遺産が少ない家庭ほど、遺産相続でもめる傾向にある
遺産相続でもめるというと、数億円以上の規遺産相続をするようなお金持ちの問題、というイメージがあるかもしれません。
実際は、遺産相続でもめる確率は遺産額が少ない家庭の方が高いことが分かっています。
平成25年度に家庭裁判所で扱われた「遺産分割審判」の件数は、12,263件です。そのうち遺産額が1,000万円以下の割合は全体の約32%、5,500万円以下の割合は約43%あります。5,500万円以上の割合は、調停件数全体のわずか25%程度です。
5,500万円以下という遺産としては少額な調停が全体の7割以上を占めている要因は、近年の経済情勢の悪化が考えられます。
本業だけでは生活が厳しい人や、本業のかたわら不動産による収入を得たい人も多いでしょう。不動産や現金などの遺産をできるだけ多く分けて欲しいと考える相続人が多くなるのは当然かもしれません。
さらに、平成27年には相続税の税制改正が実施されています。改正以前の相続税の控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人の数で算出されていましたが、改正によって3,000万円+600万円×法定相続人の数になりました。
従来は少なくとも6,000万円以上の遺産がないと相続税はかかりませんでしたが、現在は3,600万円以上の遺産があると相続税を課される場合があります。
住宅などの不動産と預貯金を合わせても6,000万円は超えないという家庭でも、3,600万円であれば超えてしまう場合も出てきます。
このように相続税のかかる遺産額の下限が広がったため、遺産相続でもめる結果の調停件数は今後も増えることが予想されています。
遺産相続でもめるケースの例と対策法
では、遺産相続でもめるパターンの具体例と、遺産相続でもめる場合の対処法の例を見てみましょう。
1.分割しにくい遺産に関するトラブル
遺産相続対象の遺産の中には、不動産や土地など分割が困難なものがあります。相続した不動産を住居にしたい相続人もいれば、それを売って早く現金が欲しいと思う相続人もいてもめることがあるでしょう。
「対処法の例」
不動産などの遺産をもめることなく分けるには、次のような方法があります。
・現物分割:家と土地は配偶者へ、預貯金は長男へ、有価証券は長女へなど、相続人それぞれに違う種類の遺産を配分する
・共有分割:財産の一部あるいは全部を相続人全員で共同所有する
・換価分割:遺産を売却し、現金に換えて均等に分割する
・代償分割:相続人の1人が不動産や土地などの遺産を所有する代わりに、他の相続人に対し相続分の差額分を現金で均等に支払う
この中にもめる原因を解決する分割方法があるなら、実践してみましょう。
2.一部の相続人が遺産を独占していることによるトラブル
被相続人を最期まで介護していた相続人などがいる場合、被相続人の面倒をずっと見ていたのは自分だから遺産も全部自分のものだと主張して、他の相続人ともめることもあります。
「対処法の例」
遺留分の返還を請求する(遺留分減殺請求)
法定の遺留分を無視した遺産相続に対しては、遺留分減殺請求によって取り戻すことができます。
遺留分とは、各相続人が最低でも受け取ることのできる遺産相続の取り分のことです。遺産を独占する相続人が原因でもめる場合は、法律に基づいて遺留分減殺請求の手続きを行いましょう。
相続人が多い場合の対処法について
相続人になるのは大抵、配偶者や子どもです。しかしまれに、非嫡出子や内縁の妻・夫、隠し子などが遺産相続権を主張してきてもめることもあります。さらに相続人の人数が多くなるほど、遺産の配分計算は困難になりもめることになります。
「対処法の例」
法定相続分を目安にする
民法では、遺産相続における法定相続分が定められています。すべてのケースで必ずこの通り配分すべきという基準ではないものの、遺産相続でもめる場合にはこれを目安にして配分できます。
弁護士に相談する
費用はかかりますが、遺産相続でもめる場合の解決への近道です。専門家に介入させることでもめる原因を取り除き、相続人全員が納得する遺産相続案を出してもらうことができるでしょう。
まとめ
遺産相続でもめる原因は、各家庭によって色々です。法に基づく対処をしたり、どうしても困ったりした場合には、遺産相続問題に強い弁護士に相談するなどして、遺産相続でもめる期間が長引かないよう早めに解決を図りましょう。