寝たきりの母親が相続人の事例
父親が死亡して相続が発生し、高齢の母親と子2人の合計3人が相続人となった事例です。
通常であれば3人で遺産分割協議をすればよいのですが、母親が認知症だったことから、インターネットで調べたところ成年後見人が必要なことを知り、法律事務所に相談に行ったそうです。
【ワンポイント豆知識:相続人に認知症の人がいたらどうなる?】
遺産相続が発生したら、相続人全員で遺産分割について話し合いをする必要がありますが、相続人の中に認知症の方がいる場合については、正常に判断することができないため、そのまま一方的に遺産分割を進めることができません。
相続人の中に遺産分割協議を行うための能力がない方がいる場合は、家庭裁判所に申し立てをして「成年後見人」をつけてもらう必要があるのです。
意外とかかる成年後見人の費用
法律事務所で状況について説明したところ、やはり成年後見人が必要ということになったのですが、その時提示された見積もりに対して相続人である子2人は困惑したそうです。
その法律事務所が提示してきたプランは、弁護士が成年後見人となって今後のサポートを行うというもので、申立代理手数料で20万円程度がかかるほか、認知症の母親が死亡するまでの間、毎月2万円の基本報酬がかかるというものでした。
相続財産自体が100万円未満の小規模な相続であるにもかかわらず、成年後見人の費用でここまでかかってしまうと、家族にとってはかなりの負担となります。
相続人である2人の子は、「本来、成年後見制度は社会的弱者を守るための制度であるはずなのに、なんでこんなにお金がかかるんだ!」と思ったそうです。
成年後見人の申し立てにはいくらかかる?
そもそも、成年後見人の申し立てには、どのような費用がいくら必要なのでしょうか。
具体的な費用について調べてみました。
・収入印紙代・・・800円
・郵送用切手代・・・3,000円程度
・登記費用手数料・・・2,600円
・鑑定費用(必要に応じて)・・・5~10万円程度
・弁護士費用・・・20万円程度、および月額2万円程度
鑑定費用を除くと、高額なのは弁護士費用です。
成年後見人の申し立てにかかる実費部分についてはそこまで高額ではありませんが、弁護士に依頼した場合にかかる費用負担が非常に重いため、今回の事例のように、高齢のご家族がいるご家庭にとって重い負担となってしまうのです。
成年後見人費用を安くおさえる2つの方法とは
成年後見人費用については、本来認知症や痴ほうにかかっている本人の財産から支払うべきものですが、法令では「申立人(配偶者や四親等内の親族など)」が支払うことと規定されています。
申立人が年金受給者といったケースは少なくないので、費用が払えず、相続の手続きが進まなくなる可能性もあります。
では、どうすれば成年後見費用を安くすることができるのでしょうか。
親族を成年後見人にする方法
今回の事例のように、本人が認知症ではあるものの、相続人同士で遺産分割に争いがないようなケースでは、弁護士や司法書士などの専門家ではなく、相続人以外の親族を成年後見人として立てられる可能性があります。
そもそも成年後見人は、申し立ての際に候補者を記載して提出できますが、最終的に決めるのは家庭裁判所なので、申立人が親族を希望したとしても弁護士になってしまう可能性はあるのです。
弁護士に毎月の基本報酬を支払うのが厳しい場合、その旨を申し立ての段階で家庭裁判所に伝えることで、相続人間に争いがなければ、親族を成年後見人として選任してもらえる可能性が高くなります。
今回の事例でいえば、子2人が揃って同じ親族を後見人として推薦できれば、家庭裁判所に選任してもらえる可能性が高いでしょう。
助成金を利用する方法
経済的な理由で成年後見制度の利用が難しい場合は、助成金を利用するという方法があります。
例えば、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートが行っている「公益信託成年後見助成基金」を利用すれば、月額1万円を限度に助成金が支払われます。
そのほかにも、自治体ごとに成年後見の助成金制度を設けている場合がありますので、制度の利用を検討している方はお住まいの市区町村に問い合わせて確認してみることをおすすめします。
まとめ
成年後見制度は、社会的弱者を保護するための制度なのに、実質的に負担となる費用が多いという点に課題がある状態です。
ただ、認知症や痴ほうの方が相続人におられる場合については、必ず成年後見人の申し立てが必要になりますので、今回ご紹介した方法をぜひ参考にしてみてください。