相続とはなんでしょうか?
相続とは被相続人(相続をさせる者)が死亡した際に開始され、相続人(相続を受ける者)に被相続人が有していた遺産(財産)が承継されることになります。相続人となる者の範囲は民法で定められており、配偶者(夫や妻)および死亡した人の子ども、直系尊属(父母や祖父母など)、兄弟姉妹となります。
原則として、被相続人(相続をさせる者)は遺言を作成することにより、自身の有する財産をどのように処分し、どのような割合で相続人に相続させるかを自身の判断で決めることが出来ます。
しかし例外的に、遺言書を基にする協議(話し合い)を進めていく中で、折り合いがつかなくなってしまった場合には、裁判所で判断され、遺産の取り分が定まる場合があります。この場合には、民法により法定相続分が定められているため、民法のルールにより、各相続人の取り分が定まることになります。
民法によれば、以下のとおりとなります。
(1)配偶者と子どもが相続人である場合 配偶者2分の1、子ども2分の1
(2)配偶者と直系尊属が相続人である場合 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
(3)配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
遺産とはなんでしょうか?
遺産とは被相続人(相続をさせる者)の有していた相続の対象となる財産という意味で使われています。金銭的な価値を有する物が対象となり、現金等はもとより不動産や保険金、借地権や債権も遺産の範囲に含まれ、相続の対象となります。
また、上記のようなプラスの財産だけでなくマイナスの財産とされる借金やローン等も遺産となります。そのため、被相続人が多額の借金を背負っていた場合、プラスの財産と比較しても相続することにより結果としてマイナスとなる場合があります。そこで、このような場合には相続することを避けるため、相続放棄という選択肢が民法によって用意されています。
相続放棄を行うためには相続人により相続開始がなされてから3か月以内に家庭裁判所に対して相続を拒否する旨の意思表示を申し立てる必要があります。相続放棄をすることにより、当初から申立人は相続人といった立場ではなかったことになり、マイナスの財産を背負う事態を回避することが出来ます。なお、相続放棄によってマイナスの財産だけを放棄してプラスの財産を相続するといったことはできず、一切の遺産が放棄されてしまうことに注意が必要です。
相続の具体的な手続は?
相続が開始されて最初に進める手続は被相続人が死亡したことを国に対して伝えることになります。
まず、死亡届を死亡後7日間以内に提出する必要があります。その後、火葬の許可申請を市区町村役場に提出します。同申請を行う場合には、死亡届も必要となるので注意が必要となります。
次に相続開始から3か月以内の手続としてはまず遺言書の有無を確認することが必要となります。遺言書がない場合には相続人等で集まって再度遺産分割協議をする必要が出てくるため、遺言書を早期に発見することが重要となります。また誰が法定相続人となっているのかを調査する必要があります。普段顔見知りの親戚だけかと思っていたら、法律上関係性が希薄な方が相続人となっている場合もあります。仮に相続人が漏れていた状態で遺産分割協議を進めた場合、やり直す必要が出てくる可能性もありますので、慎重に調査する必要があります。そして、相続財産を調査し、具体的に遺産がどの程度存在しているのか、またその価値はどの程度なのかを確定する必要があります。このタイミングで財産目録を作成しておくことで、その後の手続を簡便にすることが出来ます。そして遺言等によって各相続人の相続財産が確定していない場合には、遺産分割協議をする必要が出てきます。ここで合意が得られない場合には裁判となり、法定相続分による遺産の分割がなされることになります。この場面で相続放棄等の手続をすることになります。
相続開始から4か月以内の手続としては所得税の準確定申告が必要となります。準確定申告は相続人全員が納税対象者となり、被相続人の所得税の申告を行う義務が生じます。
相続開始から10か月以内の手続としては、遺産分割協議も終盤に差し掛かっていると思われるため、遺産分割協議書の作成に移ります。同協議書を作成することにより、話し合いによって得られた合意を明確にし、無用なトラブルを回避することが可能となります。また、相続登記の手続や預貯金、株式、自動車の名義変更の手続、相続税の申告などに際して協議書が必要となる場面がありますので、作成することを強くお勧めします。遺産分割協議書のフォーマットは法律によって定まっていませんが、第三者が一見してその内容が明確となるよう記載しなければなりません。協議書に基づき各種手続を終えた後に、最後の相続税の納税手続を行います。
ここまでで記載した各種手続を終えることが出来れば相続に必要な手続はほぼ終了したと言えるでしょう。
仮に、相続した財産が基礎控除を超える場合や、相続税の特例等を利用しようと考える場合には、さらに相続税軽減のための申告手続が必要となります。