被相続人の戸籍すべてを調べる必要性
相続人を特定するには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの一生分の戸籍を集め、調べる必要があります。なぜなら、亡くなった時の家族が存在を把握していない相続人がいるかもしれないからです。
家族に内緒で養子縁組をしていて養子がいた場合や、前の結婚で子どもをもうけている場合、婚外子を認知していたりする場合は、家族が知らないところに相続人がいることになります。
そこで、戸籍を調べることで、相続人を一人残らず特定することができるのです。養子や子どもの認知など、自分の家族に限ってそんなことはないだろうと思いこまず、きちんと戸籍を調べて相続人を特定する必要があります。
遺産相続は、相続人全員が揃っていて初めて成立するものです。相続人が欠けた状態で遺産分割をしてしまうと、ほとんどの手続きは振り出しに戻されてしまいます。相続人を特定するために戸籍を調べることは、無駄な時間とエネルギーを使わないためにも重要です。
相続人特定のための戸籍の集め方と調べ方
戸籍にも色々な種類がありますが、相続人特定のために集める戸籍は全部事項が記載された「謄本」です。戸籍謄本を隅々まで読み込むことで、相続人が他にいないか、いるならどこの誰なのかを特定できます。
まずは、被相続人の本籍がある市区町村役場で、被相続人の死亡が記載されている最後の戸籍謄本を取得しましょう。おそらくはデジタル印字で横書きの戸籍謄本が渡されるはずです。
戸籍謄本の最上段には、被相続人の本籍と氏名が記載されています。その下には「戸籍改製」という事項が記載されているでしょう。
改製という文字があれば、戸籍謄本が平成に入ってから行われたコンピューター化による改製後の戸籍謄本だということが特定できます。相続人特定の次のステップとして、改製前の戸籍謄本を取得しましょう。
改製前の戸籍謄本は、改製原戸籍と呼ばれています。デジタル印字の縦書きか、手書きで縦書きの場合もあります。改製原戸籍からそのひとつ前の戸籍を特定するには、被相続人の名前の上部の記載に注目しましょう。
「平成〇年○月〇日○○(配偶者名)と婚姻届出……○○(被相続人の親)戸籍から入籍」などの記載があれば、結婚によって親の戸籍から抜けたことで新たに作成された戸籍と特定できます。
ここまでの情報がつかめたなら、相続人特定の次のステップとして、抜ける前の戸籍の在り処である被相続人の親の戸籍を取得しましょう。取得する場所は、被相続人の婚姻前に親が本籍を置いていた市区町村役場です。
相続人特定のために被相続人の親の戸籍を見る際には、まず右側にある戸籍の作成年月日に注目しましょう。
昭和弐拾参年拾月九日……などの漢数字の末尾に「編製」という記載があれば、それが作成年月日と特定できます。
作成年月日が被相続人の誕生日よりも前であれば、その戸籍謄本が被相続人の最初の戸籍謄本であると特定できるので、戸籍の収集作業は終了です。
作成年月日が誕生日より後であっても、被相続人が10歳未満の時の戸籍だということが計算によって特定できるのであれば、それより前の戸籍謄本は取得しなくても良いかもしれません。
昔であっても、10歳未満で養子を取ったり、婚姻をしたりすることはありませんし、子どもをもうけている可能性もほぼ無いためです。
戸籍には、本籍地を移したことによる「転籍」や、戸籍を分けたことによる「分籍」といった記載がされている場合もあります。いずれも、その前の戸籍があるので、元の戸籍を特定してたどり、相続人を特定する必要があります。
養子縁組は「養子縁組」、子どもの認知は「認知」という記載があるので、注意深く読み込んで、相続人を特定しましょう。
まとめ
相続人を特定するためには、被相続人の戸籍をさかのぼって調べる必要があります。郵送でも戸籍の取り寄せは可能ですが、非常に時間がかかります。たとえ取り寄せられても、ひとつ前の戸籍が特定できなかったり、読み解くのに苦労したりすることもあるもしれません。
そのため、相続人特定の戸籍収集は、プロである弁護士や行政書士、司法書士に依頼することも検討すべきでしょう。