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遺産相続の際に知っておきたい相続税の計算方法

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ステップ1 課税価格の合計額を出す

遺産相続でかかる相続税を計算するには、最初に「課税価格の合計額」を出す必要があります。課税価格の合計額は、本来の相続財産(民法上の相続または遺贈により取得した財産)に、下記のものをそれぞれプラス、マイナスして計算します。

<プラスするもの>

①みなし相続財産

生命保険金や死亡退職金は、民法上は相続財産ではなく、受取人固有の財産になります。しかし、遺産の相続税の計算では、「みなし相続財産」として、相続税の課税対象に含めることになります。

②生前贈与加算される財産

相続開始前3年以内に被相続人が贈与した財産については、受贈者(贈与を受けた人)が「本来の相続財産」「みなし相続財産」「相続時精算課税制度による贈与財産」のいずれかを被相続人から取得している場合に、相続税の課税対象に含めることになります。

③精算課税加算される財産

60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫に贈与を行う場合には、暦年課税(毎年基礎控除額110万円を差し引いた額に課税される方法)のほかに、相続時精算課税(相続時に贈与税と相続税を合わせて精算する方法)を選択することができます。相続時精算課税の適用を受けて贈与された財産については、相続時に相続財産に加算されることになります。

<マイナスするもの>

④非課税財産

生命保険及び死亡退職金については、それぞれ「500万円×法定相続人の数」に対応する額が非課税になりますから、これを相続財産から差し引きします。

⑤債務及び葬式費用

相続開始時点に存在していた被相続人の債務及び被相続人の葬式費用については、債務控除として相続財産から差し引きすることができます。

 

以上より、課税価格の合計額の計算式は、以下のようになります。

課税価格の合計額=本来の相続財産+①+②+③-④-⑤

 

ステップ2 課税遺産総額を計算する

課税価格の合計額が出たら、次に「課税遺産総額」を計算します。この課税遺産総額をもとに、遺産の相続税を計算することになります。課税遺産総額は、課税価格の合計額から「基礎控除額」を差し引きして算出します。

基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数

課税遺産総額=課税価格の合計額-基礎控除額

 

ステップ3 相続税の総額を計算する

相続税においては、まず課税遺産総額を法定相続分で分けたものと仮定して「相続税の総額」を計算します。各人の相続税額は、仮の相続額に基づき計算した相続税の総額を、実際の相続額で按分して算出します。つまり、遺産をどのように分けたとしても、相続税の総額は基本的に同じということになります。

 

<相続税の総額の計算の例>

法定相続人が被相続人の妻、長男、次男の3人で、課税遺産総額が5200万円の場合

 

法定相続分は妻2分の1、長男4分の1、次男4分の1となりますから、課税遺産総額の5200万円を法定相続分どおりに分けると、妻2600万、長男1300万、次男1300万となります。これをもとに、妻、長男、次男の仮の相続税額を計算します。

 

法定相続分に対応する相続額が1000万円超3000万円以下の場合、相続税は次の計算式で算出します。

相続額×15%(税率)-50万円(控除額)

 

この計算式に当てはめると、各相続人の仮の遺産の相続税額は次のようになります。

妻:2600万円×15%-50万円=340万円

長男:1300万円×15%-50万円=145万円

次男:1300万円×15%-50万円=145万円

 

以上より、相続税の総額は次のようになります。

340万円+145万円+145万円=630万円

 

ステップ4 各相続人の相続税額を計算

相続税の総額が出たら、これを各相続人の実際の相続額に応じて分け、各人の相続税額を算出します。

たとえば、相続税の総額が630万円の場合、被相続人の妻が遺産の2分の1、長男、次男がそれぞれ4分の1(法定相続分どおり)相続したとすると、各相続人の相続税額の計算は

 

妻:630万円×1/2=315万円

長男:630万円×1/4=157万5000円

次男:630万円×1/4=157万5000円

 

となります。

なお、被相続人の配偶者には、「1億6000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは相続税がかからないという「配偶者の税額軽減」(配偶者控除)の制度があります。そのため、この例では配偶者の相続税額は0円となります。