相続する遺産の分割方法
土地に限らず、相続した遺産を分割する際には、次の3つの方法のいずれかによって分割がなされます。
1. 指定分割
被相続人が遺言を残しており、土地などの遺産の分割について指定している場合の分割方法です。遺言書の指定内容が法定相続分と異なるとしても、遺言書の内容を優先して分割されます。
ただし、相続人全員の合意がある場合は、遺言書の指定内容と異なる分割方法にすることが可能です。
2. 協議分割
遺言書で遺産分割に関して指定がされていない場合、遺産分割協議で相続人同士が話し合うことで分割方法が決まります。
基本的には、法定相続分を参考として分割を進めていきます。特別受益や寄与分の考慮も、協議によって決定します。遺言書で、相続人と相続割合を指定した「包括遺贈」があった場合にも、協議が必要です。
3. 調停もしくは審判分割
遺産分割協議は、当事者である相続人が全員納得しなければ成立しません。相続人同士の関係が疎遠または険悪だと、遺産分割協議の進行を妨害する目的で故意に参加しなかったり、必要書類の提出を拒んだりする相続人が出てくることもあります。
遺産分割協議がまとまらないまま時間が経過してしまうなら、相続人はいつまで経っても遺産を自分のものにできません。遺産分割協議が成立せず困った場合には、家庭裁判所での「調停」を申し立てることになります。
調停でも決着がつかなければ、家庭裁判所の裁判官による審判で分割されます。
土地を分割するための方法
遺産分割協議は、相続人全員が合意してくれるような仕方で分割方法を決めることで成立します。土地をはじめ、均等に分割することが難しい遺産は、いかに相続人全員に公平に分割していくかが鍵です。
ここからは、土地を分割するための具体的な方法を4つご紹介します。
1. 現物分割
遺産を、種類ごとにそのままの形で分割する方法です。例えば、家と土地は配偶者へ、預貯金は長男へ、有価証券と自動車は長女へという分割です。
とても簡単な分割方法で、ややこしい計算が不要なことが、現物分割の長所です。ただし、遺産の種類が違えば評価額にも差が生まれます。相続分ぴったりに分割することは難しいため、一部の相続人が納得しない可能性があります。
2. 換価分割
土地を売却し、代金を相続人の間で公平に分けるというものです。そのままの姿では相続人全員に分割できない遺産があるなら、換価分割を検討できるでしょう。
ただし、土地を手放すことになるので、財産の現物を失います。土地や建物などの不動産を売却した場合には、不動産所得税や住民税の納税が求められます。これらの費用も考慮した上で、土地を手放すかどうかを決めなければなりません。
3. 代償分割
一部の相続人にだけ土地を相続させ、その代わりに他の相続人に対価となる金銭を支払うというものです。
遺産のほとんどが、公平に分けられない土地や建物である場合などに検討できます。被相続人の事業を継承する相続人がいる場合には、事業用の土地の相続にも役立つ分割方法です。
土地を相続できない他の相続人には、代償として金銭が与えられるので、公平な分割が可能です。土地を失うこともありません。
ただし、代償金の支払いという債務には法的な強制力がなく、万が一、支払われないとなれば訴訟を起こす他に手はありません。
4. 共有分割
ここまでご紹介してきた3つの方法がどれも使えないというケースでは、土地の共有分割を検討することになります。
複数の相続人で土地の持分を決め、土地を共有状態にする分割方法です。どんなに分割しにくい遺産であっても公平に分割できる上、相続財産を手放す必要もありません。
その代わり、土地の権利者が複数人いるため財産として利用したり処分したりする点での自由はほぼありません。
土地を共有している相続人の誰かが亡くなり、次の相続が発生すると、土地の権利者として関係する人は大勢になり、非常に複雑な状態になります。
まとめ
土地は利用価値が高いものの、分割が難しい遺産です。相続人全員が土地の分け方について納得しなければ、いつまでも遺産分割協議を成立させることができません。
時間がかかればかかるほど、成立は難しくなります。土地の遺産分割について協議がこじれたら、早急に弁護士に相談して下さい。