相続不動産の名義変更の期限について
相続不動産の名義変更については、法律上明確な期限が定められているわけではありません。そのため、亡くなられた翌日に相続登記してもよいですし、数年後に相続登記しても、法律上の期限はないため、違法ではないのです。
ただし、相続不動産の名義変更に期限がないからといって、いつ名義変更してもよいというわけではありません。
実は、相続不動産に限らず、不動産の名義変更である所有権移転登記自体、義務でもなければ期限もないのです。では、なぜ不動産の名義変更に期限が設定されていないのでしょうか?
名義変更登記をする意味とは
相続不動産の名義変更に期限がない理由は、名義変更登記をする意味を考えるとよくわかります。
そもそも登記名義については、住民票のように必ずしも変更する必要はありません。なぜなら登記とは、所有者である自分自身の権利を第三者など公に示して対抗するためにするものだからです。
例えば、不動産を売却しようと思った際に、買主は当然誰の名義の不動産かをチェックします。その際に、不動産の登記名義が売主ではなく、何代も前の所有者の名義になったままだったら買ってくれるはずもありません。
このように、不動産の名義変更は国の手続きだからと言って強制されるものではなく、自分自身の権利を公に示すために、つまり、自分自身のためにするものなのです。
ですから、名義変更手続きに期限がないからと言って、いつ相続不動産の名義変更をしてもよいということではなく、自分自身が相続不動産の所有者であることをきちんと示すために、期限がなくても早めに手続きをすべきなのです。
相続不動産の名義変更に期限がないからと言って放置するとどうなる?
相続不動産には名義変更の期限がないため、たとえ放置したとしても誰からも指摘を受けません。ただ、不動産の名義変更を放棄すると、期限がなかったとしても次のような問題が生じる可能性があります。
相続不動産が売却できない
不動産の登記名義については、実態に即していなければ他人に買ってもらうことはできません。そのため、相続不動産を売却しようと不動産会社に相談した際に、まずは相続登記をするよう指示される可能性があります。
相続登記に期限はないものの、相続不動産を売却するのであれば、遺産分割協議が終わった後に、できる限り早く名義変更することが重要です。
相続不動産が担保にできない
相続不動産にはそれなりの担保価値があるため、場合によっては相続不動産を担保に入れて金融機関から融資を受けるケースもあるかと思います。
ところが、相続不動産の名義変更がされていないと、本人の所有物であることが証明できないため、担保に入れることもできないのです。
他人が勝手に登記してしまう
自分自身に名義変更していないと、他の相続人などが書類を勝手に揃えて名義変更してしまう恐れもあります。もちろん、書類を偽造する行為は違法ですが、手続きをされてしまって困るのは、本来の名義人です。
このような行為を防止するため、たとえ期限がなかったとしても、早急に名義変更手続きをする必要があるのです。
相続不動産の名義変更を放置すると手続きが煩雑に
このように、相続不動産の名義変更は期限があるからそれまでにするということではなく、自分自身の権利を保護するためにする必要があります。
ただ、相続発生後は何かと忙しいため、しばらく経ってから名義変更手続きをしようと思っている場合、どのような問題が生じるのでしょうか。
さらに相続が発生するリスク
相続不動産の名義変更を放置していると、さらに相続が発生して権利関係がどんどん複雑になっていく恐れがあります。
例えば、兄弟2人が相続人のケースで、兄が相続不動産を取得したものの、期限がないからと言って名義変更を放置した場合において、その後、弟が死亡して相続が発生して、弟の配偶者や子供が相続人になることがあります。
すると、当初の相続不動産の名義変更手続きについて、それら弟の法定相続人にも書類を提出してもらわなければならなくなるため、非常に手続きが煩雑になってしまうのです。
弟が生存しているうちに名義変更しておけば何の問題もなかったはずが、期限がないからと言って放置したことによって、弟の法定相続人にまで権利関係が及んでしまうのです。
この際、弟の法定相続人がすんなり応じてくれればよいのですが、応じてくれないと最悪の場合裁判までしないと名義変更ができなくなってしまう可能性もあります。
まとめ
相続登記の名義変更は、たとえ期限がなくても、放置すると非常に面倒な状況に陥ってしまうので、できる限り早めにすることをおすすめします。
名義変更に期限はありませんが、概ね四十九日の法要が終わって、遺産分割協議が完了したら、速やかに名義変更の手続きをしたほうがよいでしょう。