不動産を相続人全員の共有にする遺産分割方法
不動産は相続人の共有のままでもかまわない
遺産分割で、誰が不動産をもらうかで話がまとまらなければ、相続人全員の共有にする方法があります。そもそも、亡くなった人が所有していた不動産は、遺産分割をするまでは相続人全員が法定相続分で共有している状態です。
不動産を共有のままにしておいても問題ありません。遺産を共有にする遺産分割方法は、「共有分割」と呼ばれます。
共有分割のメリットとデメリット
不動産を共有にすれば、公平な遺産分割ができます。しかし、共有不動産は共有者全員が合意しなければ売却等ができないため、不便なことが多くなります。また、共有者が亡くなれば共有者の相続人が権利者に加わり、権利関係が複雑化してしまいます。
共有分割の手続き方法
共有分割をする場合、通常は法定相続による相続登記を行うため、遺産分割協議書は必要ありません。法定相続による相続登記の必要書類は、次のようなものになります。
①戸籍謄本一式
被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の現在の戸籍、被相続人と相続人のつながりがわかる戸籍がすべて必要です。
②相続人全員の住所証明書
登記申請の際には、新たに登記名義人になる人の住所証明書(住民票または戸籍附票)が必要です。法定相続の登記では、相続人全員が名義人になるので、相続人全員の住所証明書を提出します。
③被相続人の住所証明書
元々の登記名義人が被相続人と同一人物であることを確認するため、被相続人の本籍の入った住所証明書(除票または戸籍附票)が必要です。
④固定資産評価証明書または固定資産税の課税明細
登録免許税の計算のため、固定資産評価額を証明する書類が必要です。
不動産を売却し売却代金を分ける遺産分割方法
不動産をお金に換えれば分割できる
不動産の遺産分割では、その不動産を売却した代金を分ける方法があります。不動産そのものを分割するのは困難ですが、不動産を現金化すれば簡単に分けられます。遺産を現金化して遺産分割する方法を「換価分割」と言います。
換価分割の手続き方法
不動産の相続で、換価分割をする場合には、次のような流れになります。
1 遺産分割協議
換価分割をするには、遺産分割協議において、相続人全員が不動産売却に合意する必要があります。
2 遺産分割協議書作成
遺産分割協議書を作成し、不動産を換価分割により分けることを明記しておきます。各相続人が取得する代金の割合なども記載します。
3 相続登記
亡くなった人の所有していた不動産は、一旦相続人名義に変更しなければ売却ができないため、売却前に相続登記を行います。法定相続による相続登記を行って相続人全員の名義にするのが原則ですが、相続人の代表者1人の名義にすることも可能です。
4 売却手続きを依頼
不動産会社に売却を依頼し、買主を探してもらいます。
5 売買契約
不動産の買主が見つかったら、売買契約を締結し、手付金を受け取ります。
6 残金決済・引渡
残代金の支払いを受けると同時に、不動産を買主に引き渡します。
7 売却代金の分配
遺産分割協議書の内容に従って、不動産の売却代金を相続人の間で分けます。
8 確定申告
換価分割では、被相続人の取得時より不動産が値上がりしていて譲渡所得が発生していれば、相続人全員に譲渡所得税が課税されます。この場合には、売却の翌年に確定申告を行って納税する必要があります。
不動産を相続人の1人が取得し代償金を支払う遺産分割方法
不動産をもらう人が他の人にお金を払って解決もできる
不動産の遺産分割する際には、「代償分割」という方法が利用できます。代償分割とは、特定の相続人が不動産を取得し、不動産を取得した相続人から他の相続人に対して金銭(代償金)を支払う遺産分割方法です。
代償分割の手続きの流れ
代償分割をする場合の流れは、次のようになります。
1 遺産分割協議
遺産分割協議で、相続人全員が代償分割をすることに合意する必要があります。遺産分割協議では、不動産の評価額を出し、代償金の金額や支払時期も決めます。不動産の評価額は、相続人全員が合意すれば、時価でも固定資産評価額でもかまいません。
2 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議で決まった内容を遺産分割協議書にします。遺産分割協議書に代償分割である旨を記載しておかなければ、代償金の支払いが贈与であるとされ、贈与税を課税されるおそれがあります。
3 代償金の支払い
不動産を取得する相続人は、遺産分割協議書に従って、代償金の支払いを行います。
4 相続登記
遺産分割協議書を添付し、法務局で相続登記を行います。