土地の等価交換とは
土地の等価交換とは、所有している土地をデベロッパー(開発事業者)に譲渡し、代わりにその土地上にデベロッパーが建設した建物の一部を提供してもらうことです。
正式には、「土地の等価交換方式」と呼ばれています。
等価交換とは、同等の価値のものを交換することを意味するため、譲渡した土地の割合に応じた建物の持ち分をデベロッパーから提供してもらうことになります。
つまり、土地と、同等の価値のある建物の区分所有権とを交換することを土地の等価交換と言います。
広大な土地を所有している場合に、デベロッパーから「土地の等価交換でマンションを建設しませんか?」と持ちかけられるケースが多く、マンションを建設したいものの土地が無いデベロッパーと、土地を所有しているものの建物の建築費が無いオーナーとの間で、お互い利害が一致した際に交わされる契約になっています。
土地の等価交換のメリットとデメリット
土地の等価交換を行う一番のメリットは、自己資金が無くとも区分所有権を手に入れられることではないでしょうか。
ローンを組まずに、月々の支払いゼロで不動産を入手出来ると、生活にも余裕が出来ます。
また、後ほど詳しく解説しますが、税制の面でも優遇があります。
デメリットとしては、デベロッパーの方がどうしても立場上強く、交渉の際など、言われるがままになってしまうことかもしれません。
お互い納得のいく等価交換が出来るよう、土地を譲渡するオーナー側も臆することなく自分の意思や考えを伝えるようにしましょう。
土地を等価交換した場合に確定申告で申告する税金
土地の等価交換をした場合、税金はどうなるのでしょうか。
通常、不動産を譲渡した場合には、譲渡所得に対して税金が課せられます。
譲渡所得とは、売却によって出た利益のことで、これに対して所得税と住民税がかかります。
土地の等価交換をした場合も、交換によって取得した建物の持ち分が譲渡所得になり、所得税と住民税が課せられることになるため、この2つの税金について確定申告を行わなければなりません。
個人が、等価交換で土地や建物といった不動産を譲渡した際の譲渡所得は分離課税となります。
分離課税とは、給与所得や事業所得とは分けて譲渡所得の計算をすることです。
そのため、確定申告の際には他の所得と切り離して税額が計算されます。
等価交換で土地や建物を譲渡した場合の税率は、対象の不動産を所有していた期間に応じて、次のようになります。
1.長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額 × 15% =所得税額
課税長期譲渡所得金額 × 5% =住民税額
例:課税長期譲渡所得が3,000万円の場合の税額
所得税額 = 3,000万円 × 15% = 450万円
住民税額 = 3,000万円 × 5% = 150万円
長期譲渡取得に該当するのは、土地を等価交換によって譲渡した年の1月1日時点で、土地を所有していたのが5年以上の場合です。期間の計算の基準が、譲渡した年の1月1日であることに要注意です。
例えば、5年前の4月1日に取得した土地を、満5年となる5年後の4月1日に等価交換によって譲渡しても、譲渡した年の1月1日時点ではまだ満5年は経過していないため、長期譲渡には該当しなくなります。
2.短期譲渡所得
課税短期譲渡所得金額 × 30%=所得税額
課税短期譲渡所得金額 × 9% =住民税額
例:課税短期譲渡所得が3,000万円の場合の税額
所得税額 = 3,000万円 × 30% = 900万円
住民税額 = 3,000万円 × 9% = 270万円
短期譲渡とみなされるのは、等価交換する土地の保有期間が5年未満の場合です。長期譲渡の場合と比較して、所得税も住民税も大幅に高くなります。上記の税率は特例や改正によって変動する場合があります。
長期譲渡と短期譲渡、どちらが得?
