遺言の付言事項として永代供養の希望を書く方法
・遺言に書いて法的効力がある事項は限られている
遺言とは、自分が亡くなった後に一定の法的効果を生じさせることを目的として行う意思表示のことです。亡くなった後のことに自分は関与することができませんが、遺言を残しておくことで、自分の希望が実現することがあります。
遺言には何を書いても法的効力があるわけではありません。遺言に書いて拘束力を持つ事項は民法に規定されており、法定遺言事項と呼ばれます。たとえば、相続分の指定や遺贈に関することは法定遺言事項とされているため、遺言に書くことにより希望が実現することになります。
・遺言には法的効力を持たない付言事項も書くことができる
遺言に書いて法的効力があるのは法定遺言事項だけですが、それ以外のことを遺言に書いてはいけないわけではありません。遺言には、法定遺言事項以外にも、葬儀についての希望や家族への感謝の言葉、遺言を書いた経緯などを自由に書くことができます。
遺言に書いて効力を持たない事項は付言事項と呼ばれます。付言事項により遺言者の想いが家族に伝わりやすくなることがありますから、遺言を書くときには、付言事項も活用するのがおすすめです。
・付言事項で永代供養の希望を書けば実現する可能性がある
死後に永代供養してほしいという希望は、法定遺言事項ではありませんが、付言事項として遺言に書くことがきます。付言事項として遺言に永代供養の希望を書いておけば、家族が遺言者の意思を尊重し、その通りにしてくれる可能性が出てくることになります。
遺言で永代供養の負担付遺贈を行う方法
・負担付遺贈とは
負担付遺贈とは、遺贈者が受遺者(遺贈を受ける人)に対して財産を譲る見返りとして、受遺者に一定の義務を負担させるというものです。たとえば、「自宅不動産を遺贈するかわりに残された家族の面倒をみる」「財産の一部を遺贈するかわりにペットの世話をする」など、扶養、介護、ペットの飼育などを誰かに任せたい場合に、負担付遺贈が使われることが多くなっています。
・遺言で負担付遺贈をすれば永代供養が法的効力を持つ
言で、寺院に対し、「財産を遺贈する代わりに永代供養をしてもらう」という負担付遺贈を行うこともできます。負担付遺贈を行えば、受遺者である寺院は遺贈を受ける代わりに、遺言に伴って永代供養を行う義務を負うことになります。つまり、負担付遺贈なら、遺言に付言事項として書くのと違い、永代供養に法的効力を持たせることが可能になります。
・負担付遺贈は放棄することもできる
負担付遺贈をすれば、寺院に永代供養の義務を負わせることも可能です。しかし、負担付遺贈の場合にも、必ず希望が実現するとは限りません。なぜなら、受遺者は遺贈を放棄することもできるからです。結局のところ、遺言で永代供養を依頼しても、確実に実現させることは困難といえます。
死因贈与契約により永代供養をお願いする方法
・死因贈与とは
死因贈与とは、贈与者の死亡を条件とする贈与のことです。死因贈与の経済的効果は、遺贈と変わりません。しかし、一方的に行う遺贈とは違い、死因贈与は当事者同士が契約を結ぶものになります。つまり、受贈者(贈与を受ける人)の承諾がなければ、死因贈与は成立しないことになります。
・負担付死因贈与により永代供養を任せられる
自分の死後に永代供養をしてもらいたい場合、寺院との間で負担付死因贈与契約を締結しておく方法があります。負担付死因贈与なら、あらかじめ寺院の承諾を得ていますから、負担付遺贈よりも確実に永代供養を任せられます。
死後事務委任契約で永代供養を依頼する方法
・死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、自分の死後の葬儀や埋葬に関する事務などを第三者に委任する契約になります。葬儀や埋葬に関することは、遺言に書いても効力を持ちません。そのため、誰か信頼できる人に確実に任せたい場合には、死後事務委任契約を結んでおく必要があります。
・死後事務委任契約で永代供養に関する事務を委任する
自分の死後に永代供養してほしい場合、信頼できる人と死後事務委任契約を結び、事務手続きを依頼しておく方法があります。死後事務委任契約は、受任者(委任を受ける人)の承諾がなければ成立しません。永代供養に関する事務を含む死後事務委任契約を結んでおくことは、遺言で永代供養をお願いするよりも確実な方法といえます。