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遺留分ってどのように計算するの?

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遺留分額の計算(1)遺留分の算定の基礎となる財産

では、法が用意した”取り分”とはいくらなのでしょうか。

遺留分額を求めるには、まず、「遺留分の算定の基礎となる財産」を、以下の計算式で算出する必要があります。 遺留分の算定の基礎となる財産=相続開始時の財産+贈与―債務 ここにいう贈与とは、原則として相続開始前の1年間にした贈与(つまり、死亡時から1年前までの贈与)のことを指します。

もっとも、

(a)贈与の当事者双方が遺留分という”取り分”を侵害することを知りながらされた贈与については、1年より前のものであっても、ここにいう贈与に含まれ、上記計算式に算入されます。

また、

(b)特別受益となる贈与(→別記事参照)についても、時期を問わず計算式に算入されます。

※ (a)(b)は細かいので、さしあたり気にしなくてもかまいません。

 

では、以下の事例における「遺留分の算定の基礎となる財産」はいくらでしょうか?

【事例】 Aさん(80歳)が死亡しました。

死亡時、Aさんには、1000万円の不動産、500万円の銀行預金、100万円の債務がありました。

Aさんは、死亡する半年前に、友人Bに300万円、友人Cに500万円を贈与していました。

この事例においては、

相続開始時の財産:1000万円の不動産+500万円の銀行預金

贈与:Bへの300万円+Cへの500万円

債務:100万円 ですから、

「遺留分の算定の基礎となる財産」は、(1000万円+500万円)+(300万円+500万円)-100万円=2200万円となります。

 

遺留分の計算(2)遺留分額

続いて、「遺留分の算定の基礎となる財産」に、

「総体的遺留分率」と

「法定相続分率」

という2つの数値を掛け算することにより、1人1人に保障された“取り分”の額(=遺留分額)を計算することになります。

ややこしいと感じるかもしれませんが、言葉が難しいだけで、計算はさほど難しくありません。

まず、「総体的遺留分率」は、以下の通りです。

直系尊属のみが相続人である場合→1/3

それ以外の場合        →1/2

※「直系尊属」とは、死亡した人の父・母など、死亡した人からみて「上」の人のことです。

次に、「法定相続分率」は、以下の通りです。

被相続人(死亡した人)の配偶者→以下の(ア)の場合1/2、(イ)の場合2/3、(ウ)の場合3/4

(ア)被相続人に子がいる場合のその子→1/2

(イ)被相続人に子がいないが、直系尊属がいる場合の、その直系尊属→1/3

(ウ)被相続人に子も直系尊属もいないが、兄弟姉妹がいる場合の、その兄弟姉妹→1/4

※「配偶者」又は「子・直系尊属・兄弟姉妹」のいずれか一方がいない場合には、いる方の遺留分は「総体的遺留分額」丸ごとになります。

例えば、配偶者はいるが、子も直系尊属も兄弟姉妹もいない場合、配偶者の遺留分率は、相続財産の1/2になります。

逆に、配偶者はいないが、子が1人いる場合、子の遺留分率は、相続財産の1/2になります。

※配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹の中で人が複数いる場合には、頭割りになります。

例えば、配偶者が1人、子が3人いる場合には、子1人あたりの遺留分率は、

1/2×1/2×1/3=1/12になります。

この2つをそれぞれ掛け算することで、1人1人の遺留分額を確定します。具体例をみましょう。

【事例1】 「遺留分の算定の基礎となる財産」が1000万円であり、配偶者が1人、子が1人いる場合。

この場合、「総体的遺留分率」は1/2です。

また、「法定相続分率」は、配偶者は1/2、子も1/2となります。

したがって、配偶者の遺留分額は1000万円×1/2×1/2=250万円、子の遺留分額も同様に250万円となります。

【事例2】 「遺留分の算定の基礎となる財産」が600万円であり、配偶者が1人、直系尊属が2人、兄弟姉妹が3人いるが、子はいない場合。

この場合、「総体的遺留分率」は1/2です。

また、「法定相続分率」は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3です(直系尊属がいるため、兄弟姉妹の取り分は0であることに注意)。

また、2人の直系尊属の間では頭割りですから、直系尊属1人あたりは、1/3×1/2=1/6となります。

したがって、配偶者の遺留分額は600万円×1/2×2/3=200万円、直系尊属1人あたりの遺留分額は600万円×1/2×1/3×1/2=50万円となります。

 

遺留分の計算(3)遺留分侵害額

これが、最後の計算です。

上記の遺留分額から、相続人が現実に得た額である「純取り分額」を引いた余りが、遺留分侵害額となります。 遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害している人(贈与などで被相続人の財産を過大に得ている人)に対して、この「遺留分侵害額」を返せということができます(遺留分減殺請求権)。

「純取り分額」とは、具体的な相続分に特別受益額を加えた後に、相続債務負担額を引いた残りの額をいいます。

特別受益は細かいので、さしあたり、「純取り分額」=具体的な相続分-相続債務負担額としてもかまいません。

では、以下の事例で、ここまでの総おさらいをしてみましょう。

【事例】 Aさんが死亡しました。

死亡時、Aさんには、1200万円の銀行預金、120万円の債務がありました。

Aさんには、配偶者のBがいますが、子はいません。Aさんの父Cはすでに他界していますが、母Dはまだ存命です。

また、Aさんには、妹のEがいます。 Aさんは、死亡する半年前に、友人Fに1500万円を贈与していました。 B、D,Eさんは、Fに対し、遺留分減殺請求権を行使できるでしょうか?

行使できる場合、その額はいくらでしょうか?

まず、「遺留分の算定の基礎となる財産」は、1200万円+1500万円-120万円=2580万円となります。

次に、総体的遺留分率は1/2です。

また、法定相続分率は、配偶者であるBは2/3、直系尊属であるDは1/3となります(直系尊属がいるため、兄弟姉妹であるEはそもそも相続できないことに注意)。

したがって、遺留分額は、 B:2580万円×1/2×2/3=860万円 D:2580万円×1/2×1/3=430万円 となります。 なお、Eは相続人でないため、遺留分額も当然0となります。

続いて、遺留分侵害額を求めます。

まず、Bの純取り分額を計算します。Bの法定相続分は2/3なので、具体的な相続分は1200万円×2/3=800万円、相続債務負担額は120万円×2/3=80万円となります。

したがって、Bの純取り分額は、800万円-80万円=720万円となります。

次に、Dの純取り分額を計算します。同様に、Dの具体的な相続分は1200万円×1/3=400万円、相続債務負担額は120万円×1/3=40万円ですから、Dの純取り分額は、400万円-40万円=360万円となります。

これらを遺留分額から引いて、遺留分侵害額を求めると、 B:860万円-720万円=140万円 D:430万円-360万円=70万円 となります。

以上より、BはFに対して140万円分の遺留分減殺請求をすることができ、DはFに対して70万円分の遺留分減殺請求をすることができます。 一方、Eは遺留分減殺請求をすることができないことになります。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

遺留分の計算は①から③の3ステップで行われることを覚えておいてください。