こうして比較してみると、長期譲渡所得の税率は、短期譲渡の場合のほぼ半分であり、長期譲渡の方があきらかに税制面で優遇されているように思えます。
この背景には、短期間に土地の売買を行って利益を上げる、いわゆる「土地転がし」の横行を封じたいという国の方針があります。
バブル期は、短期間に土地の売買を繰り返すことで莫大な利益が出たため、不動産がどんどん値上がりし、最終的には、本当に土地を欲している人が買えなくなるという状態を作り上げてしまいました。
そこで、短期の譲渡には税を厳しくすることにしたのです。
ただし、税率だけを見て、単純に「長期譲渡の方が得である」、と言い切れるかというと、そうではありません。
土地と違い、建物は経年劣化するため、築年数が短い、つまり新しければ新しいほど高く売れるからです。
等価交換で土地や建物を短期譲渡しようと考えている方は、長期譲渡の基準を満たすまで待っていた方がいいか、それともすぐに交換した方がいいのか検討するべきでしょう。
土地を等価交換した場合の確定申告における税制特例
個人が土地を等価交換によって譲渡した場合には、確定申告の際に申請できる税制特例があります。確定申告でよく用いられる特例の代表格は「固定資産の交換の特例」と「立体買換えの特例」です。
固定資産の交換の特例
「固定資産の交換の特例」とは、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換した場合に、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べる制度です。
確定申告で固定資産の交換の特例を受けるためには、次の要件をすべて満たしている必要があります。
1. 等価交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること。
(不動産業者が販売のために所有している土地などの資産は棚卸資産であり、固定資産ではないため、確定申告における固定資産の交換の特例の対象になりません)
2. 等価交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であること。
(借地権は土地に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物に含まれます)
3. 等価交換により譲渡する土地は、1年以上所有していたものであること。
4. 等価交換により取得する土地は、等価交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ等価交換のために取得したものでないこと。
(等価交換をする相手が、最初から等価交換によって取引することを目的として所有していた土地の場合には適用されません)
5. 等価交換により取得する土地を、譲渡する土地の交換直前の用途と同じ用途に使用すること。
(宅地は宅地として、山林は山林としてなど、等価交換する前と後の土地の用途が一貫していなければなりません)
6. 等価交換により譲渡する土地の時価と、等価交換により新たに取得する土地の時価との差額が、これらの時価のうち、いずれか高い方の価額の20%以内であること。
確定申告で固定資産の交換の特例が受けられる場合でも、土地の等価交換によって相手から金銭などを受け取っている場合には、受け取った金銭に対して所得税が課されます。
確定申告で固定資産の交換の特例を受けるには、確定申告書に必要事項を記入し、譲渡所得の内訳書を添付して確定申告をする必要があります。
立体買換えの特例
不動産を譲渡したことにより譲渡所得が発生した場合には、譲渡所得税が課せられます。
土地の等価交換方式においても、土地をデベロッパーに譲渡することになるので、譲渡所得に所得税と住民税が課せられることは先の段落で説明した通りです。
しかし、土地の等価交換の場合、「立体買換えの特例」といって、一定の要件を満たせば譲渡所得を繰り延べすることが可能です。
立体買換えの特例を受けるための要件には以下のものがあります。
・東京圏、中京圏、近畿圏の三大都市圏の既成市街地またはそれに準ずる区域内にある土地、建物、建築物であること。
・買換資産は、譲渡した土地の上に建築された耐火共同住宅及びに耐火用共同住宅の敷地に供されている土地であること。
・地上3階以上の耐火建築物、または準耐火建築物で、建築物の床面積の二分の一以上が住宅の用途であること。
・譲渡した年の12月31日までに買換資産を取得すること。ただし、譲渡した年かその翌年中に取得する予定や見込みがあり、その取得の日から1年以内に個人事業用または住居用か決めて使用すれば、譲渡した年ではなくとも適用を受けることを可能とする。
立体買換えの特例を受ける場合、土地を譲渡した年度の確定申告書に立体買換えの特例を受ける旨を記載し、土地の譲渡価額と買換資産の取得価額(または見積もり)の明細書を添付して確定申告をする必要があります。
特例を受ける際の注意点
固定資産の交換の特例も、立体買換えの特例も、課税が免除されるわけではなく、繰り延べになる点に注意しましょう。
将来、区分所有権を売却する場合に、繰り延べた分もまとめて譲渡所得税の支払いをすることになります。
まとめ
土地の等価交換とは、デベロッパーに土地を譲渡し、代わりにデベロッパーがその上に建設した建物の区分所有権を、譲渡した土地の割合に応じた分提供してもらうことです。
土地を等価交換した場合には、確定申告で所得税と住民税を申告します。固定資産の交換の特例の要件を満たしていれば、確定申告することで特例を適用してもらえる可能性もあります。
また、立体買換えの特例が受けられるケースもあるでしょう。
ただし、どちらの特例も、課税が免除されるわけではなく、あくまで繰り延べであるため注意が必要です。
税制特例には細かい要件があり、非常に複雑なため、確定申告で特例を確実に適用させたい場合は、税理士に相談した方が良いでしょう。