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遺言書を無効にしないために注意すべきこと

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無効になる4つの場合

遺言書が無効になる場合は、大きく分けると以下の4通りになります。

①法律が定めた方式に違反した場合(民法960条)

②遺言書作成時に遺言能力を欠いた場合(民法961条、963条)

③被後見人が後見人等やその配偶者等の利益になる遺言をした場合(民法966条)

④2人以上の者が同一の証書で遺言を作成した場合(共同遺言、民法975条)

ここでは、特に問題になりやすい①と②の場合を取り上げ、以下具体的に見ていきましょう。

 

法律が定めた方式に違反した場合

民法は、遺言書作成の方式を定めています。その方式には、「普通の方式」と「特別の方式」とがあり、「普通の方式」には、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類があります。

これらの何れかの方式に従っていなければ、遺言は無効になってしまいます。また、特別の方式を用いることができる場合は、限定的です。そのため、通常の場合、遺言書は、自筆証書遺言または公正証書遺言、秘密証書遺言に従って作成するよう意識しなければなりません。

これら3つの方式も、自筆証書遺言と公正証書遺言・秘密証書遺言とで分類できます。すなわち、公正証書遺言と秘密証書遺言は、自筆証書遺言とは異なり、その作成に公証人が関与します。そのため、これらの方式を用いた場合は、方式に違反したことを理由として無効とされる可能性が低くなります。もっとも、立合いをお願いする証人の方が欠格事由(民法974条)に該当しないかは、チェックしておきましょう。

以上のことから、無効になるリスクを特に気にしなければならないのは、自筆証書遺言の方式により遺言書を作成する場合です。そこで、項目を改めて、自筆証書遺言の方式を用いる際に留意すべき点を確認していきましょう。

 

自筆証書遺言で留意すべき点

自筆証書遺言の方式は、次の5点を要求しています:

(1)日付の記載

これは、「平成29年5月1日」のように、特定の日を記載しなければなりません。そのため、たとえば「昭和41年7月吉日」と記載するだけでは、どの日を指すのか一義的に特定しないため、方式に従ったものとはいえず、無効となってしまいます。

(2)氏名の記載

これは、遺言者を特定するために要求されています。そのため、遺言者が何人であるかを知ることができ、他人との混同が生じないような場合であれば、氏または名のみでもよく、また通称を用いることも可能とされています。もっとも、遺族らの紛争を回避するためにも、本名を氏と名により記載することが望ましいといえるでしょう。

(3)これら及び全文が自書によること

自筆証書遺言による場合、全文、日付および氏名を、遺言者本人が自分で書かなければいけません。そのため、パソコンで書いた文章をプリントアウトして遺言書を作成しても、無効になります。また、手書きで作成した遺言書のコピーも認められません。 もっとも、カーボン紙を用いて複写の方法で記載した場合は、有効とされています。また、病気その他の理由により運筆について他人の添え手による補助を受けてされた自筆証書遺言は、

(1)遺言者が証書作成時に自書能力を有し、

(2)他人の添え手が、単に始筆もしくは改行にあたりもしくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、または遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、

(3)添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できる場合には、自書の要件を満たし有効とされています。

(4)押印

遺言書には、押印をしなければなりません。過去に、遺言書の本文の自書名下に押印はないが、これを入れた封筒の封じ目にされた押印があれば、押印の要件を満たし有効とされたケースがありますが、トラブルを防ぐためには、遺言書自体に押印することを忘れないようにしましょう。  押印は、認印や指印でも有効とされています。他方、花押を書くことは押印の要件を満たすとはいえず、遺言書は無効になるとされています

(5)記載変更のルール

自筆証書中の記載を変更する場合は、

(a)その変更の場所を指示し、

(b)これを変更した旨を付記して、

(c)特にこれに署名し、かつ、

(d)その変更の場所に印を押さなければ、無効になってしまいます。

 

遺言書作成時に遺言能力を欠いた場合

遺言書が有効であるためには、その作成時に、遺言能力を有している必要があります。そして、遺言能力が認められるためには、15歳以上であり、かつ、意思能力を備えていることが必要です。

このうち、意思能力の有無を巡って、遺言書の有効性が争われることが往々にしてあります。すなわち、遺言書作成時に認知症であったことなどを理由として、自己の行為の意味を理解する通常の判断能力を欠いていると主張し、遺言書の有効性を争う者が出てくる可能性があります。そのため、このような可能性が疑われるようでしたら、医療機関等で認知症等についての診察を受けることが安全策といえるでしょう。また、このような場合は、自筆証書遺言よりも、公正証書遺言による方が安全といえるでしょう。

 

おわりに

遺言書を作成しても、その有効性が疑わしいと、遺族や遺贈の相手などの間で紛争を招いてしまいかねません。残された方々が円満に相続局面を乗り越えられるよう、遺言書を作成するにあたっては、以上の諸点に気をつけるようにしましょう。