被相続人の兄弟が土地を相続する場合は、相続税が割り増しになる
相続税には、様々な控除があります。特に、配偶者には手厚い控除が設けられています。なお、相続税には控除もあれば、割り増しもあります。相続で財産を取得した人が次のいずれにも該当しない場合には、相続税額が2割加算されることになっています。
1.一親等内の血族(被相続人の子どもまたは父母)
2.代襲相続人である被相続人の直系卑属
3.被相続人の配偶者
つまり、被相続人の兄弟、祖父母、代襲相続人でない孫などが相続または遺贈によって財産を取得する場合は、相続税額が2割アップすることになります。
このような取り決めになっていることには理由があります。被相続人の兄弟は相続において最下位の相続人であり、兄弟が相続することは偶然性が高いということです。
相続に限らず、偶発的に得る利益に対しては税額が高くなるのも仕方のないことと言えるでしょう。兄弟が相続にかかわる際に見落とされがちなのは、この点です。土地を相続する際には、加算される相続税額のことも考慮に入れなくてはなりません。
複数人の兄弟で土地を相続する場合は、分け方にも注意
被相続人の兄弟が一人で、かつ被相続人に配偶者がいないのなら、兄弟が一人ですべての遺産を相続するだけです。しかし兄弟が複数人いる場合は、土地の分け方には注意しなければなりません。
土地は、きっちり公平な分け方をすることが難しい相続財産です。なぜならば、そのままでは複数個に分けて分配することは不可能だからです。
土地以外にも建物や預貯金や株式、自動車や美術品などの相続財産があるなら、兄弟全員にある程度公平に、相続財産を分割することができるでしょう。
しかし、兄弟間で土地の相続について問題になるケースは、相続財産が土地以外にはほとんどないか、あるいは本当に土地しか相続財産がないといった状態が大半です。続く部分では、兄弟で土地を相続する際に検討できる分割方法の例をご紹介します。
土地を「換価分割」で分ける
土地にそれほど思い入れもなく、事業などでの必要性もないなら、土地を売却して金銭に換え、その金銭を兄弟間で分けるという方法もあります。土地を兄弟で相続する場合には、最も公平かつ有意義な仕方で分けられる方法です。
土地を「代償分割」で分ける
兄弟のうち誰か一人が土地を相続し、そのかわりに他の兄弟たちへ代償となる金銭を支払うという分け方です。事業などで土地が必要な場合には、効果的な分け方となります。
土地を「共有分割」で分ける
土地を手放すわけにはいかないものの、どうしても兄弟全員で公平に分ける必要がある場合には、共有分割によって土地の名義を兄弟全員の共有とすることもできます。
共有分割は手間も少なく便利な分割方法ですが、土地の権利者が複数人いることで権利関係が複雑になること、共有者の誰かの遺産相続が始まってしまうと大変面倒なことになること、共有状態のため土地の活用方法がほぼ無いなどのデメリットが目立ちます。
土地の相続は、「この先どう活用していくのか」も視野に入れて検討を
相続財産を公平に分けることは、兄弟全員が納得する遺産分割を実現するために必要なことです。兄弟のうち誰かが不公平な思いをすれば、その後ずっと続く確執へと発展しかねません。
しかし土地の相続は、公平に分けたは良いが相続後に活用できないという事態に陥りがちです。先に紹介してきた分割方法の中には、公平に分けられるのは良いものの、兄弟全員にとって、その後の活用がほとんど不可能になるものもあります。
「何が何でも公平に分けなければ」という思いになるあまり、兄弟全員にとって特にメリットのない相続となってしまう可能性もあるのです。
公平であることと兄弟全員にとってのメリットをバランス良く考慮し、今後の活用を考えるとどのように土地を分けるのが最善か、落ち着いて考えることが大切でしょう。
まとめ
兄弟が土地を相続する際には、相続税が通常よりも高額になることと、公平な分割が難しくなることに注意しましょう。複数人の兄弟がいるのに土地しか相続財産がない場合には、換価・代償・共有分割のいずれか、最も都合の良いものを選ぶ必要があります。