土地を売却する前の相続登記の段階で登録免許税が発生
・土地を現金化して遺産分割する方法がある
相続が発生したとき、被相続人が遺言を残していなければ、相続人全員で遺産分割協議を行って相続財産をどう分けるかを決める必要があります。ここで、相続財産が土地のみという場合などは、不動産は簡単に分けられませんから、遺産分割がスムーズに進まないことがあります。
このような場合には、相続財産の土地を売却して現金化し、その現金を相続人の間で分けるという「換価分割」という方法で遺産分割を行うことがあります。
・相続した土地は売却前に名義変更が必要
換価分割のために相続財産の土地を売却したいという場合でも、被相続人名義のままでは土地の売却ができません。売却前に相続登記を行い、土地を相続人名義に変える必要があります。
相続財産の土地は、相続開始と同時に、相続人全員で法定相続分に応じて共有している状態です。そのため、原則として、相続人全員の共有名義に変える相続登記を行うことになります。
なお、土地の売却には名義人全員が関与することになりますから、相続人が多数いる場合などには、共有名義にすることで手続きが複雑化してしまうことがあります。そのため、換価分割する場合には、一旦、相続人の代表者の単独名義で相続登記を行ってから売却するという方法も行われています。
・相続登記を申請するに登録免許税を支払う必要がある
法務局で登記申請をする際には、ほとんどの場合登録免許税が課税されます。相続登記の登録免許税は、固定資産評価額の1000分の4となっていますので、登記申請時にこれを収入印紙で納める必要があります。
・便宜上単独名義にしても贈与税は問題にならない
換価分割のため、便宜上相続人の代表者単独名義に変更した場合、その後売却代金を分配すると贈与があったように見えてしまい、贈与税が課税されてしまう可能性があります。
しかしながら、この点に関して国税庁は、単独名義にしたことが単に換価の便宜のためであれば贈与税の課税が問題になることはないとする見解を示しているため、贈与税の心配はありません。
遺産の額が基礎控除額を超えるなら相続税が発生
・相続税の基礎控除額とは
相続が発生した場合、相続財産の額が基礎控除額を超えていれば、財産を取得した人に相続税がかかってきます。基礎控除額とは、次の計算式で計算します。
3000万円+600万円×法定相続人の数
・相続税計算の際の土地の評価額
相続財産の額を計算するときには、土地の評価額を出さなければなりません。相続税における土地の評価額は、土地の売却価格とは異なります。宅地の場合には路線価方式または倍率方式となっており、通常は売却価格より低くなります。
・相続税が課税されるなら10ヶ月以内の申告が必要
相続税が課税されるケースでは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告・納税を行わなければなりません。換価分割が行われた場合の各相続人の相続税の課税価格は、土地の評価額に換価代金の配分割合をかけて計算します。
相続した土地を売却する際に譲渡所得税が発生
・譲渡所得税とは
換価分割が行われた場合、相続財産の譲渡があったことになり、譲渡所得税の課税対象になります。相続した土地の売却により譲渡益が生じていれば、売却代金の分配割合に応じて各相続人に譲渡所得税がかかります。なお、譲渡所得の計算式は、次のようになります。
譲渡所得=収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+譲渡費用)-特別控除額
特別控除額としては、たとえば居住用財産の譲渡の場合には3000万円が控除になります。
・譲渡所得税の税率
譲渡所得税は、取得した日の翌日から譲渡した年の1月1日までの期間によって、税率が次のように変わってきます。
【短期譲渡所得】
5年以下の場合20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
【長期譲渡所得】
5年を超える場合39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
なお、相続で取得した土地の場合、相続した日が取得日になるのではなく、被相続人が取得した日を引き継ぐことになります。そのため、長期譲渡所得に該当するケースが多くなっています。
・相続税の取得費加算の特例
相続した土地を、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却したときには、相続税額のうち一定範囲を必要経費に加算することができる「取得費加算の特例」を利用できます。そのため、相続税を支払っているケースでは、譲渡所得税が軽減されることになります。