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相続した土地の評価方法と土地の評価額が減額されるケース

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相続税における土地の評価額は売買価格ではない

相続税は、遺産の合計額がどれくらいかによって、課税の有無や税額が変わってきます。相続税を計算するためには、遺産の合計額を出さなければなりません。

遺産の中でも、評価が複雑なのが土地です。土地の評価額は、「一物四価」または「一物五価」と言われるように、何種類もあります。土地の評価額のうち、最もなじみがあるのが土地を売買するときの価格ですが、相続税は売買価格を基準に計算するわけではありません。

土地の売買価格は、実勢価格ともいい、売主と買主がいて成立する価格です。

ですから、売主側に、早く売ってしまいたい都合があるため、相場よりも安価で売買が成立するケースや、逆に、買主側がどうしてもその土地が欲しいという事情があり、相場よりも高値で売買されるケースなどがあります。

このように、売主、買主の事情や都合により左右される売買価格で税額を決めるのは公平性に欠けるため、相続税の計算に売買価格は用いられません。

 

相続した土地の評価方法は大きく2つ

それでは、相続税の計算をする際の土地の評価額は、どのようにして求められるのでしょうか。

相続税の土地評価額は路線価方式または倍率方式で算出

相続する土地の多くは宅地だと思いますが、宅地については次の2つの評価方法があります。

①  路線価方式

宅地の面する道路ごとに定められた路線価を基準にして土地の評価額を算出する方法です。

路線価とは、道路に面する宅地1平方メートルあたりの評価額のことです。

国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 から路線価の確認ができます。

路線価は、不動産鑑定士による鑑定評価額や、類似地点の売買実例価格を参考にして決められ、

毎年1月1日時点の評価額が、国税庁により7月頃に発表されます。

市街地では、路線価方式で土地を評価します。

②  倍率方式

固定資産評価額に地域ごとに定められた倍率をかけて、土地の評価額を算出する方法です。

評価倍率も、路線価図と同様に国税庁のホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 から確認可能です。

固定資産税評価額とは、市町村の担当者が土地と家屋の評価をし、固定資産課税台帳に登録した価格のことです。

路線価が定められていない地域では、倍率方式で土地を評価します。

 

相続した土地の評価額はどんな場合に減額する?

路線価方式で土地の評価額が減額するケース

路線価は土地1平方メートルあたりの価格なので、土地の面積をかけて評価額を算出します。ただし、単純に面積をかけるだけでは、適切な評価額を出すことはできません。

土地というのは、形状や奥行、道路との位置関係などで利便性が変わります。利便性が高い土地は評価額が増額し、利便性の低い土地は評価額が減額します。

路線価方式では、路線価に様々な補正を加えて、評価額を算出します。たとえば、間口が狭く奥行が長い土地は、評価額が減額します。また、長方形や正方形になっていない不整形地やがけ地なども評価額が減額になります。

そのほか、以下のような土地は減額されやすいです。

・線路や踏切に面している土地
・建物を立て替える際にセットバックが必要な、幅員4m未満の道路に面している土地
・墓地と隣り合わせの土地

土地の評価額が下がれば、節税につながるので、減額の可能性がある場合は見逃さないようにしましょう。

倍率方式で評価額が減額するケース

倍率方式で使う固定資産評価額には、土地の形状などの個別の事情は既に織り込まれています。倍率方式では、路線価方式のように補正を加えて、増額や減額をする必要はないことになります。

 

相続した土地の評価額を減額できる小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例が適用されるケース

親族が相続した土地が、特定居住用宅地等、特定事業用宅地等、貸付事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等に該当する場合には、小規模宅地等の特例により、土地の評価額が大幅に減額されます。

①  特定居住用宅地等

被相続人または同一生計の親族の居住用土地で、330平方メートルを限度に、評価額が80%減額になります。取得した親族が次のような条件をみたす場合にのみ適用されます。

被相続人の同居親族の場合、申告期限まで引き続き土地を所有し、その後も居住し続けることが条件となります。

また、被相続人と同一生計の親族の場合、申告期限まで引き続き土地を所有し、相続開始前から申告期限まで引き続き居住し続けることが条件です。

同一生計とは、同じ家計で生活をしているということであるため、子が大学生など、別々に暮らしていても、仕送りを受けて生活をしていた親族は同一生計となります。

取得者 取得者の条件
配偶者 なし
被相続人の同居親族 申告期限まで引き続き所有し、居住している
被相続人の非同居親族(※被相続人に配偶者・同居親族がないケース) 過去3年間自己所有の家がなく、配偶者、3親等以内の親族、特別の関係のある法人の所有する家にも住んだことがない

相続開始時に居住していた家屋を過去に所有していたことがない

被相続人と同一生計の親族 申告期限まで引き続き所有し、相続開始前から申告期限まで引き続き居住している

②  特定事業用宅地等

被相続人または同一生計の親族が事業(不動産貸付業を除く)に使っていた宅地等で、400平方メートルを限度とし、80%減額になります。土地を取得した親族が、申告期限まで引き続き所有し、かつ、その事業を営んでいれば適用されます。

