不動産だけを放棄することはできない
相続は放棄することができる
親が亡くなると、子は全員相続人となり親の財産を相続します。親と折り合いが悪かったり、兄弟仲が良くなかったりすれば、相続とはかかわりたくないと思うこともあるでしょう。
相続をするかどうかは、相続人自らが選べます。本来相続権がある人が、相続しないと決めることを「相続放棄」と言います。
一部の財産だけを放棄することはできない
相続放棄とは、相続自体を放棄することです。相続放棄した人は、最初から相続人でなかった扱いになり、財産を一切相続できません。
たとえば、遺産として現金と不動産があり、相続人が自分1人と仮定しましょう。この場合、相続するならば、現金も不動産ももらわなければなりません。
一方、相続放棄するなら、現金も不動産もどちらももらえないことになります。現金だけもらって不動産を放棄するということはできません。
被相続人に多額の借金があるなら相続放棄した方がよい
相続放棄するのは、被相続人が借金を残している場合が多くなります。相続では、マイナスの財産として借金も引き継ぐことになるからです。
遺産のうち、不動産などのプラスの財産の方が借金よりも大きければ、プラスの財産を使って借金を返済することもできます。しかし、借金の方が大きければ、相続人が自らの財産を使って借金を返済しなければなりません。
不動産を売却する方法もある
不動産を相続しなければならない場合、相続した後、売却して手ばなす方法もあります。売却すれば、不動産を現金化することが可能です。
相続する不動産が売却できそうな不動産なら、相続を放棄するよりも、売却した方がメリットになることがあります。
不動産も他の財産もいらないなら相続放棄する
不動産はいらないけれど売却もできそうにない、他の財産もいらないという場合には、相続放棄するのが有効です。相続放棄をすれば、その相続とは無関係になります。
相続放棄は、裁判所に書類を提出して手続きしなければなりません。相続放棄には手続き期限がありますから、注意しておきましょう。
相続放棄の必要書類と手続き
相続放棄では期限内に書類を提出しなければならない
相続放棄で最も注意しなければならないのは期限です。相続放棄は、相続開始を知ったときから3か月以内に書類を提出して手続きしなければなりません。
相続放棄ができる期間のことを熟慮期間と言います。熟慮期間を過ぎてしまうと、それ以降相続放棄はできません。
なお、熟慮期間は延長の申し立てができますが、この場合にも当初の3か月の期間内に書類を提出する必要があります。
相続放棄は家庭裁判所で手続きする
相続放棄をするときには、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で相続放棄の申述をしなければなりません。
相続放棄の申述は、家庭裁判所に必要書類を提出して行います。直接裁判所に行く必要はなく、郵送でも手続き可能です。
相続放棄申述の必要書類
相続放棄申述の際に、裁判所に提出する書類は、次のようになっています。
相続放棄申述書
書式は裁判所のホームページでダウンロード可能です。記入例に従って、必要事項を記入して提出しましょう。
相続放棄申述書には、相続財産の概略も記載します。不動産がある場合には、農地、山林、宅地、建物といった種類と、だいたいの面積を書きます。
戸籍謄本
被相続人が死亡していること、申述人が相続人であることがわかる書類として戸籍謄本が必要です。先順位の相続人が相続放棄をし、後順位の相続人が相続放棄する場合、先順位の人が既に提出済みの戸籍謄本は提出不要です。
相続放棄申述書提出後の手続き
相続放棄申述書を裁判所に提出し、必要書類等に問題がなければ、裁判所から申述内容を確認する照会書が届きます。照会書に必要事項を記入して返送すれば、相続放棄の申述が受理され、手続き完了です。
申述人のところには、相続放棄申述受理通知書という書類が送られてきます。必要であれば、裁判所に相続放棄申述受理証明書の交付を申請することも可能です。
共同相続人がいるなら遺産分割協議で不動産を放棄する
他の相続人(共同相続人)がいる場合には、遺産分割協議を行って不動産やその他の遺産を分けます。
遺産分割協議では、相続人全員が同意していれば、遺産をどのように分けてもかまいません。自分が不動産を放棄することに、他の相続人が同意してくれれば問題ないということです。
遺産分割協議で不動産を放棄する場合、特に必要書類はありません。なお、遺産分割協議で決まった内容は、遺産分割協議書という書類にする必要があります。