トラブルが予期される場合は、相続放棄という選択肢も
共同名義の不動産について、相続が始まる前からすでに何らかのトラブルが予期できるなら、相続放棄によって無関係な立場になることも選択できます。
相続放棄をする場合は家庭裁判所に申立を行い、受理されるのを待ちましょう。申し立てた内容に特に問題がなければ、相続放棄は成立するはずです。相続人が相続放棄すると、その人は最初から相続人ではなかったことになり、相続に関する一切の責任と権利を失います。
相続放棄は、今回の相続に一切関わりたくないと本気で考える人のためのものです。後から取り消すことはできませんので、よく考えてから決定しましょう。
共同名義の不動産に関するトラブルは、遺産分割協議で防ぐ
相続する不動産をやむを得ず共同名義にするのであれば、後々のトラブルに対応できるような遺産分割協議書を作成しましょう。ポイントは、共同名義にする不動産の使用や管理、収益の分配、処分についてのルールを明確に記載しておくことです。
少なくとも、以下の4点のような内容については、共同名義になる相続人同士でよく話し合い、遺産分割協議書に記載しておきましょう。
1.不動産の維持管理について
共同名義にする不動産の管理を誰が行うのか、修繕費用や税金の負担はどのように取り決めるのか、各自が負担する費用をいつどのように集めるのかなど、不動産の維持管理に必要な点を決めます。
2.共有者のうちの誰かが不動産を使用している場合の取り決め
共同名義にする不動産に共有者のうちの誰かが住んでいる場合には、他の共有者へ賃料を支払うのかどうか、支払うなら月額いくらなのか、どのような方法で支払うのかを決めておきましょう。
3.不動産収入の分配について
共同名義にする不動産が賃貸物件の場合は、その賃料収入を誰が集め、共有者にどれくらいの割合で分配するのか、どのような方法で分配するのかを決めておきます。
4.売却に関して
共同名義の不動産はいずれ売却すると決めておくことも可能です。共同名義でいる期間を不用意に長引かせないためにも、有効な方法でしょう。売却について、共同名義になる相続人全員の同意が得られたら、売却の時期を記載しておきます。
共同名義の不動産の相続登記は、単独でも可能
相続した不動産を共同名義にする場合も、相続登記は必要です。共同名義の不動産は、原則として共有者全員で相続登記を行うことになっていますが、単独で登記することも可能ではあります。
考えられる状況として、相続した不動産を共同名義にすることをあまり良く思っていない相続人が、相続登記を妨害しようとして協力を拒むかもしれません。
そのような場合には、共有者の1人が単独で相続人全員分の登記を完了できます。ただしこの場合、相続登記に参加していない他の相続人には、登記識別情報の交付がされません。
このことをめぐって、後日トラブルが発生する可能性もありますから、単独での相続登記は最終手段としてとっておく方がよいでしょう。
共同名義の不動産について話がつかない場合は、調停を利用する
共同名義の不動産をめぐる当事者同士の対立が激しく、もはや話がつかなくなってしまった場合には、家庭裁判所を通して調停手続きを利用することもできます。
調停では、法律の専門家たちが問題解決のための手助けをしてくれますが、調停で話が付かなかった場合には、審判手続きに移行し、裁判官に強制的に審判を出されてしまうので注意しましょう。
なお、裁判所を利用することで、相続人同士の関係がより緊張することも覚悟しておくべきです。
被相続人による生前対策がベスト
ここまで、実際に相続が発生してからの対策を色々とご紹介してきました。しかし、被相続人が自分の生前にしっかりとした対策をしておくこと以上に、効果的な対策はありません。
具体的には生前に、不動産を共同名義にしなくても良いような備えをしておくのです。遺産分割が難しい不動産があるなら、生前に売却して現金などの分けやすい形に換えておくことで、共同名義にしなくてもよくなります。
または、郊外の大きな一軒家を売却して、相続人の人数分のマンションを買うなど、より分けやすい不動産に換えておいてあげるのも効果的です。
もし生前に不動産を売却することが難しいのであれば、遺言書に不動産の相続についての指示を記載して下さい。相続人のうちの誰かを指名して、その人に不動産を相続させると書いておくだけでも良いでしょう。遺言書さえあれば、トラブルの多くは解決できるものです。
まとめ
共同名義の不動産には、ごくわずかなメリットと、比べものにならないほど大きなデメリットがあります。相続する不動産を共同名義にする場合でも、できるだけ早いうちに共有を解くことを前提にしておきましょう。