1つしかない土地を巡ってもめるケース
土地の相続について派手にもめるケースで原因となりやすいのは、土地がひとつしかないことです。土地は物理的に分割するのが不可能な財産であり、複数人の相続人へ公平に配分することはできません。
そのため、相続人のうちの誰かが土地を相続し、他の相続人はその他の財産で我慢するしかなくなります。不平等感を抱く相続人がいれば、もめることになるでしょう。
土地以外に価値の高い財産が豊富にありさえすれば、土地がひとつしかないことはもめる原因にはなりません。大いにもめるのは、財産と呼べるような財産が土地ひとつしかないというケースです。
このようなケースでは、もめることのないようどんな手段を講じることができるでしょうか。
ひとつには、土地を売却して現金を配分する「換価分割」があります。問題の土地がすぐに買い手が付く土地なのであれば、換価分割はもめる原因をスムーズに解決できる方法になるでしょう。
もうひとつの方法は、誰かが土地を相続する代わり、他の相続人に相応のお金を払うことでもめるのを防ぐ「代償分割」です。土地を相続する相続人に支払い能力があることが条件ですが、それがクリアできるのであれば解決策となります。
土地の評価額を巡ってもめるケース
土地は、他の財産にはないユニークな特徴を持っています。評価の手法によって、その価値が変化するという点です。一方、土地以外の財産であるお金や株式、宝石類は、いずれも一定の価値基準で評価できます。
例えば、1万円札は誰が見ても1万円の価値です。見る人によって1万2,000円の価値になったり、8,000円に下がったりはしません。
株式や宝石類もそうです。どちらも、世の中にまったく同じものが存在しているため、一定の価値基準によって価値が決まります。
一方で土地は、まったく同じものが存在しないため、一定の価値基準で判断することはできません。そのため、評価する人が採用する価値基準によって大きく価値が変動するのです。これがもめる原因になり得ます。
土地の評価額は、相続税評価額にも直接影響します。土地を相続する相続人としては、相続税を抑えるためにも、できるだけ土地の評価額は下げておきたいはずです。
他方、土地を相続できない相続人は逆の感情を持つでしょう。土地の評価額が高くなって、土地を相続する相続人の相続税負担額が上がれば、自分が支払う相続税はその分安く済ませられるためです。
土地を相続する相続人への不満も相まって悪感情が募り、もめることになるかもしれません。
土地の相続で遺族がもめるのを防ぐための「遺言書」
土地の相続でもめることは、相続人たちには止められない場合も多いものです。子供たちが相続人になるケースでは、親の死によってそれまで抱いていたお互いへの不満が爆発し、もめることで気持ちが凝り固まってしまうこともあります。
そんな時、親からの心温まる遺言書があれば、子供たちがもめることを多少なりとも回避できるでしょう。そのために重要なポイントは、遺言書の必要事項だけをさっと書いて終わらせないことです。
もし、相続人のうちのひとりだけに土地を相続させなければならないのなら、そうする事情を遺言書に記載しておきましょう。ちゃんとした理由があることが分かれば、相続人はもめることをやめようと思い直す可能性もあります。
あわせて、土地を相続させてあげられない相続人へのお詫びや、生前にしてくれたことへの感謝、今後の人生に対する励ましなどを書き、真心が伝わるようにしておきましょう。
すでにもめていた相続人も、被相続人の気持ちのこもった遺言書に心を動かされ、遺言の通りにしよう、という意識が働き、トラブルを防止できます。
まとめ
土地の相続を巡って相続人がもめることは、被相続人となる人の生前の準備で防げる可能性があります。理想論ではありますが、相続が始まる以前から家族がお互いのことを想い合って生活することが、相続でもめることのないよう備える上で最良の対策になるでしょう。