相続した不動産の売却にかかる税金「印紙税」
契約書などを取り交わす際には、収入印紙が使用されます。印紙税という税金は、この印紙代金のことです。
印紙税の税金は、契約書に貼るための収入印紙を購入することで納付となります。印紙税の税金額は、売却する不動産の取引価格や契約金額によって異なります。
相続した不動産の売却にかかる税金「譲渡所得課税」
相続した不動産を売却した場合には、売却益が発生します。不動産の売却益は「譲渡所得課税」という税金の課税対象となる所得です。
譲渡所得課税の税金額は、以下の式で計算できます。
「売却益-(取得費+譲渡費用)×税率」
譲渡所得課税にかけられる税率の内訳は、所得税率と住民税率です。譲渡所得課税の税率は、不動産を保有していた期間によって以下のように異なります。
保有区分 | 所得税 | 住民税 |
長期譲渡所得
(保有期間が5年以上) |
15% | 5% |
短期譲渡所得
(保有期間が5年未満) |
30% | 9% |
上記の税率に加えて、平成25年から2037年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%が上乗せされます。復興特別所得税は、所得税と合算して申告・納付します。
売却する不動産の保有期間が5年を超えているかどうかによって、税金額にかなりの差が生じることが分かります。
相続した不動産の場合は、相続人が保有し始めてから間もないことは間違いありません。したがって、相続した不動産については、被相続人がその不動産を取得した日から保有期間をカウントして良いことになっています。
相続した不動産でも、税金面で有利な長期譲渡所得に該当する可能性が十分にあります。
譲渡所得課税の計算式に含まれる「取得費」とは、売却しようとしている不動産を取得するために必要だった費用のことを指します。
以下のような費用が、取得費に該当します。
1. 売却する不動産を取得した時に支払った税金(登録免許税、不動産取得税、印紙税など)
2. 売却する不動産を取得するために賃借人に対し支払った立退料
3. 売却する土地の取得の際に支払った測量費
4. 売却する不動産の所有権を確保するために支払った訴訟費用(遺産分割調停・審判は除く)
相続した不動産の取得費については、相続人は負担していないのが普通です。そのため、被相続人の取得費を引き継ぐことができることになっています。
取得費と混同しやすいものが「譲渡費用」です。譲渡費用とは、相続した不動産を売却するために必要となった費用のことを指します。
例として、以下のようなものが譲渡費用となります。
1. 相続した不動産を売却するための仲介手数料
2. 売主として負担した印紙税の税金額
3. 不動産を売却するために賃借人に支払った立退料や、売却のために建物を取り壊した場合の解体費用
なお、不動産の保有や維持に当然必要とされる費用、例えば修繕費や固定資産税などの税金は、譲渡費用とはみなされません。
相続した不動産の売却時に適用できる税金の特例
相続した不動産の売却にかかる税金については、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」という制度を利用できる場合があります。
この特例は、相続により取得した土地、建物、株式などを一定期間内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定の金額を譲渡資産の取得費として加算できるというものです。
特例を適用するための要件は、次の3点です。
1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること。
2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること。
取得費に加算できる相続税の税金額は、次の式で計算します。
「相続税額 × 土地以外の財産の額 ÷ (相続税課税価格+債務控除額)」
相続した不動産の税金の納期限は?
譲渡所得課税は、給与などの他の所得とは別に計算する税金です。そのため譲渡所得課税が発生した場合には、不動産を売却した翌年の3月15日までに確定申告を行い、所得税の申告・納付を済ませましょう。
住民税は、確定申告後に別途送られてくる納付書で納付します。
まとめ
相続した不動産を売却する際には、印紙税の税金、譲渡所得課税として所得税および住民税の税金も必要です。譲渡所得課税は分離課税のため、売却の翌年には必ず確定申告を行い、税金を納めましょう。