法人化の流れ
実際に法人を設立して法人化するまでの流れを簡単にご紹介します。ここでは、株式会社設立による法人化の手順をまとめます。
1.基本事項を決定する
会社の名前(商号)や事業目的、資本金の額、取締役、決算月などを決定します。かつては株券の発行も必要でしたが、現在は会社法において株券不発行が原則となっています。土地の相続のための法人化であれば、省略しても問題ありません。
2.印鑑の作成
株式会社の設立では、設立登記申請で会社の印鑑が必要になります。一般的に、銀行員と社印、実印の3つを作成しておけば事足りるでしょう。
3.定款作成
会社の目的や運営などに関する基本的な情報が定款です。法人化するためには、定款作成が必須となります。以下の情報は、必ず記載しなければならないものです。
・商号(社名)
・本店所在地
・事業内容
・発起人の氏名と住所
・設立のために出資された財産の価格
4.定款の認証
定款ができたら、公証役場に出向くか電子認証を受けることで、公証人に認証してもらいます。認証を終えて、初めて、法的に有効な定款ができあがります。
5.出資金の振り込み
法人化の発起人の個人口座へ、出資金を振り込みます。預け入れるのではなく、必ず振り込みにするのがポイントです。
6.設立登記申請
ここまで来れば、あとは商業登記簿に登記するだけで法人化完了です。法人化する会社のある地域を管轄する法務局で、設立登記申請をします。会社の設立日は、登記申請が受理された日になります。思い入れのある日や、大安を狙うのも良いでしょう。
7.法人化完了
申請から2週間ほどで設立登記は完了し、晴れて法人化完了です。法人化の完了後、定款の写しや登記事項証明書を発行できるようになります。
土地の相続に備えた法人化のメリット
ここからは、土地を相続させる人が法人化することが、なぜ土地の相続にプラスになるのかを考えていきましょう。ポイントを3つご紹介します。
1.土地の相続税の大幅圧縮が可能
個人で収益のある土地を所有していると、土地を相続する相続人に多額の相続税が課税されることになります。
相続税の基礎控除額が大きく引き下げられた今、収益のある土地を相続する人の相続税は少額では済まないことでしょう。相続税を支払えるだけの現金が手元になければ、せっかく相続した土地を手放さなければならないかもしれません。
土地を相続させる人が生前に法人化しているなら、相続人の相続財産は土地そのものではなく、会社の株式のみとなります。
さらに、土地の相続対策としての法人化であれば、上場することはまずないでしょうから、相続税評価の低い「非上場株式」として評価できます。つまり、相続税を2段階で圧縮できるということになります。
2.損益通算・損失繰越が可能
平成16年度以降は、個人が不動産の損益を給与所得など他の所得と一緒に計算することができなくなりました。
例えば、不動産所得と給与所得併せて年間1,000万円の人が、土地の譲渡で1,000万円の譲渡損を出した場合、個人であれば所得の1,000万円だけに着目され、しっかりと所得税が課税されます。
しかしながら、法人化していれば、所得の1,000万円から土地の譲渡損1,000万円を相殺することができるため、実質所得をゼロ円にできるのです。相続財産としての現金を、より多く手元に残すことができます。
さらに、個人だと不動産事業の損失は最大3年間しか繰り越すことができませんが、法人化していれば最大で9年間繰り越すことが可能です。
土地を相続させる人が法人化していれば、損失が文字通りの損失ではなく、節税の強い味方になることもあるのです。
3.生命保険料の費用化が可能
個人だと、所得税や住民税の生命保険料控除は最大でも12万円までです。しかし実際には、毎年もっと多く払っているという人も多いことでしょう。
土地を相続させる人が法人化していれば、生命保険料の全額もしくは一部を必要経費として計上できます。法人を生命保険の契約者とし、被保険者を役員や従業員、保険金受取人を法人とするのが条件です。
土地の相続対策であれば、役員として家族を指定しておくこともできますから、家族の生命保険料が高額なほど、節税効果が高くなるでしょう。
まとめ
法人化には若干の費用や手間がかかりますが、個人のままで収益のある土地を相続させることに比べ、法人化の節税メリットは非常に大きいものです。なお、法人化の手続きに関する全てを専門家に任せる場合の費用総額は、最低で25万円くらいからとなるでしょう。