相続手続きでは同意書が必要になることがある
相続同意書とは?
相続手続きを行うときに、相続同意書と呼ばれる書面が求められる場面があります。相続同意書とは、特定の相続人が特定の財産を相続することについて、他の相続人全員が同意していることを証明する書面です。
相続同意書の提出が求められるケース
相続同意書の提出が必要になるのは、次のようなケースです。
①被相続人の預金の払戻しのために必要な相続同意書
亡くなった人の預金口座は、金融機関が死亡の事実を知ったときに凍結され、一切の入出金ができなくなってしまいます。預金口座の凍結を解除するためには、遺産分割協議で預貯金を誰が相続するかを決めた上で、金融機関で相続手続きを行います。
預貯金の相続手続きの際に、遺産分割協議書がない場合には、相続同意書を提出することで払戻しが受けられます。相続同意書の書式は、通常は金融機関で用意されていますが、具体的な手続き方法は各金融機関で異なります。
②営業許可等の許認可を承継するための相続同意書
食品営業許可を受けて飲食店を営んでいた人が亡くなった後、相続人が事業を引き継ぐ場合には、許可を受けた役所に地位承継届を提出しなければなりません。このとき、もし他に相続人がいれば、添付書類として相続同意書を提出する必要があります。
土地の相続における同意書とは遺産分割協議書のこと
土地の相続登記では遺産分割協議書が必要
遺産分割協議で土地を取得する人が決まったら、相続登記を行って土地の名義を変更します。相続登記は、土地を管轄する法務局で行います。
土地の相続登記をするときには、添付書類として戸籍謄本一式、相続人全員の住民票、被相続人の除票のほか、遺産分割協議書を提出します。登録免許税の計算のために土地の固定資産評価証明書も必要です。
相続同意書と遺産分割協議書の違い
遺産分割協議書と相続同意書は実質的に同じものと考えてかまいません。遺産分割をどのように行うかについては、相続人全員が合意している必要があります。相続同意書でも、遺産分割協議書でも、相続人全員の合意が証明できれば問題はないということです。
預貯金の相続や許認可の承継では相続同意書の書式が用意されていることがあるので、この場合には、相続同意書を提出します。
相続登記の場合には、遺産分割協議書を添付するものとされています。遺産分割協議書には厳密な決まりはありませんが、記載に不備があれば、法務局で受け付けてもらえない可能性があります。書式を参考に、慎重に作成するようにしましょう。
土地の相続に使う遺産分割協議書の記載方法
遺産分割協議書は、すべての財産について1つの書面にまとめる必要はなく、土地の相続登記に使う遺産分割協議書は、土地についてだけ書いたもので問題ありません。
土地に関する遺産分割協議書には、次のような事項を記載します。
ア 被相続人の情報
氏名、生年月日、本籍、死亡年月日を記載します。
イ 土地の表示
土地の所在、地番、地目、地積を登記事項証明書どおりに記載します。
ウ 土地を相続する相続人
相続人の中の誰が土地を取得するかを記載します。土地を共有にする場合には持分も明記します。
エ 相続人全員の情報
相続人全員の氏名、住所を記載します。氏名は手書きで署名し、実印を押印します。さらに、相続人全員の印鑑証明書を遺産分割協議書に添付します。
相続手続きで同意書や遺産分割協議書が不要なケース
遺言で相続方法について指定されている場合
被相続人が遺言を残している場合、法定相続ではなく、遺言によって相続が行われます。金融機関などで相続手続きをするときにも、遺言書を提出することになり、相続同意書は不要です。
遺言で土地を相続させる人を指定している場合には、土地の相続登記においても、遺産分割協議書ではなく遺言書を提出します。なお、遺言書が自筆証書遺言である場合には、検認済証明書もセットにして提出する必要があります。
遺産分割について裁判所で決まった場合
遺産分割について相続人同士で話し合いがまとまらず、最終的に家庭裁判所の遺産分割調停や遺産分割審判で決まることがあります。この場合、相続手続きの際には、相続同意書や遺産分割協議書ではなく、裁判所から出された書面を提出します。
土地の相続登記においては、遺産分割調停で土地を相続する人が決まった場合には調停調書(正本または謄本)を、遺産分割審判で土地を相続する人が決まった場合には審判書(正本または謄本)及び確定証明書を法務局に提出することになります。