③貸付事業用宅地等

被相続人または同一生計の親族が不動産貸付事業に使用していた宅地等で、200平方メートルまでが、50%減額になります。土地を取得した親族が、申告期限まで引き続き所有し、かつその事業を営んでいれば適用されます。

なお、平成30年4月1日以降の相続では、当面の間、相続開始前3年以内に貸付事業を始めた土地は減額にならない措置が設けられています。

土地上に構築物がある場合、駐車場や駐輪場でも小規模宅地等の特例の対象となります。

④特定同族会社事業用宅地等

被相続人または同一生計の親族の持株割合が50%超である同族会社が事業(不動産貸付業を除く)に使っていた宅地等で、400平方メートルまでが、80%減額になります。同族会社の役員である親族が取得し、申告期限まで引き続き所有していれば適用されます。

家なき子特例

被相続人の非同居親族でも小規模宅地等の特例が受けられる制度があり、これを俗に「家なき子特例」といいます。

家なき子特例が適用される要件として、

・被相続人に配偶者、同居親族がいない

・相続開始前3年以内に自己所有の家がない

・相続開始前3年以内に3親等以内の親族の家に住んだことがない

・相続開始前3年以内に特別な関係のある法人の所有する家に住んだことがない

(特別な関係のある法人とは、親族が経営する会社の所有する家などのことです)

・相続開始時に居住していた家屋を過去に所有していたことがない

・相続した土地を相続後10カ月以内に売却しない

上記の全てを満たしている必要があります。

二世帯住宅の場合、小規模宅地等の特例は適用されるのか

二世帯住宅では、小規模宅地等の特例が適用されるケースとそうでないケースとがあります。

子が相続人の場合、小規模宅地等の特例が適用されるには、以下の条件を満たしている必要があります。

・同じ棟の建物内に、親と子が住んでいる
・建物の敷地の名義が親である
・子は、建物内の部屋を、家賃など支払わずに無償で親から借りている
・相続後10カ月以内までに所有者として居住している

条件を満たしていたら、二世帯住宅の構造をみていきます。

二世帯住宅には、完全分離型と、非分離型とがあります。

完全分離型は、親子で同じ建物内に住んでいても、それぞれの住んでいる部屋に行き来することが出来ない構造をしています。

例えば、玄関が1階と2階に2つあり、1階に親、2階に子の家族が住んでいて、建物内には階段などがなく、1階と2階の行き来が出来ないような二世帯住宅が完全分離型です。

この場合、別居と捉えられてしまい、小規模宅地等の特例が適用されないこともあります。

一方、非分離型は、親子で同じ建物に住んでいて、別々に生活しているものの、建物内に階段があるなど、お互いの住んでいる部屋に行き来することができる二世帯住宅です。

非分離型の場合は、建物内で行き来できることから、別居であると言い切れないため、小規模宅地等の特例が適用されやすいと言えるでしょう。

ただし、親世帯、子世帯が、それぞれ区分所有登記をしていると、被相続人の居住用部分の敷地にだけ小規模宅地等の特例が適用される可能性があるので注意が必要です。

被相続人が老人ホームに入居していた場合は?

被相続人が老人ホームに入居しており、そこで亡くなってしまった場合、平成26年1月に要件が緩和されるまでは「老人ホームが自宅であった」とみなされ、小規模宅地等の特例は適用されませんでした。

しかし現在は、以下の要件を満たしていれば小規模宅地等の特例が適用される場合があります。

・被相続人が要介護認定または要支援認定を受けている
・入所前に住んでいた自宅を賃貸にしていないこと

評価額減額により税額なしになる場合でも申告が必要

小規模宅地等の特例により、土地の評価額が減額し、相続税額がゼロになることがあります。この場合でも、申告期限までに相続税の申告をしなければ、特例の適用が受けられませんから注意しておきましょう。

小規模宅地等の特例の適用を受けるには、相続税申告書に特例の適用を受ける旨を記載し、計算の明細書や遺産分割協議書の写しなど所定の書類を添付する必要があります。

 

まとめ

相続した土地の評価額は、売買価格ではなく、路線価を基準にして評価額を算出する路線価方式で、路線価が定められていない土地では、固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率をかけて算出する倍率方式で決められます。

路線価方式で評価額が決められる土地であれば、土地の形状などにより評価額が減額される可能性があります。

また、小規模宅地等の特例が適用されれば、相続した土地の評価額を大きく減額することが可能なので、節税のためにも、小規模宅地等の特例が適用されるかどうか、要件を把握しておきましょう。

そして、適用される場合、期限までに申告しないと特例の適用は受けられないので、必ず相続税の申告をしましょう。