遺産相続で争いになるケースとは?
遺産相続発生後、争いになるケースには、以下のようなパターンがあります。
相続人の数が多い
遺産相続には相続人全員が関わらざるを得ません。そのため、当事者となる相続人の数が多いほど、遺産相続争いになりやすいといえます。
被相続人と全くといっていいほど交流がなかった相続人でも、自分に相続権があるとなると、相続財産の分け方に口を出してくることがあります。このような場合、被相続人の身近な親族は「何でよく知らない人に財産を渡さなければならないのか」と、到底納得がいかないでしょう。
相続人が多ければ、全員が満足する形で遺産を分けるというのは至難の業ですから、遺産分割が難航することになってしまいます。
相続財産の内容がよくわからない
相続財産の内容が不透明な場合にも、遺産相続争いになりがちです。
たとえば、被相続人と同居していた相続人と、別居していた相続人がいる場合、別居していた相続人は、同居していた相続人が遺産を隠しているのではないかと不信感をもつことがあります。一方で、同居していた相続人も「遺産の状況をすべて公開すれば多くの財産を請求されるのではないか?」と恐れてしまい、なかなか遺産の状況を公開しないことがあります。
このように、相続人同士がお互い不信感をもっているようなケースでは、相続財産の内容をめぐって、遺産相続争いが生じてしまうことがあります。
相続財産が不動産のみである
相続財産のほとんどが現金や預金であれば、遺産を分ける際にはそれほど困りません。一方、相続財産としては不動産しかない場合、不動産は簡単に分けられませんから、遺産相続で争いになってしまいがちです。
遺産相続の争いを防ぐには?
遺言を作成しておく
遺産相続の際、相続人同士で争いになるのを避けるためには、遺言書を作成しておくのが有効です。相続では、遺言があればその内容が優先されます。相続人全員で遺産分割協議を行う必要もなくなりますから、遺言により遺産相続争いを防ぐことができます。
なお、遺言を作成するときには、遺留分に注意する必要があります。兄弟姉妹以外の相続人には、遺留分という最低限の取り分が民法上保証されています。遺留分を侵害する遺言を書いてしまうと、遺留分のある相続人(遺留分権利者)が遺留分減殺請求という取戻しの手続きを行い、かえってトラブルになる可能性があります。
生前贈与を行う
遺産相続争いを防ぐためには、財産をあらかじめ生前贈与してしまうという方法があります。生前贈与すれば、財産を自分の好きな相手に譲ることができます。
ただし、遺留分権利者に損害を加えることを知りながら行った生前贈与や、相続開始前1年以内にした生前贈与は遺留分減殺請求の対象になるため、注意しておきましょう。
遺産相続で争いになった場合にはどうする?
家庭裁判所に調停や審判を申し立てる
相続人間で遺産分割協議ができない場合には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、家庭裁判所で話し合うことができます。遺産分割調停では調停委員が間に入って調整を行ってくれるため、話し合いがスムーズに進む可能性があります。なお、調停が不成立になった場合には審判に移行し、裁判所の職権で遺産分割方法が決められることになります。
ちなみに、遺産分割に関しては、必ず調停から行わなければならないというわけではなく、いきなり審判を申し立てることも可能とされています。ですから、相続人間で話し合いが成立する見込みがない場合には、遺産分割審判を申し立ててもかまいません。ただし、実際には審判を申し立てた場合にも、裁判所の職権で調停に付されるケースが多くなっています。
弁護士に相談する
遺産相続で争いになった場合、当事者だけで解決を図ろうとしても、なかなかうまくはいきません。そのため、遺産相続争いは弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は相続人の間に入って遺産相続争いの調整をしてくれます。弁護士が介入するだけでもめごとが解決するケースも多く、争いの長期化を防ぐことができます。
また、家庭裁判所に遺産分割調停や遺産分割審判を申し立てる場合にも、弁護士に代理人となってもらうことができます。調停は当事者だけでもできますが、弁護士がつけば争点を整理しやすくなるため、スムーズに進み、早期解決する可能性が高くなります。