを指定して寄付するべきだったのです。
遺贈寄付の失敗例②売れない不動産はもらった相手も困る
土地をたくさん持っていたBさん。自分の土地のうち1つを社会福祉法人に寄付することにし、遺言書を作成しました。
しかし、Bさんの寄付も、寄付先を困らせることになります。Bさんが寄付した土地は田舎にあって利用価値が低く、売ろうにも売れないような土地だったからです。
不動産を売ってお金に換えられれば、寄付先も活用できます。
一方、売却できない土地をもらっても、固定資産税などの負担が発生するだけ。当然こうした寄付は受け付けてもらえません。
株式やゴルフ会員権なども同様で、現金化が困難なものは避けた方がいいのです。
遺贈寄付の失敗例③遺留分をめぐって相続人とトラブルに
遺言書を書けば遺産を好きなように遺贈できますが、相続人の遺留分(最低限の取り分)にも注意しておかなければなりません。
Cさんは全財産を公益法人に寄付することにし、遺言書を作成。これに納得がいかなかったのが、相続人であるCさんの息子2人です。
Cさんの息子たちは、それぞれ遺産に対し4分の1の遺留分を持っています。そのため、息子たちは寄付先に対し、遺留分に相当する金額の支払いを請求する権利があります。
遺留分の支払い請求は「遺留分侵害額請求」と呼ばれます。
このケースでは、Cさんの息子たちが遺留分侵害額請求を行ったため、寄付先を巻き込んでトラブルに発展してしまいました。
遺贈寄付で失敗しないために注意しておきたいことは?
ここまで説明したとおり、遺贈寄付で失敗することはあります。
遺贈寄付は、自分の勝手な判断だけでしない方が無難です。実際に財産の受け渡しをするのは死後になるとはいえ、生前に寄付先に寄付の受け入れについて確認し、了承を得ておくことが大切です。
遺贈寄付は相続税の節税にもつながるので、節税効果を期待する人も多いでしょう。
節税効果を得るには、国、地方公共団体、特定の公益法人(独立行政法人、社会福祉法人など)、認定NPO法人への寄付でなければなりません。
遺贈寄付によって税金対策したい場合にも、あらかじめ税理士に確認しておきましょう。
まとめ
遺言書は自分の意思だけで書けますが、遺贈寄付をするときには事前の準備が必要です。
遺贈寄付に失敗すると、せっかくの善意が無駄になってしまいます。
多額の財産を寄付すると、相続人への影響も大きくなります。自己判断だけで遺贈寄付をするのではなく、専門家や寄付先に相談しながら進めましょう。