遺言書を書く際に必要なもの
いざ遺言書を書こう、そんな時にまず何を用意すればいいのでしょうか。
最低限、丈夫な紙、封筒、ボールペンなどの消えない筆記具、印鑑を用意さえすれば大丈夫です。印鑑は認印でも大丈夫ですが、実印が望ましいです。
それでは、遺言書作成にあたっての特に重要となるポイント8つを見ていきましょう。
ポイント1
全文自筆で書くこと
自筆証書遺言、というだけあって全文自筆で書く必要があります。本文はもちろん、タイトルや作成年月日、署名まで全てです。たとえ一部であっても、代筆やパソコン使用など自筆でない場合には無効となってしまうので注意してください。
遺言書ということを明確にするため、タイトルは書いておくとよいでしょう。通例は「遺言書」「遺言」「遺言状」などとします。形式は縦書きでも横書きでも構いません。用紙、筆記用具にも特に制限はありませんが、遺言内容は項目ごとに箇条書きにします。
ポイント2
財産処分の表現に注意 財産を相続人に譲る場合は「相続させる」、相続人以外に譲る場合は「遺贈する」と書きます。
法定相続人に財産を移転させることを「相続させる」というため、法定相続人以外の者に「相続させる」という表現は使えないのです。
→法定相続人 記事リンク
一方、詳細は割愛しますが、法定相続人に対しては「相続させる」「遺贈する」のいずれも選択することが出来ます。
しかし、単独登記申請ができるといったメリットから、「相続させる」と表記すべきです。
ポイント3
財産は特定して書くこと
土地や家屋などの不動産は、登記事項証明書の表記に従って書きます。もし未登記の物件の場合は、固定資産税課税台帳登録証明書の表記に従ってください。
預貯金は、銀行名、支店名、預貯金の種類(普通預金、定期預金など)、口座番号などを特定して記載します。株式については会社名、株数を明記してください。
これらもきちんと守ることが必要です。もし特定できない場合には遺産分割協議の対象財産になってしまい、後々の紛争の種になってしまうかもしれません。
ポイント4
遺言執行者を指定するとよい
遺言執行者の指定は必須ではありませんが、遺言内容を確実かつ迅速に実行するためには指定した方が良いです。遺言執行者の指定は遺言でしかできません。
→遺言執行者 記事リンク?
ポイント5
日付を明記すること
日付は年月日まできちんと書きましょう。西暦・和暦、算用数字・漢数字どちらでもよいです。「○年△月吉日」といった表現では遺言作成日を特定できないので無効となってしまいます。このような日付の明記により、もし複数の遺言書が見つかった場合、どの遺言書が一番新しいものか判断することが出来ます。
ポイント6
訂正は法定の方法に従うこと
書き直しや削除は法定の方法に従って行います。該当箇所に二重線を引いて訂正印を押し、近くに書き加えます。また、遺言書の上部欄外や末尾に変更箇所と内容を付記し署名する方法により行います。
もっとも、2か所以上訂正する場合にはもう一度書き直す方が良いでしょう。
ポイント7
封印はすべき
書き終えたら、封筒に入れて封をし、押印に用いたものと同じ印鑑で封印をしましょう。自筆証書遺言の場合、封印をしていなくても無効ではありませんが、変造等を避けるために封印をするのが望ましいです。表書には遺言書と記載し、裏書に作成日と署名・押印をします。
遺言書が2枚以上になっても、1つの封筒に入っていれば同一の遺言書とみなされます。
なお、封印した場合は、家庭裁判所による検印が必要となります。遺族が発見時にうっかり開封しないよう、「開封せずに家庭裁判所に提出すること」等と書いておくとよいでしょう。
→遺言書 検印 記事リンク?
ポイント8
夫婦共同遺言は禁止
夫婦の意思は共通であるから、最後に連名で署名押印すればよい…そう思っていませんか。民法第975条では共同遺言が禁止されています。
共同遺言を禁止することで、遺言者の最終の意思表示を確保し、また遺言者の遺言の撤回を自由にすることを可能としています。
もっとも、同一用紙に夫婦が全く独立の自筆証書遺言を書いた場合や、両人の別々の自筆証書遺言が同一の封筒に入れてある場合などは共同遺言にあたりません。
トラブルを防ぐために…
以上のポイントも無用な紛争を避け、遺言者の意思を適切に反映させるために重要なことですが、その他にも遺言書に「付言事項」を記載することをお勧めします。
付言事項は、法定記載事項とは異なり、遺言内容に対する理由を説明するなど、遺言者自身の率直かつ素直な思いをメッセージとして残すことができます。家族などの相続人、関係者の実名を記したうえで感謝の気持ちを記載するほか、可能な限り具体的なエピソードを交えて記載することで、多少なりとも生じてしまう相続の不公平さに対し、なぜそのような遺言をしたのかという理由を丁寧に伝えることが出来ます。そのような遺言者のストレートな思いは、円満な相続実現につながることでしょう。
おわりに
昨今、「終活」という言葉を耳にする機会もあるかと思います。残される者のために、円滑な相続が実現できるよう財産を整理し遺言を作成しておくことも、一つの大事な「終活」です。
正確に遺言書を作成し、自分の思いをしっかりと残しておきましょう。