賃貸物件の建つ土地を相続した場合の所得税
相続した土地にアパートやマンションなどの賃貸物件が建っている場合は、賃貸経営による収益も同時に相続することになります。
賃貸物件の賃料収入は「不動産所得」となるため、所得税がかかります。所得税の対象となる不動産所得の額は、次の式で計算される金額です。
「不動産収益-必要経費=不動産所得の額」
不動産収益には、賃料収入はもちろん、礼金や権利金などが含まれます。敷金については、基本的に預かり金のため、収益には含まれません。ただし、敷金のうち一定割合を償却することがあらかじめ決まっているなら、償却分の敷金も収益の一部となります。
必要経費に含まれるものとして一般的なのは、減価償却費や各種保険料、不動産業者や管理会社へ支払う手数料、物件の修繕費、維持管理費などです。
税金関係では、固定資産税や都市計画税、事業税や消費税が必要経費として認められます。賃貸経営の初年度に限り、登録免許税や印紙税、不動産取得税なども必要経費に含めることができます。なお、所得税を必要経費に含むことはできません。
不動産所得税は分離課税のため、土地を相続した相続人が自分で確定申告をする必要があります。
確定申告の際には、不動産所得の額に所定の税率をかけて、所得税の額を計算します。下記のように、不動産所得が多くなればなるほど所得税率は上がります。
不動産所得 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
330万円以下 | 10% | 97,500円 |
695万円以下 | 20% | 427,500円 |
900万円以下 | 23% | 636,000円 |
1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
次にご紹介する「譲渡所得税」も同様ですが、2013年(平成25年)から2037年までに納める所得税には、復興特別所得税として各年度分の2.1%をプラスした税率で納付することになります。
相続した土地を売却する場合の所得税
相続した土地を売却することにした場合、売却によって得られる利益は「譲渡所得」と呼ばれ、譲渡所得税の課税対象となります。
譲渡所得税の対象となる譲渡所得の額は、次の式で計算します。
「譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)=譲渡所得の額」
譲渡価額とは、土地の売却金額のことです。なお、譲渡価額には、固定資産税や都市計画税の清算金も含まれます。
取得費とは、売却した土地を取得するために支払った費用を表します。つまり、土地の購入金額です。
相続で土地を取得した場合には、土地の購入代金は支払っていないことになりますので、取得費として計上できる費用はほぼ無いでしょう。
譲渡費用とは、土地を売却するために直接かかった費用を表しています。具体的には、売却を依頼した不動産会社への仲介手数料、土地の登記の際の登録免許税、土地の測量費などが、売却するために直接かかった費用として認められます。
土地の固定資産税などは、土地の売却のための直接的な費用というよりは維持に必要な費用となるため、土地の譲渡費用に含めることはできません。
譲渡所得税の税率は、土地を所有していた期間に応じて変わります。
・所有期間5年未満の土地は「短期譲渡所得」・・・39%
・所有期間5年以上の土地は「長期譲渡所得」・・・20%
土地を相続した場合は、5年以上前に相続で取得したのか、5年未満なのかによって、譲渡所得税率が倍近く変わってくることになります。
所有期間とは、土地を取得した日(相続登記した日)から土地を売却した日の間ではありません。土地を売却した年の1月1日の時点で、満5年が経過していることが必要です。
例えば、平成25年5月1日に取得した土地を、平成30年5月2日以降に売却したとします。
所有期間としては満5年が経過していますが、平成30年1月1日の時点では、まだ4年7か月しか経過していません。そのため、このケースで長期譲渡所得を該当させるには、平成31年1月1日以降の売却でなくてはならないということになります。
譲渡所得税も不動産所得税と同様に分離課税のため、確定申告が必要です。土地を売却した場合の譲渡所得税の確定申告は、売却した日の翌年の3月15日までに行いましょう。
まとめ
土地の相続に関係する所得税として、「不動産所得税」と「譲渡所得税」の2つを解説してきました。どちらの所得税も、相続してすぐに発生する税金ではありません。ただ、将来的に運用する場合については、所得税を念頭におく必要がありますので、覚えておきましょう。