被相続人が生前贈与を行い、相続人が支払う相続税の負担を減らす
相続には、財産額に応じた相続税がかかります。
相続人の税負担を軽減するために、被相続人が生前から「贈与」という形で少しずつ財産を相続人へ移行させておくなら、相続人が支払う相続税を大幅に節税したり、ほぼゼロにしたりすることもできるのです。
被相続人が相続人のために行える生前贈与の具体例を、4つご紹介します。
1.贈与税の非課税枠を利用する
生前に被相続人の財産を贈与する場合も、その金額に応じて贈与税が課されます。しかし贈与税には非課税枠があり、この枠内での贈与であれば贈与税はかからないのです。
被相続人の財産を受け取る人一人当たり、年間で110万円までが非課税枠です。贈る財産が現金以外の場合でも、この非課税枠が適用可能です。
被相続人が持つ財産の額が大きいのであれば、できるだけ早いうちから非課税枠を利用した贈与をしておくことをお勧めします。
2.配偶者控除制度を利用する
贈与税の非課税枠を利用した贈与と併用できる生前贈与に、配偶者への贈与があります。
結婚して20年以上経過している夫婦で、日本国内にある居住用不動産、または日本国内の居住用不動産の購入資金を贈与する場合、最大で2,000万円までの控除が特例として適用されます。
居住用でない不動産や、不動産の購入資金でない現金などは対象外です。この控除の適用は、同じ配偶者からは1回のみ受けることができます。
3.住宅取得資金贈与制度を利用する
子どもや孫がマイホームを購入する場合は、住宅取得資金として贈与することもできます。
住宅の購入契約をした日によって、非課税になる金額は変動します。取得する住宅の種類が省エネ住宅などである場合は、それに応じて非課税額が増えます。
住宅の購入や新築以外にも、住宅の改築のための贈与でも適用されます。被相続人の財産を贈られる相手の年齢が20歳以上であること、直系尊属である被相続人から直系卑属である相続人への贈与であることなどが条件です。
4.教育資金贈与制度を利用する
相続人となる予定の血族の中に学齢期の子どもや孫がいるなら、教育費として財産を贈与する方法もあります。被相続人の子どもや孫一人あたり、一定の贈与を非課税で行えることが特長です。
これらの贈与税の控除制度を効率的に適用して贈与をしていくことで、贈与税の発生を抑えつつ、任意の人に財産を移転していくことができます。
ただ、相続の直前になってから慌てて始めても、適用できるものは限られてしまう可能性があります。また、贈与税の非課税枠は毎年利用できるため、できる限り早い段階から生前贈与を始めていくことが、より大きな節税効果をもたらします。
相続人が円滑に相続できるよう、遺言書を作成する
遺言や相続分に関する法規に反していなければ、被相続人が用意した遺言書の内容が執行されて相続が行われます。被相続人の遺言がなければ、財産の分配に関しては相続人の間で協議を持ち決定されます。これを遺産分割協議といいます。
しかし、被相続人の財産額が多ければ多いほど協議は難しくなり、相続人同士での折り合いがつかずに争いとなることも多いのが現実です。
財産分割に関する被相続人の意思を明確に示した遺言書があれば、遺言執行者が責任をもって被相続人の意思を実現させます。相続人の間で、不毛な争いが起こることも避けられるでしょう。
被相続人の遺言が法的に有効なものとされるためには、守るべきルールがあります。作成の際には、相続人にとって役に立つ遺言書になるようルールを確認してから作成しましょう。
遺言書の書き方にはコツが必要
遺言書の内容を、相続人が納得できるようにしておくことも被相続人にできることのひとつです。
例えば被相続人の晩年の事情や心情によって、特定の相続人に他の相続人よりも多くの財産を相続させたいと思う場合もあるでしょう。遺言によって財産の配分を指示しておけば実現可能ですが、それだけでは他の相続人が納得しないかもしれません。
一部の相続人に多くの財産を渡したい理由を書き添えておけば、相続人全員に被相続人の思いを理解してもらい、納得して財産分割を進めてもらうことができるでしょう。
まとめ
被相続人が生前贈与をしたり内容の整った遺言書を作成したりしておけば、相続人は種々の手続きを円滑に進めることができ、心身共に負担を軽減されることでしょう。そのため、できるだけ早いうちから、相続人のための準備を進めておくことが肝心です。