遺産の中に不動産があれば相続登記が必要
・相続登記とは
不動産の所在や面積、所有者などの情報は、取引の安全のため法務局で登記され、一般に公開されています。不動産の所有者が変わったときには、所有権移転登記を行って不動産の名義を変更しなければなりません。
不動産の所有者が亡くなったときには、通常、相続人が不動産を承継しますから、相続人へ名義変更する登記が必要になります。遺産相続を原因とする所有権移転登記は、一般に相続登記と呼ばれます。
・相続登記に期限はない
遺産相続が発生し、遺産の中に不動産があれば、相続登記が必要になります。遺産相続の際には他にもいろいろな手続きをしなければなりませんから、相続登記の期限が気になる方もいるのではないでしょうか。
実は、遺産相続における相続登記は法律上義務付けられているものではなく、期限もありません。相続登記をせずに放置していても、罰則もないですから、すぐには困らないこともあります。
・相続登記は速やかにしてしまうのが安心
遺産相続で不動産を取得しても、登記をしていなかったら、自分が所有者であることを第三者に対して主張できません。つまり、相続登記をしていない場合、不動産を売却等して処分することもできないということです。
必要が生じてから相続登記をしようと思っていても、いざ手続きする段階には次の相続が発生しており、手続きが複雑になってしまうことがあります。遺産相続が発生したら、速やかに相続登記をしてしまうのが安心です。
遺産相続で登記を行う場合の必要書類
・遺産相続の仕方により登記に必要な書類は変わる
相続登記を行うときには、登記申請書と添付書類を、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。登記申請書は書き方が決まっていますから、そのとおりに作成する必要があります。なお、添付書類は、遺産相続の仕方によって次のように変わってきます。
(1) 法定相続分で登記する場合の添付書類
亡くなった人(被相続人)が遺言を残しておらず、複数の相続人(共同相続人)がいる場合、遺産分割をしなければ共同相続人が法定相続分で不動産を共有していることになります。共有状態の相続登記を行う場合の添付書類は、次のとおりです。
①戸籍謄本(除籍・改製原戸籍謄本含む)
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本のほか、双方のつながりがわかる戸籍謄本が必要になります。
②被相続人の住民票(除票)
亡くなった人の住民票は、役所で除票という形で発行してもらえます。
③相続人全員の住民票
登記申請の際には不動産を取得する人の住民票を添付しなければなりません。法定相続の場合には相続人全員の住民票を用意します。
(2) 遺産分割協議により不動産を取得した場合の添付書類
遺産分割協議を行って不動産を相続する人を決めた場合には、次のような書類が必要になります。
①戸籍謄本(除籍・改製原戸籍謄本含む)
(1)と同様、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の現在の戸籍謄本のほか、双方のつながりがわかる戸籍謄本が必要です。
②被相続人の住民票(除票)
(1)と同様になります。
③不動産を取得する人の住民票
相続人全員ではなく、遺産分割協議の結果、不動産を取得することになった人の住民票のみが必要です。
④遺産分割協議書
遺産分割協議書には相続人全員が署名押印し、相続人全員の印鑑証明書を添付する必要があります。
(3) 遺言により不動産を取得した場合の添付書類
亡くなった人が遺言を残している場合には、添付書類は比較的少なくなり、次のようになります。
①戸籍謄本
被相続人の死亡時の戸籍謄本及び遺言により、不動産を取得する人の現在の戸籍謄本が必要です。
②被相続人の住民票(除票)
(1)と同様になります。
③不動産を取得する人の住民票
遺言により不動産を取得する人の住民票が必要です。
④遺言書
自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所で検認を受け、検認済証明書を付けてもらう必要があります。
・その他の必要書類
相続登記を行う場合、上記の添付書類以外に、不動産の固定資産評価証明書が必要です。固定資産評価証明書は法令で定められた添付書類ではありませんが、登録免許税の計算のために要求されています。
また、登記申請を司法書士や相続人の代表者に委任する場合には、委任状も必要です。
遺産相続で登記が必要な場合にかかる費用
相続登記申請をするときには、不動産の固定資産評価額の0.4%の登録免許税がかかります。登録免許税は、登記申請書に収入印紙を貼付して納めます。
相続登記の手続きを司法書士に依頼した場合には、別途司法書士報酬を支払う必要があります。