遺産相続では金額の把握が重要
遺産の中には金額がわかりにくいものもある
人が亡くなって相続が開始すると、その人が持っていた財産を相続人と呼ばれる親族が引き継ぐことになります。ところで、亡くなった人の残した財産、すなわち遺産には、現金、預金、株券、不動産、車などいろいろな種類のものがあると思います。現金や預金であればすぐに「どれだけの価値があるのか」という具体的な金額がわかりますが、遺産相続の中には金額がわかりにくい財産もあります。
遺産相続する金額によって手続きが変わる
遺産相続の際には、遺産の金額をきちんと確定させなければなりません。というのも、遺産相続の金額によって相続に必要な手続きの内容が変わってくることがあるからです。
たとえば、相続人が複数いる場合には遺産分割が必要になりますが、法定相続分に従って公平に遺産を分けるためには、遺産の金額が明確になっていなければなりません。
また、遺産相続の際には相続税がかかることがありますが、相続税がかかるかどうかは遺産相続の金額によって変わってきます。遺産の金額が確定しなければ、相続税の納税が必要かどうかもわからず、納税が必要な場合も税額の計算ができなくなってしまいます。
遺産分割の際の遺産の評価方法
不動産を評価するのは難しい
遺産分割の際には、遺産の評価方法をめぐって争いになることがあります。特に、遺産の中に不動産がある場合には、不動産をどう評価するかが問題になります。
たとえば、不動産を相続人の共有にすると不都合が多くなるため、相続人の1人が不動産を相続し、その相続人から他の相続人に代償金を支払う「代償分割」の方法がとられることがあります。代償分割では、不動産の評価額が確定しなければ、代償金の遺産相続金額を決めることができません。
不動産は「一物四価」または「一物五価」と言われ、1つの不動産で何通りもの価格があります。どの価格を基準にして代償金を払ったらよいのかが明確にならなければ、手続きが進まないことになってしまいます。
遺産分割協議ではどのように遺産を評価してもよい
遺産分割の際に財産をどう評価するかという明確な決まりはありません。不動産についても、相続人全員が合意していれば、基準は時価でも固定資産評価額でもかまわないとされています。
そもそも、遺産分割では、法定相続分通りに分けなければいけないという拘束はなく、相続人全員が合意していればどのように分けようが自由です。遺産の評価方法についても、基本的には当事者間の合意でどのようにでもできるようになっています。
相続税計算の際の遺産の評価方法
遺産相続の金額が基礎控除額を超えると相続税がかかる
遺産相続の金額に相続税がかかるかどうかは、基礎控除額で判断します。基礎控除額は、次のようになっています。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
遺産相続の金額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりませんが、基礎控除額を超えると相続税の課税対象となります。
相続税での財産評価方法は決まっている
相続税を計算する際、遺産相続の金額をどのように評価するかについては、相続税法と財産評価基本通達で、財産の種類ごとに具体的に定められています。たとえば、動産については原則「調達価額」(同程度の中古品を手に入れるのにかかる金額)となっています。また、ゴルフ会員権は取引価格の70%、生命保険金は解約返戻金の額などと決められています。
相続税における不動産の評価方法
遺産相続する財産のうち、金額の大きいものとなると、やはり不動産でしょう。不動産の評価方法を間違えると、税額が大きく変わってしまうことになりますから、特に注意が必要です。
主な不動産の評価方法は、次のとおりです。
(1) 建物
固定資産税評価額
※建物を他人に賃貸している場合には、借家権の評価額を差し引きするため、その分減額されます。
(2) 宅地
①路線方式 路線価×面積×補正率
②倍率方式 固定資産税評価額×国税庁が定めた一定の倍率
※①②のどちらで計算するかは地域によって変わります。
※宅地を他人に賃貸している場合には、借地権の評価額を差し引きするため、その分減額されます。
自宅の敷地の評価額は減額になる特例がある
自宅や事業用店舗の敷地となっている土地については、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(小規模宅地等の特例)」により評価額を減額できることがあります。たとえば、自宅の敷地を配偶者が相続により取得した場合には、330平方メートルまでを限度として評価額が80%減額になります。