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遺言VS法定相続 優先されるのはどっち?

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遺言は第一優先されるが、例外あり

遺言書が見つかった場合、それが民法の規定に従って作成されている有効なものであれば、その遺言の内容が第一優先されます。

ただ、ここでポイントなのは遺言については第一優先されるだけで、絶対にその内容のまま遺産分割をしなければならないというわけではありません。

亡くなられた方の意思を尊重することはとても大切ですが、生きている人全員がそれを拒否しているのに強制的に遺言の内容を執行することは、あまり現実的とは言えません。

そのため、遺言については、法定相続人及び遺言の内容に記載されている受遺者、遺言執行者など利害関係人全員の同意があれば、遺言書を無視して遺産分割をすることも可能です。

遺言を優先しなかったからといって、法律に罰則規定があるわけではないのです。

反対に、誰か一人でも遺言を執行したいという人がいた場合は、事態が全く変わってきます。この場合は、遺言を無視することはできなくなるため、話し合いで決着がつかなければ、遺言の内容に沿って執行することになります。

このように、遺言は第一優先されますが、法定相続人や受遺者、利害関係人、遺言執行者全員が同意すれば、遺言を無視して遺産分割協議をすることも可能なのです。

 

法定相続分とは何か

遺言と法定相続どちらが優先されるかを知るためには、まず法定相続とは何かを知る必要があります。法定相続とは、民法で決められたとおりに相続することです。

民法では、次のような法定相続分が規定されています。

・配偶者と子供が相続人である場合:配偶者1/2 子供(2人以上の時は全員)1/2
・配偶者と直系尊属が相続人である場合:配偶者2/3 直系尊属(2人以上の時は全員)1/3
・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合:配偶者3/4 兄弟姉妹(2人以上の時は全員)1/4

法定相続分は遺言書がないような場合に遺産分割をする際の一つの指標であり、話し合いで決着がつかない場合の解決策として規定されています。そのため、法定相続分が遺産分割において第一優先されるという意味ではありません。

例えば、すべての財産を長男が相続したい場合、他の法定相続人が同意すれば、法定相続分を無視して遺産分割しても何ら問題はないのです。

 

遺言と法定相続の関係性

遺言と法定相続がバッティングした場合、どちらが優先されるのでしょうか。

先ほどもお伝えしたとおり、すべての人が同意していれば、遺言も法定相続も無視することができます。

問題なのは、遺言があるのに法定相続を主張された場合です。基本的には誰か一人でも遺言の執行を望んでいるのであれば、第一段階としては遺言が優先されます。

しかし、遺言でも侵害することができない絶対的な相続分というものが民法では規定されています。

これを「遺留分」と言い、その内容は以下の通りです。

・直系尊属のみが相続人の場合は被相続人の財産の1/3
・それ以外の場合は全体で被相続人の財産の1/2

遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められている権利で、遺族である相続人の生活の保護などを目的としています。

万が一、遺言でこの遺留分を侵害する内容が記載されている場合は、遺言よりも遺留分が優先されます。但し、これは当然に優先されるというよりは、遺留分を侵害された相続人が自ら遺留分の返還を求める「遺留分減殺請求」をすることで取り戻すことができます。

よって、遺言と法定相続分では遺言が優先されますが、遺留分を侵害している場合は、その範囲で返還を求められる場合があるということになります。

 

遺留分を侵害しない遺言がベスト

遺言自体には特に制約はないため、遺留分を侵害する内容を書いたとしても法的に問題はありません。ただ、遺言執行する際に遺留分権利者が強く反発する可能性がある場合は、遺留分減殺請求によって相続人間でトラブルが発生してしまう可能性が懸念されます。

法定相続分を侵害する分には、そこまで問題にはなりませんが、遺留分まで侵害してしまうと遺留分減殺請求によって強制的に取り戻されてしまいます。

そのため、遺言を考える際には、一度弁護士に相談してどこまでが遺留分なのかを具体的に確認しておくと良いでしょう。そうすることで、遺言執行時のトラブルは大幅に減らすことができ、よりスムーズに遺産分割を進めることができるでしょう。